パナソニック 平昌に冬季最大規模の機器を納
パナソニックは12月26日、「平昌2018冬季オリンピック・パラリンピック」プレスセミナーを開催した。パナソニックは、1988年のカルガリー大会からTOPスポンサー(TOP:「The Olympic Partner」の略。最高位のオリンピックスポンサーのこと)を務めており、2018年の平昌オリンピックで30周年を迎える。この間、パナソニックはオリンピックの映像・響機器技術などの革新に貢献し大会運営を支援してきた。平昌2018冬季オリンピック開閉会式では、昨年夏のリオでの実績に続き、最新の映像⾳響機器やプロジェクションマッピング技術を核としたソリューションを提供、開閉会式の演出に貢献する。このような取り組みについて説明したもの。 冒頭に登壇したスポンサーシップイベント推進室 オリンピック・パラリンピック課 課長の沼田文隆氏が、スポンサーシップ概要については説明した。オリンピックについては、2024年までのワールドワイド公式パートナー契約を締結している。また、パラリンピックについても、2020年までのワールドワイド公式パートナー契約を締結している。オリンピックを協賛する主旨として、オリンピックはスポーツを通じて、オリンピック精神である「友情」「連帯」「フェアプレー」精神を培い平和でよりよい世界目指している。これは、パナソニックの経営理念である、生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与するというものに“重なり合う”だからで、パナソニックの技術によりオリンピックを支援し、スポーツを通じたより良い社会の形成に貢献する。一方、パラリンピックも、パラリンピックムーブメントの推進を通じたインクルーシブな社会の創出を目指すもので、より良い社会を目指すパナソニックと理念が共通していることから、パラリンピックもサポート(IPCワールドワイドパートナー契約+各大会個別契約)するもの。 オリンピック・パラリンピックのパートナー協賛の目的として、①スポーツを通じた社会貢献、②グローバルでのブランド価値向上、③オリンピック・パラリンピックを活用した事業拡大、④商品・技術のショウケース機会創出、⑤ステークホルダーとのエンゲージメント強化、を挙げた。 ◇ 続いて、スポーツ事業推進部 プロジェクトマネジメント課 課長の土屋憲一朗氏が平昌2018冬季オリンピック向け機器納入状況を説明した。同社は過去大会より継続的にAV機器・ソリューションを納入してきた。今回納入する主な機器は、LED大型映像表示装置 42画面(1640m2)、プロ用音響システム 10会場、プロジェクター 234台、放送機器ではデッキが約50台、カメラが約50台、モニターが約1000台となる。このうちLED大型映像表示装置は画面数・面積ともに過去最大となる。また、開閉式向けのビジュアルシステムとして、3万ルーメンクラスの高輝度レーザー光源プロジェスターを納入しており、オリンピック・パラリンピック開閉式で初めて本格使用する。なお、開閉式向けの映像システムをターンキーソリューションで提供しており、早い段階から設計に加わり、本番前の設置や配線、本番中のオペレーションや監視/メンテナンスも行う。 さらに、IBC(国際放送センター)内に8Kシアターを納入する予定。高輝度4Kプロジェクター「PT―RQ32K」×4台(+予備機1台)を納入し8Kシアターを実現する。オリンピックでは初めてのHDR画質となる。サウンドシステム「RAMSA」では、新商品を納入する予定。オリンピック・パラリンピックでの実運用を見据え、テストイベントを通じて厳しい環境に耐えられる商品を開発した。スキージャンプ会場をはじめ、スノーボード会場、龍平アルペンスキー会場、江陵オリンピックパークの4会場では、RAMSAブランドのラインアレイスピーカーによる迫力の音響が競技を盛り上げる。 放送機器では、放送用カメラシステム「P2HD」シリーズが大会映像記録機器に決定しているが、1992年のバルセロナオリンピック以降、13大会目の公式記録システムとなる。納入されるのは、AVC―ULTRAコーデック採用のハイエンドカメラレコーダー「AJ―PX5000Gシリーズ」やマルチ放送規格の2MEライブスイッチャー「AV―HS6000シリーズ」など。また、安心・安全な大会運営をサポートするため、セキュリティカメラを1079台納入する。 この他、今後を見据えた取り組みとして、マルチアングル動画配信システムや360度カメラでの撮影なども行う予定。マルチアングル動画配信システムは競技会場限定のシステムで、無線LAN等の工夫により、会場から出ると見ることができない仕組みになっている。マルチライブの他、リプレイ、スロー、ズームが可能で、個人の端末を活用して簡単に操作できる。平昌ではフィギュアスケートで試験運用する予定だが、関係者限定で実施される。東京大会での本格運用を目指している。一方、360度カメラは、IPC(国際パラリンピック委員会)との連携により、パラアイスホッケーを撮影する予定。4つの内蔵4Kカメラで撮影し、360度映像を生成・出力、360度非圧縮4K映像を制作するもの。最後に「平昌から東京へ向け、大会の成功に貢献すると共に、後世に遺る『レガシー』を形成するため各種取り組みを進めている。今後一層のご支援をお願いします」(土屋氏)と述べた。 ◇ 説明会後、大阪会場とも中継で結び、質疑応答を行った。サムスンとのカテゴリー交換については、パナソニックは韓国国内でテレビなどAV機器や白物家電の販売を行っておらず、サムスンは日本でPC等の販売を行っていない。このため、IOCを介してお互いがカテゴリーを交換することにしたという。ただし、業務用ディスプレイやLED大型表示機器は対象外となる。 また、オリンピックをサポートする営業面でのメリットについては「BtoCでもメリットがあるが、特にBtoBで大きなインパクトがある。オリンピックという絶対に失敗が許されないプロジェクトにおいて納入実績があるということはビジネス展開について大きな意味を持つ」(沼田氏)と強調した。 なお、説明会会場には、平昌に納入される高輝度4Kプロジェクター「PT―RQ32K」、2MEライブスイッチャー「AV―HS6000」、RAMSAラインアレイスピーカー、360度カメラ、マルチ動画配信システム、オリンピック・トーチ&ピンバッジなどが展示された。さらに、これまで納入してきた機器などを年表にまとめてパネル展示していた。
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