「新年特別インタビュー」ATENジャパン

 ATEN は1979 年の設立以来、接続・共有技術におけるコネクティビティ及び管理ソリューションを専門に製品開発・製造・販売を行ってきた。現在では北米、欧州、アジア各国に拠点を増やし、KVM スイッチ市場において世界的なリーディングカンパニーとなっている。  ATENの日本法人である「ATENジャパン」は2004年に設立され、特に映像関連では先端を走る日本のニーズや要望をくみ取り、本社にフィードバックすることで、機能や性能の向上に寄与している。また、グループ内で初めてショールームを開設した他、各地に営業所などを開設するなど、積極的な事業展開を進めている。社長就任以来毎年二桁成長を続けてきた鄧 鴻群氏に、コロナ禍に揺れた2020年を振り返ってもらうとともに、現在の課題とそれに向けた対策、今後の新事業、成長戦略などについて聞いた。                       ◇  ――2020年を振り返っていただいていかがでしたか、特に2020年はコロナ禍の影響はどの程度あったでしょうか 鄧社長 2020年はコロナ禍の影響を大きく受けた年でした。特に映像関連、デジタルサイネージは人の流れが少なくなり、投資が抑制されたので落ち込みました。一方、リモートワーク関連、遠隔操作・監視は非常に好調でした。製品でいうとCNシリーズ、KNシリーズ、SNシリーズなどで、これらの製品は二十数%増となりました。逆に映像関連は十数%の落ち込みとなっています。色々と対策を講じていますが、中でもECサイト関連での販売を強化しました。ECサイトでの販売は約40%の成長となりました。小口案件が多いですが、引き続き強化していきます。 全体としては6月まではなんとか成長を継続していましたが、6月以降はがくんと落ち込んでしましました。先程お話ししましたが、映像関連が落ち込み、逆にネットワーク関連は成長しました。ECサイトの成長も加わり、全体として2020年度は2019年度とほぼ同じレベルとなりました。ただし、もともと2020年度は2桁成長を計画していたため、計画には未達となりました。 ――ATENジャパン自身のコロナ対策はどのようなものだったでしょう 鄧社長 時差出勤をいち早く導入するとともに、緊急事態宣言以降は在宅勤務をベースに勤務体系を変更しました。緊急事態宣言の解除後も時差通勤を継続しています。また、事業所の消毒の他、手洗い・うがいの精励など感染防止対策に努めています。また、体温計やマスクの確保にも注力しました。それでもマスクは足りなくなったのですが、台湾本社からマスクを大量に送ってもらいました。台湾では政府主導の基、企業が協力して短期間でマスク製造ラインが多数立ち上がり、大量に供給できる体制を構築しました。このため、台湾本社からマスクを送ってもらい、日本ではマスクが手に入らない時期もマスクを確保することができました。 営業や打ち合わせも直接お客様の基に訪問することが難しいため、スタイル、ZOOMやTeamsなどのツールを活用してWeb 商談を行いました。 ――日本各地に営業拠点を構築してきましたが、現在の状況は 鄧社長 東京、大阪に続き、2019年4月に九州営業所を開設しました。2020年は名古屋、仙台、金沢、北海道に拠点を開設する計画でした。名古屋に営業所を開設した他、仙台には駐在員事務所を開設した。その後も順次、各地に営業所を開設していく計画でしたが、コロナ禍の影響で一旦ストップしました。今年は金沢や北海道にも営業所を開設する予定です。 ただし、既存の拠点の強化も進めています。名古屋営業所は元々営業の1名体制でしたが、営業1名およびプリセールス1名を追加し3名体制としました。また、九州でも営業2名、プリセールス1名の3名とします。 ――従業員は現在何名になりましたか? 鄧社長 従業員は現在56名となりました。2021年は63名まで増員する計画です。また、組織を若干変更しました。プリセールスとマーケティングを営業側に移しました。逆にプリセールスからPLを分離するとともに、技術側に移しています。PLが製品をよく理解できるようにするためのもので、営業から技術に詳しい1名をPLに移動させています。 ――神田ショールームではウェビナーも開催しました 鄧社長 神田ショールームでは以前よりセミナーを定期的に開催していました。しかし、コロナの影響でリアルベースのセミナーは難しくなったので、ウェビナー形式で開催することになりました。昨年は合計で12回のウェビナーを開催しました。 また、弊社でも「UC9020」「UC3022」「UC9040」などストリーミング関連の製品がありますので、ZOOMやYouTubeと組み合わせてライブ配信を行っています。これらストリーミング関連製品は、まだ好調とは言えませんが、今後の成長していくのではと期待しています。このうちUC3022は低価格な製品であり個人向けに加え、教育関連に注力しています。 ――製造業向けや教育関連の開拓にも注力されています 鄧社長 製造業での遠隔操作や遠隔管理のニーズは急速高まっており、これはしばらく変わらないと思います。ATENには工場や生産ラインのIT化に貢献できる多様な製品ラインナップやソリューションあります。今後、組み込みも含めて、様々なビジネスチャンスがあると思っています。 教育関連も、現在政府主導GIGAスクール構想が推進されており、教区現場のデジタル化やIT化が進んでいきます。PCなど直接導入される製品は弊社にはありませんが、多くのPCが導入されれば、それらを管理するためのシステムが必要になるため、貢献できると考えています。 教育関連では、金沢大学様に多数の装置を導入いただきました。金沢大学様は、設備の遠隔化により現環境の改善・コロナ禍に対応した研究環境の構築を計画、文部科学省の「先端研究設備整備補助事業(研究施設・設備・機器のリモート化・スマート化)」に公募、採用されました。このシステムにATENのリモートIPソリューションが採用されています。 ――新たな事業展開も考えていますか? 鄧社長 新事業としてセッティングや設定を我々が行うことを考えています。我々の製品のセッティングや設定は、不慣れな方だとなかなか難しく、問合せや技術的な質問を受けることが多いです。当然、技術支援、アフターサービスの体制はありますが、最初からセッティングや設定を行い、お客様に引き渡すまでのサービスとして提供するものです。これにより、お客様とのコミュニケーションもよくなりますし、問題点も明確化します。これまで代理店もしくは、代理店を経由してのSIerさんから問い合わせをうけることが多いのですが、このコミュニケーションが上手くいかないケースもあり、問題点がなかなか判明せずに、問題解決が遅れることもあります。不慣れなお客様の設定などを、我々が直接行いうとともに、テストまでも実施することで、どのような問題が発生したのかを把握することができます。お客様も設定には苦労しているようなので、そこを我々のサービスにより軽減し、問題の発生も少なくなります。実際に我々の人間が入って実施するので、問題が発生しても、現場がすぐわかるので、情報が正しく把握でき問題も早く解決できます。これによりお客様からの信頼性も高まります。 すでに、昨年は何件が試験的に実施しました。今年は本格的にスタートさせる予定で、時期は2021年Q2~Q3ごろを見込んでいます。事業部を立ち上げて実施したいと思っています。これはSIerさんの仕事をとることにはなりません。SIerさんを通しても同じことを行うことになるので、逆にSIerさんの手間を省くことにもつながります。さらに、問題解決の時間も短縮することができます。ただし、正式に事業として立ち上げる際に、すべてを自社でやるよりも、SIerさんを買収する方が効率的かつスピーディーなため、条件に合致するSIerさんを探しています。 ――日本市場の位置づけはどうでしょうか 鄧社長 日本からのフィードバックは重要で、その役割は益々高まっています。日本からの要望で製品化されたものも少なくありません。最近では12G―SDI→HDMIコンバーター「VC486」があります。日本の要望から製品化されましたが、日本だけでなく他の地域でも売れている製品です。 4K8Kの市場は日本が先行しており、そこの情報は非常に大事にされています。お客様からの要求も厳しく、時には無茶な要求(笑)もあるかもしれませんが、それが逆に開発の動力になるケースもあります。日本お客様の本社に伝え、性能向上や新機能につなげることが、ATENジャパンの役割の一つだと思っています。 ――最後に2021年の計画および抱負を 鄧社長 とにかく売り上げを伸ばすことを目標にしています。人員を積極的増やしてきたため、当然、人件費は増えています。最低でも売り上げ増やさなければなりません。 昨年は東京オリンピック・パラリンピック需要も見込んで計画を作成しましたが、延期となりました。今年も実際に開催されるのか、開催されても規模はどうなるかはまだわかりません。このように今年もどうなるかはかなり不透明です。 私が社長に就任して以来、ATENジャパンは15%~20%の2桁成長を続けていました。作年は未達となり、今年も先行きがわからないのであまり大きなことは言えませんが、とにかく売り上げを伸ばしたいと思っています。一方、ATENジャパンの製品を活用できる市場は着実に広がっているので、開拓を進めていきます。繰り返しになりますが、ECサイトを強化します。すでに、昨年11月からMAツールを導入し、自動化を進めています。加えてホームページの改善も行い、お客様がより使いやすくしていきます。 加えてリモート関連に注力します。一般企業は投資が止まっているので、教育関連や官公庁向けにさらに注力します。さらに、官公庁・政府関連では入札情報を代理店やSIerさんにいち早く伝え、受注につなげるような流れを作っていきます。 従来の分野に官公庁など、様々なジャンル・業種へ展開していきます。色々とやりながら、人員も含めて拠点を充実され、現地サービスも強化します。これにより、再び成長軌道に乗せていきたいと思っています。