放送番組センター 6つの柱による5か年の事業方針を作成 より開かれた“全国放送番組アーカイブ” 目指す

 放送番組センターは、放送法の指定を受け実施する「放送バングの収集・保存・公開」を主軸業務とし、放送文化への理解促進、放送の健全な発展を目的に業務に取り組んでいる。現在、NHK、全国の民間放送局で放送されたテレビ・ラジオ番組や、CM等を年間1400本保存、合計4万8000本に達している。放送ライブラリー(横浜)で3万8千本を無料で公開しており、60のブースで自由に検索し番組視聴が可能で、年間視聴回数延べ6万回におよぶ。公開番組を大学等の授業で利活用を行っており、2021年度実績は年間12校16授業。また、全国の公共施設等の要望に応え、関連番組を無料で視聴できるサービスを提供しているほか、上映会の要望にも対応(現在14施設)している。 放送番組センター設立から54年、放送法の指定を受け、現在の放送ライブラリー事業を開始し31年。公益財団法人に移行して10年が経過している。新しい時代に対応した放送番組センターへの転換が迫られている。特に若い世代はテレビを見ない層も増えており、メディア環境の変化に対応し、新たな時代のより開かれた“全国放送番組アーカイブ” への進化を目指す必要がある。 これを踏まえ、NHK、民放連、民放局、センター事務局で構成する「事業の在り方に関する検討WG」を設置。業務の総点検を行ったうえで改革策をとりまとめた。その結果、同センター最大の資産である「番組アーカイブ」をより効率的、効果的に運用・活用し、この先も放送の健全な発展や番組を通じた社会貢献の更なる充実を目指すことが重要であることを再確認したという。 新しい事業方針では、この「より開かれたアーカイブ」として以下を柱に取り組みを強化する。 ▽IT技術も活用した番組公開手法の拡充と、公開番組数の着実な増加 ▽放送を学べる施設の整備と催事等を通じた若い世代を中心にした放送文化への理解促進 ▽戦略的広報による当センターの存在感や認知度の向上 ▽全国の放送事業者と連携した放送文化発展への貢献 さらに、効率的な業務運営に努め、新時代に対応した事業・業務の在り方を確立し、センターの使命と役割を確実に果たしていく5年間とする。各年度に進捗状況を点検し必要な修正を行い、3年目を「見直しポイント」とし総点検し必要に応じ見直すとしている。 事業計画では、6つの柱(6事業方針)の下で具体的な施策を実施する。まず一つが「アーカイブの価値最大化」。 放送史の記録として、時代を反映した番組やローカル放送局が制作した秀作番組をはじめ、幅広い番組の確実な収集・保存に努める。「より開かれたアーカイブ」として、番組の公開を様々な形で促進し、社会共有の「文化資産」であるアーカイブの存在価値最大化を目指す。具体的には、放送史の記録となる番組の収集強化、全国の放送事業者からの番組推薦の拡充、デジタル技術を活用した効率的な収集・保存の推進、権利処理体制を強化などによる、番組公開数の増加(年間公開本数800本)、番組視聴機会拡大のための年間を通じた上映会の開催(BLセレクション、番組を視聴する会)を実施する。 二つ目は「アクセスポイントの全国拡大」。番組アーカイブへの接触機会を全国に拡大させるため「全国放送番組アーカイブ・ネットワーク(番組アーカイブネット)」の展開を段階的に進め、放送番組の魅力を幅広く伝えるとともに、番組を通じた情報や知見の提供により地域社会に貢献する。ローカル放送局の優れた番組を、より多くの人々が視聴できるようにすることで、放送文化の更なる発展に寄与する。具体的施策は、全国放送番組アーカイブ・ネットワーク(番組アーカイブネット)を拠点都市の図書館等に段階的に展開(5か年10か所)、ローカル局の番組や地域ニーズに応える番組など視聴可能番組の増加を図る(5か年500本)、IP送信に対応するシステムの構築。 三つ目は「教育利用の充実と放送文化の理解促進」。番組の教育利用の対象を高校や中学などに拡げるとともに、利便性向上を図り、利用校の増加を目指す。放送ライブラリー施設を、放送を学び、番組視聴を通じた調査研究ができる拠点として整備することや、企画展、番組上映会、セミナーなどを通じ、若い世代を中心に放送への理解と関心を高めることに努める。具体的施策は、番組の教育利用の対象を大学から中・高に拡大、放送関係図書・雑誌の閲覧も可能な研究者向け環境整備、常設展示を「放送を学べる」場として再整備、放送に関わる企画展示や上映会の開催、放送の魅力を伝えるセミナー開催とオンライン配信強化。 四つ目は「戦略的広報への転換」。広報機能を強化し、センターの役割や事業の認知度を向上させる。広報対象ごとに内容や方法を分析・設定し、WEBやSNSなどのデジタル手法も活用した戦略的広報への転換に取り組む。具体的施策はWEBやSNSなどデジタル手法も取り入れたPRの展開、HPの全面リニューアルによる認知度向上、放送事業者と連携したPR。五つ目は「放送事業者との連携を更に強化し、放送文化の理解促進と放送事業への貢献に努める。具体的施策はローカル局のテレビ・ラジオの秀作番組を、「全国放送番組アーカイブ・ネットワーク」(番組アーカイブネット)」等を、通じ全国で積極的に紹介放送事業者と連携した企画展示・セミナー・上映会実施。 最後が「財務運営と抜本的基盤整備」。新規事業の展開に必要な費用は、経費節減と既存事業の見直しにより可能な限り財源確保に努めるとし、期間中に想定される事業運営に欠かせない設備整備は、原則として基本財産を活用することで確実に実施し、将来の効率的運営に資する抜本的な基盤整備にあたるとしている。同センター設立以来初めて、基本財産を切り崩す予定。具体的な施策としては、新施策に伴う設備・システム整備と老朽化設備の更新を基本財産の一部活用により5か年で集中的に実施し、主なものとしては「全国放送番組アーカイブ・ネットワーク」のシステム整備、研究者のための環境整備、常設展示のリニューアルなど。 なお、「全国放送番組アーカイブ・ネットワーク」(番組アーカイブネット)」は、放送ライブラリーにある番組を全国で視聴を可能にする取り組み。例えば、地域の図書館等で、設置施設内のPC席から視聴可能番組の中から希望番組を選択する。横浜の放送ライブラリーから希望番組をストリーミング送信し、専用サイトで視聴するもの。放送アーカイブ(公開3万8千本)のうち、同サービスでの提供可能番組をIP伝送で全国に提供するが、「放送史が学べる」「地域振興や地域の課題」「全国の文化」などジャンル別に番組群を予め用意する。権利処理がネックとなるが、番組群の充実を図り5か年で、テレビ・ラジオ番組合計で500本を目指すとしている。また、将来的にはクラウドの活用も検討している。 放送番組センターはわが国唯一の放送番組のアーカイブ施設であり、NHK・民放を問わず、番組やCMを視聴することができる貴重な施設だ。5か年の事業方針のもとさらに充実した全国放送アーカイブとなることが期待されている。