実録・戦後放送史 第43回
「放送法の原則①」
第1部 放送民主化の夜明け(昭和25年)
網島長官は、新しい法律によって公共放送を行う「特殊法人・日本放送協会」の設置および、民間放送の併立等について、次のように説明した。
「次に放送法案の概略について申し上げます。
放送法案は、第一条に示してございます三大原則に従いまして、放送を公共の福祉に適合するように規律いたしまして、その健全な発達をはかることを目的として立案されたものでございます。
この法案も、放送の経営及び規律に関する各国の例を研究調査いたしまして、その長所をとり、かつわが国の国情も十分考慮して立法したものでありまして、放送立法について世界に一つの新例を開くものでございます。
まず放送法案の特色といたしますところは、第一には、わが国の放送事業の事業形態を、全国津々浦々に至るまであまねく放送を聴取できるように放送設備を施設しまして、全国民の要望を満たすような放送番組を放送する任務を持ちます国民的な公共的な放送事業体と、個人の創意とくふうとにより自由闊達に放送文化を建設高揚する自由な事業としての文化放送企業体、いわゆる一般放送局または民間放送局というものでありますが、それとの二本建としまして、おのおのその長所を発揮するとともに、互いに他を啓蒙し、おのおのその欠点を補い、放送により国民が十分福祉を享受できるようにはかっているのでございます。
次に公共的な放送企業体としましては、現在わが国の放送を独占的に実施しております日本放送協会が、約六千人の社員によって構成される社団法人であるにかんがみまして、新たに全国民に基盤を持つ公共的な特殊法人である日本放送協会を設けることといたしまして、現在の社団法人日本放送協会の設備、人員、権利義務の一切を、新しい日本放送協会に移しまして、現在の社団法人日本放送協会は解散するものといたしましたのでございます。
従いまして新しい日本放送協会につきましては、全国民が国会を通じてその人事、業務の運営、財務等について必要な監督を行うものでございます。
以上は放送法案の大要でございますが、さらにこれを敷衍いたしまして御説明申し上げます。
放送番組につきましては、第一条に、放送による表現の自由を根本原則として掲げまして、政府は放送番組に対する検閲、監督等は一切行わないのでございます。
放送番組の編集は、放送事業者の自律にまかせてはありますが、全然放任しているのではございません。 この法律のうちで放送の準則ともいうべきものが規律されておりまして、この法律で番組を編成することになっております」。
(第44回に続く)
阿川 秀雄
阿川 秀雄
1917年(大正6年)~2005年(平成17年)
昭和11年早稲田大学中退、同年3月、時事新報社入社、以後、中国新聞社、毎日新聞社等を経て通信文化新報編集局次長。昭和25年5月電波タイムス社創立。
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