実録・戦後放送史 第66回
「辻委員長の総括説明⑥」
第1部 放送民主化の夜明け(昭和25年)
辻委員長は、放送法案等の修正案に関し具体的に説明を続けた。
「委員会は、本月四日に至り、ようやく三法案に対する質疑を終了いたしたのでありますが、この約三箇月にわたりまする審議の結果、委員多数の意見といたしまして、電波法案及び放送法案に関し若干の点において政府提出原案に修正を加えることが必要であるとの結論に達し、昨七日の委員会席上、電波法案については自由党、日本社会党、民主党、国民協同党及び農民協同党の、また放送法案については自由党、民主党、国民協同党及び農民協同党の各党所属委員の共同提案として、両法案に対する修正案が提出され、自由党の高塩三郎君がこれの趣旨の説明に当たられたのであります。
以下、右修正案の内容に関し概略をご説明申し上げたいと存じます。
まず放送法案に対する修正案は、本則二十二箇条、附則五項にわたる修正でありますが、そのうち主として立法技術の理由によるものを除き、重要な修正点のみについて申し上げます。
第四条第一項は訂正放送に関する規定でありまして、原案によれば、放送事業者が真実でない事項の放送をした場合、その事項に関する本人または直接関係者から請求があれば、事業者は請求を受けた日から二日以内に訂正取消しの放送をするか、または本人等に弁明の放送をさせなければならないことになっているのでありますが、この規定は実行上種々の障害を惹起するおそれがありますので、修正案におきましては、訂正の請求は権利の侵害を受けた場合に限ること、請求の期間を放送のあった日から二週間以内とすること、請求を受けた事業者は遅滞なくその放送の真偽につき調査すること、調査の結果真実でないことが判明したときは、その日から二日以内に訂正取消しの放送をすること、本人等の弁明放送は認めないことの五点にわたる修正を加えたのであります。
第九条は日本放送協会の業務に関する規定でありますが、修正案は、第一項四号の協会の研究活動の範囲を拡張して放送番組に関するものも加え、第二項第四、五、六の各号と第五項に関し協会の業務範囲を明確にいたしました。
第十六条第一項につきましては、放送と教育との密接なる関係にかんがみ、経営委員会委員選任の基礎分野に、文化、科学、産業と並んで教育を加えることといたしたのであります。
第三十二条第二項は、協会が徴収する受信料は月額三十五円とする旨の規定でありますが、この金額は現行のものをそのまま踏襲したにすぎませんので、原案に盛られている受信料法定の趣旨を貫くため、修正案におきましてはこの規定を削除し、新たに第三十七条に一項を追加して、受信料の月額は、国会が同条の規定により協会の収支予算を承認することによってこれを定める旨を規定するとともに、附則に一項を設け、国会が受信料の額を定めるまでは、その月額を三十五円とする旨の経過規定を置くことにいたしたのであります。」 (第67回に続く)
阿川 秀雄

阿川 秀雄
1917年(大正6年)~2005年(平成17年)
昭和11年早稲田大学中退、同年3月、時事新報社入社、以後、中国新聞社、毎日新聞社等を経て通信文化新報編集局次長。昭和25年5月電波タイムス社創立。
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