実録・戦後放送史- 電波取材に生涯を捧げた 記者・阿川秀雄の記録 -


実録・戦後放送史 第65回

「辻委員長の総括説明⑤」

第1部 放送民主化の夜明け(昭和25年)
 辻委員長は、放送法案についての大要説明のあと、電波監理委員会設置法案についての趣旨目的を説明、次いで衆議院電気通信委員会における審議経過、とくに三法案の修正点などを含めて次のように述べた。

 
 辻委員長 
 以上、放送法案の大要につきご説明申したのでありますが、最後に電波監理委員会設置法案は、電波監督行政機関として新たに設置さるべき電波監理委員会の組織、権限を定める三十箇条及び附則よりなる法律であります。
 すなわち、総理府の外局として電波監理委員会を設け、これに現在電気通信省の所管となっている電波及び放送に関する監督行政を移管、所掌せしめんとするものでありますが、この行政が特に公平性、不偏不党性及び政策の恒久性を強く要望せられていることにかんがみ、行政機関の形態として委員会制をとることとし、その構成員たる委員長及び六名の委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命し、かつ委員は毎年一名ずつ交代することとなっております。
 電波監理委員会には、事務局として電波監理長官を長とする電波監理総局、並びに前に申し述ました聴聞を行うための審理官五名以内を置くものであります。
 以上をもちまして三法案の内容の概略に関するご説明を終わったのでありますが、申すまでもなく、これら三法案は、わが国の電波行政及び放送事業の将来を左右すべき重大案件でありますので、電気通信委員会におきましては、昨年十二月二十二日及び二十三日法案の付託を受けまして以来、十数回にわたる会議を開きましたほか、電波監理委員会設置法案につき内閣委員会と、放送法案につき文部委員会と連合審査を行い、さらに放送法案について二日間、他の二法案について一日間の公聴会を開催、三十一名に上る公述人から意見を徴し、その他本件に関する請願、陳情、意見書、新聞論調等各方面の意見はことごとくこれを考慮の中に取り入れ、あらゆる角度から慎重審議を重ねたのであります。
 従って、委員会における政府との間の質疑応答もきわめて精細かつ多岐にわたっておりまして、一々ご紹介申し上げることは、とうてい時間の許すところでございませんので、これらに関しましてはすべての会議録によってご承知願うこととし、ここでは単に、委員会において根本的な問題として最も論議の焦点となったものは、わが国放送事業経営形態を協会放送、民間放送の二本建とすることの可否、民間放送の助長育成の方途、協会に対する国家監督の方法及び受信料決定の適否、電波監理委員会と内閣との関係の問題等であったことを申し添えるにとどめたいと存じます。
        (第66回に続く)

阿川 秀雄

阿川 秀雄

1917年(大正6年)~2005年(平成17年)

昭和11年早稲田大学中退、同年3月、時事新報社入社、以後、中国新聞社、毎日新聞社等を経て通信文化新報編集局次長。昭和25年5月電波タイムス社創立。

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