実録・戦後放送史 第44回
「放送法の原則③」
1部 放送民主化の夜明け(昭和25年)
国会における網島長官の次の説明は、新しい日本放送協会の設立についてだった。
その順序としては、内閣総理大臣がまず経営委員会の委員を指名し、その指名された委員が、協会の設立前に会長となるべき者を指名する。
これによって、これらの法律が施行されたとき(注・六月一日)スムーズに新しい協会の設立ができるようにする、という考え方を述べた。
次に[民間放送の開設]については、
「できる限り自由にこれをまかせる方針で、第三章に最小限度必要な規定を二箇条だけ設けるにとどめたのであります。
これは民間放送の将来がいかように発達するか、まだ見通しをつけることが非常に困難であることと同時に、民間放送にある特別な特権を与えますと、政府の監督その他の行為が必ず伴う。
それによって民間放送の自由な発達を妨げるためでございまして、将来民間放送が発達いたしましたならば、場合によりまして、法案を改正して必要な規定を挿入することになるかとも存じております。
ただ民間の放送の事業の発達をはかる一つの方法として、広告放送について、この法律(放送法)の附則によって地方税を改正し、新聞、雑誌、書籍等の広告と同様に免税とすることにしたのであります」と説明した。
当時としては、この法律によって免許開設される(予定の)民間放送が果たして事業として成り立つかどうか、政府としても強い懸念を抱いていたことが、網島長官のことばでも窺えるのであった。
最後に網島長官は「放送用受信設備」つまりラジオ受信機については、
「現在は、すべて政府の許可を必要とすることになっておりますが(中略)、この新しい電波法におきましては、放送用受信設備の施設につきましては許可を必要としないことになっております。
しかも、この放送の普及をはかるという見地からいたしまして、現行の地方税を改正し、いわゆるラジオ税という、すなわち放送を聞くということによって税金を課せられないということにしておるのでございます。
なお、この法律で規定していないことで、ご参考までに申し上げたいことは、現在日本放送協会から特許料というものを政府が徴収しております。これはごく小額でございますが、今後この法律では、そういう性質のものは徴収いたさないことにしております。
またこの法律は電波を利用する放送事業だけを対象としているので、有線放送については規定してございません」
以上で電波法、放送法案についての趣旨説明を終えた。
私も記者席にあって、長い、しかも綿密な説明を聞いて、日本で初めて生まれる電波三法の目的と精神がよく解った。
阿川 秀雄
阿川 秀雄
1917年(大正6年)~2005年(平成17年)
昭和11年早稲田大学中退、同年3月、時事新報社入社、以後、中国新聞社、毎日新聞社等を経て通信文化新報編集局次長。昭和25年5月電波タイムス社創立。
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