「ファイスナー・メモ③」
第1部 放送民主化の夜明け(昭和22年) ファイスナーは、放送に関する四原則を貫くため、これらを管理運営する機関の設立の主旨について、さらに言葉をついでいう。 「これは国民に奉仕する機関であり、理想的にいえば憲法により民主的に設立された政府を通じ、自己の欲求と希望を表明する日本国民によって支配される機関であるべきである」。(注・鈴木次官や古垣会長らは一瞬、これをどのように解釈したらよいか、まったく前例のない機関を作れといわれ、とまどいの色をみせた)。それをみてとったファイスナーは、すかさず次のように強調した。 「ここに注意してもらいたいのは、SCAP(総司令部)は決してこの機関が法律により国内及び海外放送の独占を唱道しているのではなく、実際はその反対を唱道しているという点である。 SCAPは同法が経済状態が許す時がきた暁には、日本において民間会社相互間または民間会社とこの公共機関との間に、放送における自由競争を発揮させるよう日本における民間放送会社の助長に備えた規定を設けることを示唆する」と正に命令調であった。そして「他の言葉を借りていえば、同法は将来、現在の日本の鉄道機構すなわち公営民営併存方式にも比すべき放送(の運営)方式の発展を許すようにすべきである。 将来においては、一方に公共機関、他に民営による二つの放送方式が発達するわけであるから、従ってこの公共機関は主な二つの要素から組織されなければならない。 第一のことは監督または管理部門である。この監督または管理部門は規定の条項に従って放送に関する方策を決定し、また公共機関及び民間会社によって運営せられるすべての放送を免許またはその他の方法によって管理する。 この公共機関の第二の要素は運営部門である。この運営部門へは現在主として日本放送協会によって運営させられている放送施設を移管して、これを実際に運営する。 この基本法には明確な文言(注・条文)を以て上記した事項の保証を規定しなければならないが、それに加えて特に大小にかかわらず如何なる集団、派閥、団体の干渉をも許さない番組(編成)の特権を保証しなければならない」と、法案作成にあたっての基本について実に明解に指針を与えている。 その上で「逓信省がこの法律のこの部面を立案するようになった時には、CIEは逓信省の必要とするいくつかの確固たる意見を用意するであろう」と結んでいる。 またその他について要約すると「労働基本権」に関することと、公共放送について「すべての受信機所有者から聴取料を取る権利の規定化などを法案の骨子とすべきだ」といっている。以上が新放送法作成についての大要である。 いずれにしてもこの示唆によって、「民放の設立」が容認され、またNHKは「公共放送」としての地位が確立されたのである。 (第31回に続く)