伊藤忠ケーブルシステム 中谷晃治社長に聞く
伊藤忠ケーブルシステムは、映像、通信、音響のシステムインテグレーターとして、ケーブルテレビからCS/BS放送、地上波、ポストプロダクションと幅広い分野へ製品・サービス・サポートを提供している。
中谷晃治社長に、ケーブルテレビ業界の動向、新製品・新サービスの展開、今年の抱負などを聞いた。
――2024年を振り返っていただき、どのような年でしたか
中谷 全体的には弊社の業績的には、一部内容は違うところはありますが、2023年と定量的にも定性的にも変わっていないというのがおおまかな感想です。
個別では、昨年もお話したオリジナル商品である「CERCA(セリカ)」が地方局からの引き合いが多く、様々なニーズに丁寧に対応して提案しました。また、CATVの方では、制作の方の送出システムの受注がありましたので、その点では好調でした。
また放送やケーブル業界だけではなく、違う業界への展開をトライして、少しずつ成果が出始めたかなっていう感じです。
(CATVの)インターネット関連では、FTTHはひと段落しており、各ケーブル局でインターネット加入者が大幅に増加するということもありませんので大きな変化はありません。ただし、品質の向上は継続して取り組んでおられるので、高速・大容量化の需要はあります。ケーブル局の収入源としてインターネットは、局によってはもう放送を上回る局もあるので、今後も堅調に推移するとみています。
――他分野・他業種への展開ですが、具体的にどのような分野でしょうか
中谷 代理店を務めている独IHSEのKVMスイッチは、従来は放送局向けに販売していましたが、空港でそのような案件がありました。さらに、海外ではIHSEのKVMスイッチは、政府系や防衛機関、金融機関とか医療系など基幹設備に使用されています。日本では航空関連を足掛かりに、公共交通機関などにも展開していく予定です。
また、ゲーム業界もターゲットです。世界的にeスポーツは大きな盛り上がりを見せており、IHSEのKVMスイッチは様々な大会に採用されており、多くの実績があります。一方、日本では採用実績があまりないので、改めてeスポーツを狙っていきます。さらに、ゲーム関連では、ゲーム制作企業からパカパカチェッカーのニーズがあります。今までは放送局向けだけしかありませんでしたが、新しいニーズが出てきています。
このように、扱っている製品は変わりませんが、放送局やケーブル局だけでなくその周辺や、全く違う航空関連など幅広く提案を始めているところです。
――2025年に特に期待している製品にはどのようなものがありますか
中谷 昨年のInterBEEで初めて紹介した「Quick Inserter(クイックインサータ)」があります。nablet GmbHと伊藤忠ケーブルシステムの共同開発によるオリジナルソフトウェアで、誰でも簡単にファイルを修正ができるものです。InterBEEの時はデモ版でしたが、現在最終的な調整を行っており、4月から本格的に営業活動を開始する予定です。
もう一つは昨年に引き続き「CERCA」です。元々お客様のニーズを考えて開発した製品です。大手メーカーが取り組まない地方の放送局をターゲットにしており、地方局で必要なものだけに機能絞っているなど、細かいニーズを汲み取っています。多くの地方局に続々と導入されることを期待していますので、それが現実化するように2025年度は取り組みたいと思っています。
――AI蓄電池「SMART STAR」はいかがでしょうか
中谷 AI蓄電池は広がっています。昨年のインタビューでは、狭山ケーブルテレビへの提供が決まったぐらいの時期でしたが、その後、複数のケーブル局に加入者向けのAI蓄電池の提供を開始しています。すでに、実際の成約までいったケースもあります。
昨年もお話ししましたが、ケーブル局業界は横のつながりが強く、どのケーブル局が新しい製品を導入・採用したという話はすぐに広まります。実際、導入された話を聞いて、「うちでも導入を検討したいので話を聞かせてくれ」などの引き合いは増えています。
ケーブル局も興味はあるけど、リソースもないし、説明もできないというケースも少なくないのですが、「それらも全部うちの方で用意させていただきますので、お客さんにご紹介だけしてください」と説明しています。また、据付のお手伝いもします、そんなに安いものではないので、伊藤忠グループの方でファイナンスも付けるなど、極力ケーブル局の手間が掛からないスキームを提供します。弊社が直接加入者にセールスしにいってもなかなか話を聞いてもらえませんが、地域に密着したケーブル局からの紹介ということであれば少なくても話は聞いてもらえます。お互いの強みを生かしたスキームになっていると思います。
太陽光発電システムを導入している家庭は多いですが、ほとんどが蓄電システムを持っていません。防災の切り口でもアピールしていきたいと考えています。能登半島地震など大きな災害が近年多数発生しています。災害時には電気がストップするので、スマホや電気製品が使えなくなってしまいます。社会的にも蓄電システムの必要性が認識され始めており、同システムの導入に補助金を給付する自治体も出てきているので、それらも活用しながらさらに広げていきたいと考えています。
(全文は1月31日号6面に掲載)
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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