大阪・関西万博メディアデー体験レポート【NTTパビリオン】

 2025年日本博覧会協会「大阪・関西万博」の13日開幕を前に、主催する2025年日本博覧会協会は11日、報道関係者を対象とした事前公開に当たるメディアデーを開催した。当日は会場施設のうち、国内パビリオン27館、海外パビリオン129ヶ国地域、7国際機関とWEM(World Expo Museum)のほか、レストラン・ショップやイベント施設の一部を公開。国内外からメディア関係者約4500人が来場し、各施設を体験した。このうち一部施設や公開情報を紹介する。
【NTTパビリオン】
 NTTは、会場東ゲートからすぐの場所にパビリオンを設置。「Parallel Travel」をテーマに、大容量、低遅延通信の実現を目指す次世代情報通信基盤「IOWN」による空間伝送技術を活用したコミュニケーションの未来を感じさせる体験を提供している。
 パビリオンのデザインコンセプトは「感情をまとう建築」。体験テーマに合わせた3つの展示棟と管理棟の4棟から成る分棟方式で、柱の代わりに国内初となるカーボンファイバーを採用したテンション構造を採用。カーボンワイヤーにより建物の梁部材を吊り上げることで小さい部材寸法で展示空間に適した大スパン架構を実現したといい、鋼材重量や二酸化炭素低減を図ったという。
 体験ツアーは一回につき約70人が参加でき、所要時間は約20分。3つのテーマに分かれた展示棟を順番に巡りながら、通信やコミュニケーションの未来を体験できる仕組みという。
 Zone1では、全体の序章に当たる「コミュニケーションの進化と普遍」が体験できる。棟内には手紙やモールス信号、手回しのアナログ電話やスマートフォンといった通信の変遷を示す道具が展示されているほか、背面ディスプレイでは通信の進化の歴史やコミュニケーション、感情を表現した映像を体験できる。

 Zone2では、世界的テクノポップユニットのPerfumeをスペシャルパフォーマーとして迎え、リアルタイム3D伝送によるライブパフォーマンスを体験できる「IOWNによる3D空間伝送体験」を用意した。参加者は3D眼鏡を着用し、目の前にperfumeがいるかのような迫力の映像を楽しめる。また床に埋め込まれた百数十個の振動子(振動を再現する部品)がPerfumeのステップを再現するかのように振動することで、ライブ会場の真っただ中にいるかのような臨場感を体験できる。
 Zone3のテーマは、バーチャル世界でのもう一人の自分との対話をイメージした「Another Me 未来の可能性との出会い」。参加者は入り口にあるカメラで全身写真を撮影することで、仮想現実上のもう一人の自分「Another Me」を作成。生成AI等を活用して表情を変えたり年齢を遡ったり、ダンスを踊ったりといった姿を壁面ディスプレイで楽しむことができる。

 Zone3を出てすぐの場所には、来場者が建物内で感じた体験をより深化させる仕掛けを用意。誰もが共感するような日常のワンシーンを再現した「せかいがきこえる伝話」や、万博会場内の「いのち動的平衡館」とをIOWN―APNでつなぎ、音と映像に加えて触覚(お互いの心拍)を伝送する「いのちふれあう伝話」、Zone3の「Another MeR」から音声メッセージを受け取ったり大規模言語モデル「tsuzumi」を使って対話できる「Another Me Planet」を楽しむことができる。
 パビリオンを覆うように格子状に飾り立てたポリエステル製の布は、Zone2内に設置したカメラと連動している。撮影した参加者の笑顔を読み取り、IOWNを使って遠く離れたNTT西日本本社へとデータを伝送。光信号によるAI分析を経て参加者の表情を会場内の盛り上がりを示すパラメータとしてパビリオンに伝送し、呼応させるように布を揺らす仕組みという。

 伝送のコア技術となるIOWN 光コンピューティングには、低消費電力のキーテクノロジーとなる光電融合デバイスを世界で初めて搭載した。同社ではAI技術を活用して便利さ・豊かな暮らしの実現と低消費電力の両立を目指し、2032年度までにデータセンタの電力消費1/100を目指す「IOWN構想」を推進している。これに向けた「IOWN2・0」として、今回の万博で初めて消費電力を従来の1/8に抑えることに成功したという。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。