CATV業界3団体 ケーブルテレビ新年賀詞交歓会を開催
一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟(東京都中央区、吉崎正弘理事長)、一般社団法人日本CATV技術協会(東京都新宿区、山口正裕理事長)、一般社団法人日本ケーブルラボ(東京都中央区、田﨑健治理事長)のケーブルテレビ業界3団体は、合同で「平成31年ケーブルテレビ新年賀詞交歓会」を1月16日にホテルニューオータニ(東京都千代田区)で開催した。 主催者挨拶した田﨑健治日本ケーブルラボ理事長は「私は、1月1日元旦、目を覚ました時にあるフレーズが思い浮かんだ。『To be or not to be,that is the question. 』(生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ)というシェイクスピアの『ハムレット』の有名なフレーズだ。なぜかと思ったが、ケーブルテレビ業界に携わっているとほんとうに大変な時代を迎えていると感じており、この10年、テクノロジーの進展にほんとうに圧倒されている。(この日、引退を発表した)横綱の稀勢の里ほどではないが、結構厳しい局面と日頃感じている。(米ラスベガスで開催された)『CES 2019』から帰られた方に昨日、お会いして感想を聞いたところ『もうCESは家電見本市ではない。5GやAI、IoTといった波に動かされていく時代である』と。その中で、私どもケーブルテレビ業界は基幹インフラであり、ケーブルインターネットを始めた時から総合プレーヤーで、フルに事業を行わなければいけない立場である。5GやAI、IoTなどにすべて対応しなければならない使命を持っていると感じて、そしてあのフレーズになったと思います。ただ、私どもは昨年12月1日から始まった新4K8K衛星放送に積極的に取り組んで、ケーブルテレビ業界で関係各位の皆さまのご協力のもと、再放送サービスを始めさせていただいて、多くの皆さまに4K放送を楽しんでいただいている。ケーブルテレビ業界は新しいテクノロジーをもとに新しいサービス、新技術を積極的に取り入れて発展していかなければならない。現在、ケーブルスマホ、MVNO、地域BWAなどを行っているが、これからも、5GやAI、IoTに対応した新しいサービスを取り入れて、進化していかなければならないと思っている。そして、私どもは地域に根ざしたケーブル局である。地域のコンテンツをさらに充実していきたいと思う。地域密着のケーブルテレビだからできるものを地域のお客様にサービスしていきたい。また、地域密着型であるので、災害発生時には私どもがいちばんはじめに対応しなければいけない。災害時にはネットワークの強靭化、高度化を通じて地域に貢献できるネットワーク、サービスが必要である。平成31年度総務省の予算案にはネットワーク強靭化で多くの予算を盛り込んでいただいた。私どもはそのご期待に応えられるように全力を挙げて前進するつもりである。私どもは地域に愛されて発展してきた。ケーブルテレビ業界の最大の強みは有線、無線、放送、通信すべてを持っているので、これを活かして発展を遂げてまいりたい。私どもはお客様のご期待をエネルギーにしてイノシシのようにライバルを蹴散らして、まい進していきたいと思います」と述べた。 続いて石田真敏総務大臣が来賓挨拶した。「今年は平成最後の年。平成の時代は放送の世界では多チャンネル化、デジタル化が行われ、通信の世界でもインターネットや携帯電話が普及するなど情報革命の時代でした。その時代にあってケーブルテレビ業界ではトリプルプレイの各サービス、ケーブルスマホやケーブルWi―Fiといった無線通信サービスを提供されて情報革命に貢献されました。昨年始まった新4K8K衛星放送を多くの皆さまに届けるには、全国の過半数、約3000万世帯に普及するケーブルテレビのインフラが不可欠であり、そのためのネットワークの光ファイバー化の導入では総務省では支援をしっかり行うとの考えで、予算案ではこれまでを大幅に上回る支援措置を盛り込みました。皆さまには積極的に取り組んでいただきたいと思います。さて、日本はいま大きな時代の変わり目にいます。AIやIoTなどの新たな技術は、社会を大きく変える力を持ち、持続可能な地域社会を可能にする明るい兆しと考えています。これからの新技術によって変革された社会を政府では『Society5・0』と呼び、実現に取り組んでいます。こうした技術はすばらしくとも、実際に社会や人々に取り入れられなければ、『Society5・0』の果実は得られません。総務省では、昨年12月に『地域力強化戦略本部』を立ち上げて『Society5・0時代の地方』をキーワードに、革新的技術の実装例、導入支援策を全国で共有し、地方からも優良事例や必要な施策の提案をいただくなど双方向かつ持続的なやり取りを行うことで『Society5・0』の進化に伴う持続可能な地域社会の構築を目指したいと考えています。その際、光ファイバーは『Society5・0』の基盤技術であり、かつての高速道路や新幹線と同様、地域の繁栄を左右する21世紀の基幹インフラであります。その意味からも日本の隅々に速やかにこれを展開する必要があります。そしてケーブルテレビの役割として、地域の情報を伝える番組をつくり、住民の皆さまに送り届けることに加え、地域の魅力を発信する番組づくりが重要な意義を持つと思います。皆さまが都市と地方の情報格差の解消に取り組まれ、地域の魅力を発信されることで豊かな『Society5・0時代の地方』を実現する役割を担っていただくことを期待しています」と述べた。 続いて衆議院議員の山口俊一自由民主党情報通信戦略調査会会長が来賓挨拶した。「今年は、おそらくケーブルテレビの業界も大きな曲がり角になる年と思います。年末以降、私どもも議論を積み重ねてきていますが、近々、国会が始まります。放送法や電波法などいろいろな大きな法改正があるわけでございます。いよいよ今年は4K内蔵型のテレビが多く発売されているでしょうし、また、NHKのネット同時配信ができるようになるのではないかと思います。全くこれまでとは違う展開になるのではないかと思います。ネットを通じたコンテンツがどんどんシェアを大きくしている中で、なかなか日本の放送局、ケーブルテレビが動いていないということがあると思いますが、今年はそういった新しい展開をする元年になるのではないかという感じがしています。地域ローカル局の話もございますが、地域の皆さまに地域の情報をしっかり届けていただいているケーブルテレビ局の皆さまも一緒になって協力をしながら、あるいはライバルとして新しい展開をしていただければと思います。4K8K、5Gはこれから世の中を大きく変えるツールになると思います。どんどん新しい展開をしていくこの世界で、皆さまにはこれからも住民の皆さまにしっかりした情報とエンターテインメントをお届けいただいたらと思います。皆さまが力を合わせて見事に乗り切って、新しい時代のスタートになりますようにご祈念を申し上げます」と述べた。 続いて上田良一NHK会長が来賓挨拶した。「NHKは去年の12月1日に、NHKBS4KとNHKBS8Kの2つのチャンネルを開局いたしました。BS8Kは世界初の8K放送となります。超高精細の映像と臨場感あふれる音響という特性を活かし、大晦日には、NHK紅白歌合戦をBS4KとBS8Kでもお届けしました。また、今月6日からは大河ドラマでは初めての4K制作となる『いだてん~東京オリムピック噺~』をBS4Kでも放送を始めるなど、コンテンツの充実を図ってまいります。4K8Kの普及には、全世帯の半数以上にサービスを提供しているケーブルテレビ局の皆さまのご協力が欠かせません。すでに多くのケーブルテレビ局から、BS4K8Kの再放送同意の申請をいただいております。東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年には、本格的に普及していることを目指し、今後もケーブルテレビ事業者の皆さまと連携しながら、普及に向けた取り組みを加速してまいりたいと考えています。英語によるテレビ国際放送『NHKワールド JAPAN』は、国内には現在、国内36局のケーブルテレビを通じて、630万世帯でご覧いただけるようになっています。日本を訪れる外国人が去年はじめて年間3千万人を超え、来年には4千万人に達するという見方がある中で、『NHKワールド JAPAN』のニーズはますます高まるものと期待しております。地域放送、全国放送、国際放送を一貫して行えることができる国内唯一の放送局として、全国各地の魅力を世界に発信する取り組みも精力的に進めています。また、導入されていないようでしたら、ぜひ、ご検討いただけますよう、お願いいたします。受信料関係では、ケーブルテレビ事業者の皆さまに、NHKの衛星契約の取次と受信料の団体一括支払いの収納取りまとめをお願いしております。おかげさまで毎年、高い実績を確保していただいております。また去年の暮れには、鳥取県の中海テレビ放送が制作した、BS1の番組『米子が生んだ心の経済学者~宇沢弘文が遺したもの~』を見ました。米子出身の世界的経済学者である宇沢弘文の思想の背景を家族や関係者の証言から丁寧に探った素晴らしい番組だと感じました。このほかにも、BS1やBSプレミアムでケーブルテレビ局が制作した番組を年間数本放送していると聞き、放送面でも連携が進んでいることを実感しました。地域に密着し、地域の皆さまから喜ばれる放送サービスを提供しているケーブルテレビや、これまでの、そしてこれからも重要なパートナーです。皆さまとの連携を大切にしながら、地域貢献、そして放送文化のさらなる向上のため、共に歩んでまいりたいと思います」と述べた。 乾杯の挨拶を行った山口正裕日本CATV技術協会理事長は次のように述べた。「昨年、新4K8K衛星放送がスタートした。まだ始まったばかりでみんなで大切に育てて、次の大きなビジネスにしていかなければいけないと思います。技術的にあるいは機材で人材で必要な場合には日本CATV技術協会にお話しいただければすべてのサポートをいたします」と述べた。 中締めの挨拶を松本修一日本ケーブルラボ専務理事が行った。「ケーブルテレビ業界は、これまで地域Wi―FiやMVNOなど無線関係を着実に進めてきたが、今年はいよいよ5Gを展開していく。きちんとした実証実験を行って、ケーブルテレビはこうした5Gの世界を造り上げるということをラボとしても積極的に取り上げていきたい。またもう一つ重要なポイントとしてAIがある。いろいろ情報が流れており、各所で様々なAIの取り組みが行われている。ケーブルテレビ業界でも今年、様々な取り組みを技術的な視点から取り組んでいく。大きなポイントとしては、オートメーションとリノベーションの2つがある。AIを活用し、運用保守、コンテンツ制作などの自動化ができれば、ケーブル事業者さんは非常にハッピーになると思う。そしてAIによってまさしく新しいビジネスを創りあげていかなければいけない。新しいビジネスにはリスクがつきものである。その時に、技術的な目利きとか、先読みができれば、そのリスクを最低限に抑えることができるということで、ラボとして、その使命は非常に重要だなということで、今年も一生懸命、業界に貢献できるよう、やっていきたいと思っています」と述べた。
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