NHK連続テレビ小説「あんぱん」柳井登美子役の松嶋菜々子さんがコメント

「嵩に対しては母親の愛情をきちんと伝えられるよう、丁寧に演じていきたいと思っています」

 

 現在第4週が放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。主人公・のぶ(今田美桜)の幼なじみ、柳井嵩(北村匠海)の母親・登美子は、文化的教養が豊かで美しく、勝ち気で利発な女性。嵩が幼い頃、夫を亡くした登美子は再婚し、嵩と千尋の兄弟を置いて出ていってしまう。8年間、音沙汰がなかったが、突然柳井家に戻ってくる。そんな母の奔放な振る舞いに嵩は翻ろうされる…。
 
 登美子役を演じている俳優・松嶋菜々子さんのオフィシャルコメントが届いた。

 

――今回、北村さん演じる嵩の母親役ですが、松嶋さんは登美子という人物を、どう捉えて演じていますか?

 

 北村さんの母親役は二度目なのですが、今回はまた違った性格の母親なので、ご一緒できるのが楽しみでした。北村さんはすごく落ち着いていて、どっしり構えている方で、本当にこんな息子がいたらいいのになぁと思っています。

 

 登美子は発想が少し独特なのかなと思います。子どもへの愛情がありながらも、自分の人生に迷いがあったり、葛藤を抱えていたり……。演じる上では、そうした心の揺れを理解することが大切だと感じています。実際、嵩のモデルであるやなせさんの母親も、息子たちを残して姿を消したと聞きました。そうした複雑な背景を持ちながら“アンパンマン”という作品を生み出したやなせさんにとって、母親は影響力のある存在であり、発想の源だったのだろうなと。

 

 登美子の突然現れては周囲を振り回し、またいなくなってしまうという設定だけをとるとどこか冷たく感じるかもしれません。けれど、嵩に対しては母親の愛情をきちんと伝えられるよう、丁寧に演じていきたいと思っています。

 

――第2週では、出て行った登美子の元へ、嵩が会いに行くシーンがありました

 

 どういう塩梅で演じようか迷った部分ではありました。スタッフの方たちとは、夫である清(二宮和也)さんを早くに亡くしたことで、ぽっかりと空いた穴を埋められず、それを埋めるための愛情を求めているのではないか、だから自分のことで精一杯なんじゃないかとお話しして。

 

 とはいえ、時代的にも、より子どもが幸せになるのであれば、置いていくことも子どもたちにとっては最良の選択であり、そこになじんでほしかったからずっと連絡を取らなかったんじゃないかとか。いろいろ想像しながら臨みましたね。

 
 

 

――第3週で8年ぶりに町に帰ってきた登美子ですが、のぶ(今田美桜)に思いをぶつけられるシーンもありました

 

 どういう反応をしていいのか分からなかったですね。のぶちゃんに責められたことよりも、嵩が言った「のぶちゃんは、母親に捨てられたことないだろ」という言葉のほうが心に響きました。捨てたつもりはなかったので……。

 

 でも、のぶちゃんに言葉を返さなかった登美子を通して思うのは、自分の行動を全部説明できなくてもいいのかなと。気持ちの整理って全部が全部ついていなくてもいいんじゃないかなと思いましたね。

 

――第4週では、嵩を医者にするために登美子が後押しします

 

 自分と清さんの子ならできると信じる気持ち。寛先生や千代子さんに恩返しをしたいという気持ち。自分の居心地をよくしたいという気持ち。たぶん全部本当の気持ちで、言ったことがそのままの人なのかなと。周りから見たら支離滅裂だったり、言動に驚かれたりするかもしれませんが……。

 

 それでも嵩は、どんな時もやさしく受け入れてくれるんですよね。いつも振り回してしまいますが、会うたびに、少しでも嵩が“母のやさしさ”を受け取れる瞬間があるように、表現していけたらいいなと思います。