NHK大河ドラマ「べらぼう」制作統括・藤並英樹氏 作品を語る
NHKで1月5日に放送がスタートした大河ドラマ第64作「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。町人文化が華開いた江戸中期、喜多川歌麿や東洲斎写楽らの浮世絵を世に送り出し、“メディア王”として、流行の最前線を走り抜けた蔦屋重三郎の生き様を描く、大河ドラマとして初の痛快時代劇として話題を呼んでいる。脚本は森下佳子氏。主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎を演じるのは、NHKドラマ初主演の横浜流星さん。
制作統括の藤並英樹チーフ・プロデューサーが企画意図や制作にあたっての矜持を語ってくれた。
「テーマのひとつは江戸の“格差”です」
大河で一年間、ドラマを作っていく上でまず、現代とリンクした作品にしたいという思いがありました。 今の日本は一見、平和そうに見えますが、閉塞感が漂っているのではないか、という思いを抱いています。若い人たちと話すとそれは特に顕著であると感じます。
「べらぼう」の舞台となる江戸中期は、冷夏や自然災害があり、飢饉もあったそうです。武士や町人たちの間でも格差がはっきりしており、閉塞感があり、今の日本と非常に似た状況でした。
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そういう中で「吉原」という特異な場所で生まれ育った蔦屋重三郎という男が江戸カルチャーを生み、閉塞感漂う世の中で自分の分を越えて時代を駆け抜けた。これは今の時代を生きる人たちにも共感していただけるのではないかと考え、脚本家の森下佳子さんのところへ相談に行きました。森下さんからは「本気なの?」と言われましたが(笑)。
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蔦屋重三郎の出身地は遊郭の吉原ですが、女郎の間にも格差があったし、厳しい搾取がありました。このドラマでは、そんな格差の問題や閉塞感をエンターテインメントにして届けたいという思いがあります。森下さんはそこの按配が非常に長けている方です。見てくださる方々には、娯楽時代劇として楽しんでいただきながら、そんなテーマを感じていただけたらいいなという思いがあります。
吉原を描くにあたっては色々な意見があると思います。森下さんと話したのは、“華やかな部分だけを描くのはやめましょう”ということです。格差や搾取があった吉原という場所の構造をきちっと描かないといけないという思いがあります。蔦屋重三郎の人生、生き方、そして心意気の根本になっているので、ここはしっかり描かないといけないなと。一方で性的な表現は繊細に描く必要がありますので、インティマシーコーディネーターの方に入っていただき、演者の方々が納得する表現になるよう注意しています。否定的な意見があったとしてもそこには真摯に答えていくつもりです。
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この作品は、歴史上の英傑が天下を統一する話ではなく合戦シーンもありません。しかし、愛憎劇が色濃く描かれているので、人間ドラマとして面白く見ていただける自信はあります。また、美術や小道具一つひとつにもこだわっているのでそこにも注目してほしいです。映像技術という面ではバーチャルプロダクションで吉原の町をスタジオの中に再現しました。技術チームと美術チームが一丸になって取り組んでいます。
この記事を書いた記者
- テレビ・ラジオの番組および会見記事、デジタル家電(オーディオ、PC、カメラ等)、アマチュア無線を担当
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