新年特別インタビュー ATENジャパン 鄧 鴻群社長
ATENはKVMスイッチを中心に接続および共有関連分野の製品や技術、ソリューションを提供している。ユーザーは、コネクティビティ、プロフェッショナル向けオーディオ&ビデオ、グリーンエネルギーなど多岐にわたる。 ATENの日本法人である「ATENジャパン」はグループ内で初めてショールームを開設した他、先端技術へのニーズが強い日本のユーザーの要望をいち早く本社に届けるという重要な役割を担っている。拠点の拡充やソリューション提案、サポート体制の充実などで毎年二桁成長を続けているATENジャパン 社長の鄧 鴻群氏に、2019年を振り返ってもらうとともに、2020年の取り組むことや今後の成長戦略等について聞いた。 ――2019年を振り返っていただいていかがでしたか 鄧社長 2019年も前年比で二桁成長、15%増に近い成長をすることができました。高い成長を継続するため、2019年も人材確保に注力しました。また、技術サポートや設備関連でも投資を行いました。 拠点も東京、大阪に続き、昨年4月に九州営業所を福岡市博多区に開設しました。この3拠点で全体をカバーする体制となっています。それぞれの拠点で売上高を拡大することができました。 今年も以前より予定していた名古屋だけでなく、金沢、広島、仙台、北海道と順次開設を考えておりますが、まずは優秀な人材の確保が急務となり、東京本社で十分な研修を受けた後、地方へ送り込んで展開する形で進めて行きたいと思っています。 ――従業員は現在何名になりましたか? 鄧社長 日本法人においては従業員は現在50名となりました。技術と営業を主体とし、2020年は更に数名増員する計画です。 ――営業のやり方も色々と工夫されていますね 鄧社長 製品の単独販売だけでなく、ソリューション提案を増やしていきたいと考えています。現在、システムソリューションの売上比率は約40%となりますが、売上拡大には欠かせない要素となり、案件ベースでの営業スタイルをさらに強化し、プリセールス、商品企画、技術の3面からソリューション提案をサポートしていきます。 マーケティング面では、2018年から展示会に積極的に出展してきました。ITや映像系以外の、これまで関係が薄かった業界向けの業界展へ戦略的に出展しました。具体的には、2018年はSEMICONJapanに初出展し、2019年は継続で出展した他、鉄道技術展にも2019年に初出展しました。さらに2020年には、FA業界やスマート工場等に注力したいと思っています。また同時に、製造系ECサイトの登録内容をより充実化させ、様々な形で、製造業へのアプローチを進めています。 製造業でも遠隔操作や遠隔管理のニーズが高まっています。ATENには工場のIT化に貢献できる多様な製品ラインナップがありますので、工場で既に使用される装置に、我々の製品を組み込んで遠隔操作と管理を実現できます。今後こういった形でのビジネスチャンスが増えていくことをとても期待しております。 製造業向けの業界展に継続して出展することにより、ATENの認知度は着実に浸透していると手ごたえを感じています。 ――今年も様々な新製品が多数投入されました 鄧社長 毎年多数の製品が投入されるので、我々も対応するのが大変です(笑)。2019年の新製品で特に注目されたのがポータブルライブストリーミングAVミキサー「UC9020」です。配信、編集、映像、音声の機能を集約しており、これ1台だけで全てが揃います。元々は個人ユーザー向けに開発された為、安価な価格設定なのですが、セミプロ級の方でも十分にご利用頂ける性能に仕上がっている為、様々な展示会に出品したところ、多くの業界関係者からも興味を持っていいただきました。これまで接触する機会のなかった客層を獲得できたのが最大の収穫で、今後はさらに期待できると思っています。さらに、同製品はグッドデザイン賞を受賞しました。今回の受賞は、先に開催された世界有数のICTとIoTに関するイベント「COMPUTEX 2019」における「Best Choice Award」に続く受賞となります。 また、4K対応のKVM関連製品、特に「KE9950シリーズ」がこれからの売れ筋製品になると予測しています。ATENではTrue4K対応製品を先行的に開発してきましたが、市場のニーズが本格的になったのは、我々が想定したタイミングより遅いものでした。2020年にはようやく本格的に切換需要が発生することが予見されますので、対応製品をたくさんリリースしたいと考えます。また、4KではインターフェースがこれからはDisplay Port対応の製品が増えていくと見ています。KEシリーズは、シームレスな映像の切換を実現し、スケーラー機能も搭載していますので、スピードは業界トップクラスだと自負しています。多彩な機能を積み込んだ製品ですが、いかに活用するかは、我々のシステムソリューションの提案力にかかってきます。 まだ発売前ですが12G―SDI→HDMIコンバーター「VC486」も注目される製品です。弊社初の12G―SDI対応製品で、以前より本社に開発を要望していましたが、ようやく製品化されたものです。日本では12G―SDIの需要が広がりつつあるため、日本市場向けに開発した製品で、どの程度ニーズがあるかも知りたい為、開発しました。 ――KVM関連製品ですが、堅調に推移しているようですね 鄧社長 KVMは10%程度の成長を続けており、当分緩やかに成長していくと見ています。KVM自体はIT業界向けに開発された製品ですが、高解像度化により映像業界でもKVM関連の製品が多く使用されるようになったのが大きいです。IT業界向けでは成長が鈍化していますが映像系の需要が全体をけん引するようなっています。 特に日本市場ではより解像度が高いものが求められる傾向が見受けられます。放送局や業界関連での採用が拡大しています。逆にIT系では未だ高解像度化の動きは鈍いです。一方、製造業でも高解像度化が進んできました。これまで製造業向けで様々な種まきを行ってきましたが、2020年はいよいよ収穫の時期になるため非常に期待しています。 ――働き方改革で新しいニーズが出てきましたね 鄧社長 働き方改革が進み、自宅勤務が多くなると、遠隔操作が必要になります。ここで重要なのがセキュリティです。ソフトベースのセキュリティもありますが、ATEN製品のようなハードベースでアクセスしたほうがセキュリティは格段に向上sる為、この点も訴求していきたいと考えています。 また、文教分野でも働き方改革が進みつつあり、大きなチャンスだと思っています。例えば会議システムの導入により、効率化や時間短縮に貢献できます。文教分野はまだまだ開拓の余地があり、将来的には映像業界、製造業に続く柱にできればと期待しています。 ――2020年の目標は 鄧社長 2020年も引続き二桁成長を目指します。私が2017年1月にATENジャパンの社長に就任して以来、3年間で売上高は約70%以上成長しています。今後も二桁成長を継続することを維持するには、さらに代理店やユーザーとの密接な関係を築き、600品種に及ぶATEN製品の知識だけでなく、様々な業界の知識も必要になります。その為には、繰り返しになりますが、人材確保および教育が非常に重要になります。 戦略的には引続き製造業に注力していきます。様々な装置をもっと多くの業界に広げていきたいと考えています。例えばIPベースのビデオ延長器VE8900シリーズなどは、工作機械分野などにも展開できます。 また、会社内にショールームを設置したのは、グループ内では日本が最初に行いました。非常に大きな投資が必要でしたが、それに見合う成果を得ることができました。このことは、ATENグループ全体でも非常に注目され、すぐに本社にも開設されただけでなく、世界各国に広まりました。現在は18拠点に対して、合計28のショールームが開設されています。このように、日本で得られた様々な知見を、グループ全体へ横展開することで、成長に貢献できました。 ――最後の今後の抱負をお願いします 鄧社長 昨年のインタビューでもお話しましたが、ATENジャパンとしては、ATENが手掛ける事業分野で日本においてリーディングカンパニーになるという目標を持っています。これまで挙げてきた戦略を着実に行き、同時に社会に貢献できるような経営を目指して行く所存です。
この記事を書いた記者
最新の投稿
- 実録・戦後放送史2024.09.02連載にあたって
- 筆心2024.09.022024年8月26日(第7712号)
- 放送ルネサンス2024.09.02放送100年特別企画 「放送ルネサンス」第1回
- 放送2023.09.01ビデオリサーチ 災害情報入手経路の7割が地上波民放テレビ