JCBA 鈴木信幸代表理事Interview

コミュニティ放送は、放送エリアが地域(市町村単位)に限定されるため、地域の商業、行政情報や独自の地元情報に特化し、地域活性化に役立つ放送を目指している。営業エリアの狭さをカバーするため地区ごと、全国での共同営業に取組むほか、使命ともいえる防災・災害放送では地域と緊密な連携を保つなど、様々な問題に放送を通じて貢献している。
一般社団法人日本コミュニティ放送協会(JCBA、東京都港区)は、総務省・関係機関が認める唯一の団体で、コミュニティ放送事業者の相互啓発と協議により放送倫理の向上を図るとともに、コミュニティ放送事業者の共通問題の解決を推進することにより、コミュニティ放送の健全な発達・普及を促進することなどを目的としている。JCBA 代表理事の鈴木伸幸氏(FMおだわら )に、コミュニティ放送局の現状、コミュニティ放送に必要なもの、今後の抱負などについて聞いた。

――この1年で特に心に残った出来事は
鈴木 今年1月1日に能登半島地震がありました。コミュニティ放送は(石川県)七尾市にはありますが、半島北部は、NHKさん以外のラジオにとってはいわば空白地帯で、改めて災害時、地域への情報伝達の仕方をどうするべきかということを考えさせられました。
今回、現在に至るまで臨時災害放送局(臨災局)は立ち上がっていません。理由は様々ありますが、免許主体となる自治体も被災しており、人的に余裕がなかったり、臨災局に関する認知度が低く、ハードルが高かったことが主なものではないでしょうか。
また、防災行政無線も一部の地域で、長い期間出なかったり、集落ごとに情報伝達の格差が生じていたようです。
また、今回はKDDIさんが提供したStarlinkの影響が大きかったと感じています。衛星回線によりWi―Fiが通じ、平時に近い通信状況が確保できたようです。しかし、それも一部地域のみで、広いエリアに平等に情報伝達を可能とするのは、コミュニティ放送が有用だと思います。
実は被災した地域の50%ぐらいはケーブルテレビに加入しており、平時の際の情報インフラとなっていましたが、ケーブルが断線してしまい、情報を伝えることが出来ませんでした。このことから、複数の情報伝達手段があることが望ましいことがうかがえます。
また、先月姫路で弊協会の総会を開催しました。コロナ禍を乗り越え、6年ぶりの地方開催となりましたが、その他にも全国の各協議会などに、私も含めて理事も積極的に参加し、中央と地方の距離を詰めることを行ってきました。それらが奏功し、互いの顔が見える関係になりつつあるのかなと思っています。先日も沖縄に行ってきましたが、それぞれの会社の運営状況や実態が分かりました。やはり実際に話してみないと分からない部分は多いです。
日本全国、本当に様々だなと実感した1年でした。
この他、トピック的なものとしては「茅ヶ崎エフエム」の開局があります。アミューズ他が立ち上げたコミュニティ放送ですが、あのような大手エンターテイメント企業が、コミュニティ放送に理解を示していただいたことは大きなポイントです。開局してからいろいろあったようですが(笑)、常に良い関係を築いています。あのような大手さんが可能性を見いだしてくれたら、色々な新しいことができるのではないかと感じています。

(全文は7月31日号3面に掲載)

この記事を書いた記者

アバター
成澤誠
放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。