日本ケーブルテレビ連盟、CATV業界とHuluが全国規模で連携
一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟(JCTA、東京都中央区、吉崎正弘理事長)と、オンライン動画配信サービス「Hulu」を運営するHJホールディングス(東京都港区、於保浩之社長)は、ケーブルテレビ業界の共通ID連携基盤「ケーブルIDプラットフォーム」を利用した取り組みを開始すると発表した。 3月15日以降、全国のケーブルテレビ局のうち「ケーブルIDプラットフォーム」に対応済みの局から順次、5万本以上の映画・ドラマ・アニメ・バラエティを楽しめるオンライン動画配信サービス「Hulu」の販売を開始する。 今回の取り組みは、ケーブルIDプラットフォームを活用した初の動画配信サービスとなる。 これらのサービスにより、ケーブルテレビ利用者がHuluに入会する場合、Huluの新規入会手続きが簡単になり、月額料金をケーブルテレビの料金とまとめて支払うことができるようになる。利便性が格段に向上し、ユーザーがHuluのコンテンツに触れる機会がより身近ととなる―としている。 3月15日以降に準備が整った連盟会員事業者から、順次開始する。視聴方法はパソコンやスマートフォン、タブレットなど従来の視聴機器に加えてケーブルテレビ局が準備するHuluが視聴可能なセットトップボックス(STB)を利用することで、簡単に家庭のテレビで視聴可能となる。サービスメニューとして、導入局ではHuluの新規申し込み特典に加えて、割安なセットプランの提供も検討している。 「ケーブルIDプラットフォーム」とは、ケーブルテレビ各社が管理する顧客ID(個社ID)を業界共通のIDとして管理するプラットフォーム。ケーブルIDプラットフォームを通じて業界各社が連携することにより、業界外部のサービス事業者との連携が早期に可能となり、ケーブルテレビの利用者に多様なサービスを提供できるようになる。ケーブルIDプラットフォームは2017年7月にスタートし、2021年度に500万ユーザー、将来的には1000万ユーザーの利用を目指す。 JCTAは、2月14日に同連盟内で「ケーブルテレビ業界とOTT事業者との事業連携について」会見した。吉崎正弘理事長は次のように述べた。 「ケーブルテレビというのは、長い間、地上放送を中心にビル陰、山陰の影響でテレビの映りにくいところにケーブルを引っ張って観てもらうという有線の放送でサービス提供されていた。そして20年ほど前からインターネットが台頭して、米国のケーブルテレビではインターネットを情報の伝送路に使おうという動きが出て、そういう場合、日本では幹線の光ファイバーにする、宅内にルーターをかますなど上り雑音を減らさなければいけないといった動きが出てきた。多額の費用が必要であるという動きであった。ところで、ケーブルテレビ事業者の売上高をみると、2017年度売り上げ内訳では放送の占める割合は全体の40・3%、通信は同じく48・1%あって、もう〝ケーブルテレビ〟というのは名が体をなしていない。インターネットを中心に収入をあげている、通信インフラビジネスという色合いだ。その通信インフラビジネスで最近困ったことが出ている。トラヒック量とトラヒックコストでみると、今後、トラヒック量が大幅に増加していく。3割、4割増えていく。2020年東京大会直前は急上昇し、先5年間で約10倍と予想されている。お客様から月々入る分、料金は同じだが、コストの部、特に上位接続というのは従量料金になっていて、これは収入は変わらなくても、支出が3割、4割増えるということ。これが数年間続いており、今後も続く。このトラヒックが異常に増えている要因は、ひとつはヘビーユーザー。1割の人が9割分のトラヒックを使っている。逆に9割の人は1割分しか使っていない。オフロードがとても多くて、それで家に居るときは、オフロードにして定額料金のケーブルインターネットを使っているのが非常に多い」と述べた。 さらに「もうひとつは今日お話しているOTTの映像伝送。その結果、ケーブルインターネットはやればやるだけ赤字になるという瀬戸際にきている。ではどうすれなよいのか。ケーブルテレビというのは小さな会社が多くて、技術の専門の人も多くない。回線調達対策における基本的な考え方で挙げると、トランジットから何から含めてインターネットのことはよくわからないから丸投げしている会社が非常に多い。その結果、高い買い物をしているのが実態。それをもう少し勉強してプロバイダ丸投げのようなことを無いようにして、トランジットのところだけいちばん安い、良い事業者だけを選んでいけば支出を少なくできる。ただ、これもなかなかできない。幸い、ケーブルテレビ事業者は同業他社は敵ではない。近隣の数社が力を合わせて共同調達すれば、スケールメリットも出るのでより安くなるのではないか。それからIXへ接続、キャッシュ導入があるが、大きな設備投資がいるほか、キャッシュの場合は、大きなOTTとは、小さなケーブルテレビ事業者は相手にしてはくれない。一方、メディア接触時間は増大、テレビ受像機は減少。スマホ等は増加傾向だ。若い人を中心にテレビ離れが顕著になってきたといわれることが多くなってきた。テレビ受像機での動画視聴がテレビ放送視聴量へ影響している可能性がある。これまでの話ではOTTはケーブルテレビからすると、〝土管〟に利用されて支出ばかり増えて収入が増えないというものだ。ところで、米国のある大手ケーブルテレビ事業者は、ネットで映像を観る人が2008年から2010年くらいにどっと増えて、テレビ離れが顕著になった。2010年が底だった。OTTと敵対していったが2015年くらいからOTTと組もうということになって、組み始めてから減り方が減ってきた。これからも連携を強化していこうとなった。日本は時差があるが、国内OTTサービス契約者数は増加傾向にあって、今後も増加が見込まれる。そして、OTTはライバルだといってきたのを、連携しようということになってきたのが昨年あたりからだ。OTTと連携していこうというのが今回の話だ。今回のHuLuはその第1弾になる」と述べた。 続いて仲見政仁企画部次長が次のように述べた。「日本のケーブルテレビ事業者のアンケート結果では『OTTとの連携を進めるべき』という回答は80%強に上った。米国のように、OTTとポジティブに連携していったほうが良いという結果だった。個社でのOTT連携はほとんど進んでおらず、業界として対応する必要な必要性を感じている社も多いことから、連盟が先導し、業界としてOTTと交渉していくことが求められる―と結論づけた」と述べた。
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