放送文化基金賞 放送技術はNHKなど4件
公益財団法人放送文化基金はこのほど、第50回「放送文化基金賞」贈呈式を開催した。このうち、放送技術部門はNHKなど4件が選ばれた。放送技術部門は、放送に関連する技術の研究開発あるいは放送現場で工夫、考案で効果を上げた個人・グループに贈られる。
今回は4件を選定。SKYip(スキップ)開発チーム:代表 久米沙也加氏(NHK)の「衛星IP伝送システム(SKYipシステム)の開発・実用化の推進」は、大規模災害時等で携帯電話網が利用できない場合においても、現場と放送局を、衛星を介して映像伝送・インターネット接続を可能とさせ、さらに従来の複雑な接続テスト・雨量による送信モード切替も自動化、誰もが簡単に操作できるようにしている。小型車の開発も併せ行い、すでに全国にSKYip対応SNG中継車や可搬型 CS―IP 伝送装置が導入され、能登半島地震においても携帯電話網・道路が寸断される中で被災状況を発災直後から発信し続けたことは極めて高く評価できるとしている。
ミリ波4Kワイヤレスカメラシステム開発・実用化グループ:代表 松﨑敬文氏(NHK)の「ライブ制作でダイナミックなカメラワークを可能とするミリ波4Kワイヤレスカメラシステムの開発・実用化」は、4Kのライブ制作が増える中、これまでは2Kワイヤレスカメラしかなく4K化が課題となっていた。今回、4K有線カメラと切り替えても違和感のない高画質・低遅延な4Kワイヤレスカメラを実現した。これによって出演者の間近を移動しながら撮影する迫力あるカメラワークも4K画質で実現でき、2023年末の紅白歌合戦のオープニングで1分半の連続撮影をする等、演出効果を高めたことは高く評価できるとした。
プロ野球中継高度化検討チーム(日本テレビ放送網、キヤノン、読売新聞東京本社):代表 篠田貴之氏(日本テレビ放送網)の「ボリュメトリックビデオを用いたプロ野球中継」は、101台の専用カメラを、球場グランドを取り囲むように設置、これらの映像から空間内の自由な位置、角度からの映像を再生できるボリュメトリック(自由視点)映像を生成、選手目線の映像やファインプレイの瞬間を停止して上下左右自由な位置からの映像で再現するなど従来のカメラでは実現できない視点からのリプレイ映像を実現した。2023 年には東京ドームの巨人戦全 68 試合で使用し好評を得ていることは高く評価できるとした。
照明業務支援システム開発チーム(朝日放送テレビ、パナソニック、森平舞台機構):代表 瀧本貴士氏(朝日放送テレビ)の「照明業務支援システムの開発」は、スタジオ照明設備のLED化が進んでいるが、電源線のほかに制御線の接続、照明ネットワークの設定必要となり、業務量は白熱球の5割増しと試算された。本システムでは照明ネットワーク設定作業の自動化、照明器具のバトンへの吊込み位置表示システム等を開発、業務量を白熱球時代の1/2~3/4に軽減することに成功している。女性の進出が著しい照明業務の中で本システムの開発による働き方改革への取り組みは高く評価できるとした。
(全文は7月19日号3面に掲載)
トップの画像はNHK・久米沙也加氏
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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