NHK経営計画 衛星波を段階的に整理し右旋の1波化図る
NHKは新しい経営計画(2012―2023年度)(案)を発表した。 キーコンセプトは“新しい「NHKらしさの追求」”。新型コロナウイルスの感染拡大により、日本と世界の社会・経済環境は一変した。それと同時に、正確な情報はもとより、学びの機会や家族で楽しめる娯楽などを、多様な伝送路を通じて広く提供するという、NHKが公共メディアとして果たす役割が再認識されたとしている。その一方で、様々な動画配信サービスの登場などにより、近い将来テレビ視聴とインターネット利用時間の“逆転”が予想される他、人口・世帯数の減少やテレビ保有率の低下、公共に対する社会的な意識の変化、技術革新の加速化など、今後も予想を上回る速さでメディア環境・視聴者行動の変化が進むことを想定している。 NHKが目指すべき基本目標は『すべての人に「安心・安全」と「正確、良質で多様なコンテンツ」を届け、信頼される「情報の社会的基盤」としての役割を果たし続けること』としている。この基本目標を達成するため、2021年度から2023年度までの3カ年の中期経営計画では「NHKらしさ」を具現化していく柱として、5つのキーフレーム(重点投資先)を設定し、重点的に取り組む。キーフレームは以下の通り。 ▽安心・安全を支える ▽新時代へのチャレンジ ▽あまねく伝える ▽社会への貢献 ▽「NHKらしさ」を実現するための人事制度改革 また、今後の受信料収入は、長期的には減収局面が続くことが避けられないと想定している。多様で質の高い「NHKらしい」充実したコンテンツを、より最適な媒体を通じ、合理的なコストで提供し続けることにより、「受信料の価値の最大化」を図る。このため、「波」別の個別番組管理から「ジャンル」別の総合管理への転換を図り「NHKならでは」のコンテンツやサービスに経営資源を最大限集中させ、衛星波の整理・削減を進める。これらにより、「スリムで強靭なNHK」へと変わり、将来にわたって持続可能な業務体制を構築する。 なお、衛星波を含む保有メディアの在り方については、多様で質の高い「NHKらしい」コンテンツを、合理的なコストにより最適な媒体(地上波・衛星波・インターネット)で提供するという観点と、視聴者の利便性を損なわないことを前提にしている。 右旋の3波(BS1・BSP・BS4K)は、コンテンツにより効果的に届ける再設計を計画期間内に行い、公共メディアとしての価値を維持しつつ、2波(4K・2K)への整理・削減を実施する。具体的な実施記事等については、視聴者に対する意向調査等を踏まえて検討を進め、2021年の本計画の議決の際に公表する。将来的には、4Kの普及など変化するメディア環境を見極め、1波への整理・削減に向けてさらなる検討を、在り方の検討にあたっての前提に則って進めるとしている。一方、左旋のBS8Kについては、効率的な番組制作や設備投資の抑制を徹底し、東京オリンピック・パラリンピック後に、在り方に関する検討を進める。 音声波については、民間放送のAM放送からFM放送への転換の動きや、聴取者の移行などを考慮しつつ、さらなるインターネットの活用を前提に、現在の3波(R1・R2・FM)から2波(AM・FM)への整理・削減に向けた検討を行い、計画期間内に具体案を示すとしている。 ◇ 2021年度―2023年度における収支見通しは、まず事業収入では、2020年度に実施した受信料値下げが通期で影響することに加え、新型コロナウイルス感染症に関する受信料の免除、訪問活動の制限や経済情勢悪化に伴う契約件数の減少などの影響により、2020年度予算比で300憶円程度の減少を想定している。さらに、現時点では新型コロナウイルス感染症の影響を受けた今後の社会・経済状況を見通すことが難しいため、2022年度・2023年度も2021年度の水準を維持することを想定している。 事業支出は、事業収入の考えのもと、2022年度までに、2020年度予算比で400億円を超える支出の削減を行って、6000憶円台の規模に抑える。 この他、引き続き構造改革に取り組んでいく。削減規模は630憶円程度を想定。コンテンツ制作はNHK本体を中心都市、競争力を高めつつ政策の総量を削減し、あわせて番組制作委託費の見直しを図る。また、制作工程の標準化や効率化を進め、東京オリンピック・パラリンピックで実施する放送・サービスの縮小などによる制作経費の見直しなどを取り組む。さらに、国際放送番組は国内放送番組との一体制作を一層推進し、地方放送番組の全国放送・国際放送への展開も進める。国際放送は、これまで放送を主体とし、視聴者可能世帯の拡大に取り組んできたが、これを転換してインターネット配信の活用を進める。これらで300憶円超の削減を図る。 加えて、固定費削減で150憶円超、営業経費の削減で80憶円程度、間接業務のスリム化・高度化で30憶円程度、経常的経費の削減で30憶円程度を削減する。 一方、重点投資の投資規模は130億円程度を計画。「安全・安心を支える」には10憶円程度、「新時代へのチャレンジ」および「あまねく伝える」で90憶円程度、「社会への貢献」で5億円程度、「人事制度改革」で10憶円程度、その他で10憶円程度を見込んでいる。
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