ATENジャパン 鄧 鴻群社長に聞く「社会貢献ともに社員の幸せを実現」
ATEN は1979 年の設立以来、接続・共有技術におけるコネクティビティ及び管理ソリューションを専門に製品開発・製造・販売を行ってきた。現在では北米、欧州、アジア各国に拠点を増やし、KVM スイッチ市場において世界的なリーディングカンパニーとなっている。 ATENの日本法人である「ATENジャパン」は2004年に設立された。グループ内で初めてショールームを開設した他、各地に営業所などを開設するなど、積極的な事業展開を進めている。鄧 鴻群氏が社長に就任以来毎年二桁成長を続けてきたATENジャパンだが、2000年は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた。2021年も社会全体がコロナ禍に振り回された1年となったが、その中でATENジャパンは様々な施策を講じて新たな成長に向けて邁進した。鄧社長に、2021年を振り返ってもらうとともに、現在の課題とそれに向けた対策、今後の新事業、成長戦略などについて聞いた。◇ ――2021年を振り返っていただき、どんな一年でしたか 鄧社長 大変な一年でした(笑)。2020年はコロナ禍の影響を大きく受け、それまで達成してきた毎年2桁成長が未達となり、非常に厳しい年となりました。 一方、新型コロナウイルス感染拡大により、在宅勤務、テレワーク/リモートワークの需要が急速に高まりました。これにより、弊社のIP-KVMスイッチなどの遠隔操作を可能とするIP関連製品が注目され、これらの製品群は2021年に大幅に成長しました。さらに、LCDドロワーやPDU/UPSなどの電源製品などが高い成長となりました。これは他社製品が半導体不足などから品薄になり、安定供給が難しくなったことから切り替えるお客様がかなり出たためです。 特に年初はコロナの影響が強くあったものの、2021年全体では前年比約18%増を達成することができる見込みです。さらに、利益も過去最高になる見込みです。これは社員一丸となり、逆境を追い風に変える努力をし続けた事によるものであり、結果的に非常に良い一年にすることができました。この社員の頑張りには、できるだけ還元したいと思っています。 また、これまで色々と仕込んできたことが奏功し、大きな案件になりそうなものが見えてきました。特に、近年注力してきた製造業では、リモート、遠隔操作、監視のニーズがさらに強くなっています。加えてテレコム市場でも大きなビジネスになるチャンスがあります。また、特定の製品では、シリアルデバイスサーバー「SN30シリーズ」にも大きく期待しています。シリアルを通してPLCなどの機器制御に対応しており、とても汎用性のある製品です。実際に大きな案件の話が出ています。 製造業以外の、一般企業でもリモートの需要が高まっています。医療分野でも高解像度の映像の伝送やサーバー管理などが、想像以上にニーズがあると見ています。 ――ATENジャパンのコロナ対策はどのようなものでしたか 鄧社長 ATENおよび私自身もSARSの経験があったので、迅速に対策を実施しました。時差通勤をいち早く同導入するとともに、緊急事態宣言発出以降は在宅勤務や分散出勤に勤務体系を変更しました。また、事務所の消毒の他、手洗い・うがいの精励、さらに体温計やマスクの確保など感染防止対策を徹底的に行いました。この他、社員が新型コロナワクチンを接種する日は特別有給を与え、社員が安心してワクチン接種を受けられるようにしています。 現在はほぼ従来の勤務スタイルに戻しています。昨年は対面での営業活動がほぼできなかったので、リモートでの営業活動がメインでした。現在は対面での営業がかなり戻ってきています。 ――世界的に半導体不足が深刻化・長期化していますが、ATENグループの状況はいかがですか 鄧社長 半導体不足については台湾本社が調達を強化し、サプライチェーンの確保に取り組んできました。これにより、他社に比べ比較的多くの半導体を確保することができました。ただし、徐々に影響は出てきています。このため、コストが多少高くなっても必要な半導体や電子部品を購入して対応しています。また、ATENジャパンでもできるだけ需要を先読みして、在庫を積極的に確保しており、本社に対して前もって発注をするようにしています。リスクはありますが、お客様にできるだけ迷惑をかけないように、在庫を充実させていきます。 ――今年は展示会に多数出展されるようですね 鄧社長 2020年はほとんどの展示会がリアル展示は中止となり、2021年も一部を除きリアル開催は行われませんでした。幸い感染者数も低く推移していることから、2022年は多数の展示会がリアル開催される見込みです。当社もそれに合わせて、積極的に出展していきます。従来の2倍近い、18の展示会に出展する計画です。 展示会は特に新製品を紹介したり、説明したりする絶好の“場”です。様々な形で新製品をPRしてきましたが、やはりリアルに対面で紹介・説明することが重要だと再認識しました。例えば、先日開催されたInterBEEでPDU(遠隔操作可能な電源タップ)を展示しましたが、ATENがPDUを手掛けていることを知らない方も結構いました。特にインテリジェント機能により、接続デバイスの電源制御だけでなく、環境監視なども行えることを説明すると驚いた方もいました。電源関連だとUPS(無停電電源装置)も同様で、ATENが扱っていることを知らない方もいますので、今後は多方面によりアピールしていきたいと考えています。 この他、InterBEEでATEN初となるHDBaseT3.0対応4K60p(4:4:4) HDMI/USBトランシーバー「VE1843」を展示しましたが、多くの引き合いを受けています。 このように展示会に多数出展し、実際のビジネスに繋げていきたいと思っております。 ――2022年で特に注目している製品はありますか 鄧社長 色々期待している製品があります。実はInterBEEで参考展示しておりましたが、DisplayPortシングルディスプレイIP―KVMエクステンダー「KX9970」は、これまでのKEシリーズとは異なり、4K60p(4:4:4)に対応している製品で、フル4K映像を超高品質・超遅延で伝送することができます。従来のKEシリーズの操作性を継承するともに、さらにグレードアップした製品として高く評価されています。 先ほど申した「VE1843」も注目製品です。HDBaseT3.0に対応するとともに、トランスミッターとレシーバーの機能を1つのユニットに統合しています。非圧縮の4K60p HDMI信号を1本のCat 6aケーブル(STP)で最大100mまで延長することができます。 さらに、KVM over IPスイッチ「CNシリーズ」にも引き続き期待しています同シリーズは製造ラインには多くの異なるOS(Operation System)PCベース製造装置や、検査装置、実験装置などの遠隔でのトラブルシューティング、監視・操作などでニーズの高い製品ですが、更に使い勝手を向上させ、製造業などに特化させたRCM(Remote Control & Monitoring)シリーズも市場に投入しております。ATEN独自のRCM APIを活用し、従来のKVM機能に加え、既存の製造装置などをOCRや画面キャプチャーなどを通して次のアクションを自動化することができる製品です。半導体メーカーでの導入実績が多数ありますが、その他のメーカーさんにも幅広くご使用頂ける製品となっております。 プレゼンマトリックススイッチャー「VPシリーズ」では新製品「VP3520」を投入します。4K対応でオーディオ機能を搭載しており、HDBaseT入力×2、HDMI入力×3、HDBaseT出力×1、HDMI×1を装備しています。さらにATENのVKシリーズ(Control System)と組み合わせれば各周辺機器への同時制御などが手軽に可能となり、手間を掛けずにシステム構築ができる小規模~大規模の会議室などに最適なソリューションです。 ユニークな製品としてブッキングシステム「VK430」があります。企業の会議室のブッキング状況を管理するもので、10型液晶を搭載しており、現在のブッキング状況を一目で把握することができます。配線も容易であり、会議室に加え、教室など教育関係も狙っていきたいと考えています。 ――これまで積極的に拠点整備を行ってきましたが、現在の状況は 鄧社長 東京、大阪に続き、2019年4月に九州営業所を開設、2020年9月には名古屋営業所を開設しました。当初はさらに営業拠点を拡大させていく予定でしたが、コロナなどもあり計画を見直ししました。現拠点はショールームを併設しているため、当面各拠点の強化を進めていきます。すでに、営業2名+プロセールス1名の体制を築いています。これにより、充実したサービス・サポートを提供していきます。 将来的にはあと1~2か所、拠点を増やす可能性はありますが、しばらくは現在の体制で進めていきます。 ――ECサイトでの販売状況はいかがですか 鄧社長 私が社長就任以降、ECサイトの積極活用に着手し、2019年から本格的にスタートしました。2020年は大型発注があったため、70%増と非常に高い成長となりました。2021年も高い成長を継続しています。ECサイトではCNシリーズなどが想像以上に売れており、B2C製品だけでなく、高額なB2B製品も多数購入されています。今後も高い成長を期待しており、ECサイト向けに価格調整を行う他、プロモーションやキャンペーンなども計画しています。 ――新たに設置支援サービスを開始しました 鄧社長 2021年4月から本格的にスタートしましたが、非常に好評です。同サービスは当社の装置の設置や調整、設定などを行うものです。お客様の中には装置の設置や設定に不慣れな方も少なくないです。また、代理店さんやSIerさんでも同様で、当社の装置について熟知しているとは限りません。このため、お客様や代理店さんから問い合わせや技術的な質問を受けることが多かったです。 設置や調整、設定やテストまでを我々が直接行うことにより、問題がある場合でも素早く把握することができ、問題解決もスムーズに行うことができます。これにより、お客様の満足度や信頼度を高めることに繋がります。 開始してから間もないですが、すでに全体の売上に占める割合は案件ベースで約5%に達しています。さらに、より設置や調整を容易にするため、当社製品を組み合わせたATEN推奨パッケージを提案していきます。加えて、当社製品だけでなく、他社製品と組み合わせた形で納入するケースもありますので、他社とのパートナーシップも拡大させていきたいと考えています。 ――最後に2022年の抱負をお願いします 鄧社長 従来から目標に掲げている年15%成長の達成を目指しますが、それ以上の成長を実現できると考えています。そのためには、社員全員が力を合わせないとできません。 KVMではトップシェアですが、さらなる躍進を目指します。また、特にビデオ・電源関連が伸びしろがあると見ておりが、単体だけではなく、様々なユーザーの要望に幅広く対応できるソリューションを提供していきます。 先ほども申したように、得られた利益はできるだけ社員に還元して、やりがいを引き出していきたいと考えています。ATEN本社のスローガンに「幸せな企業に」というものがあります。株主の幸せ、社員の幸せを実現する企業となるもので、実際、アジアの人材管理の分野において権威ある賞の1つである「Best Companies to Work for Asia 2021」を受賞しました。2019年度に続いて2回目の授賞で、人材第一のアットホームな雰囲気の中で、社員が伸びやかに自己研鑽できる環境が高く評価されたものです。 ATENジャパンでも同様に幸せを追求していきます。世の中の役立つ製品をリリースすることで社会貢献していくとともに、社員の幸せを実現させていきます。
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