実録・戦後放送史 第67回
「辻委員長の総括説明⑦」
第1部 放送民主化の夜明け(昭和25年)
辻委員長の説明は続く。
次に第四十四条は協会の放送番組編集上の準則でありまして、その第三項はいわゆるラジオ・コードに相当する規定でありますが、諸般の角度から検討の結果、修正案におきましては、公安を害しないこと、政治的に公平であること、報道は事実を曲げないですること、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることの四原則をもって規律することが最も適当であるとして、原案に対し所要の修正を施したものであります。
なおこれとともに、前に申し述べました通り、放送事業は民間放送といえども高度の公共性を帯びるものでありますから、協会放送に対して要求されるこのラジオ・コードは、民間放送に対してもまた要求さるべきものであるとの見解に立って、修正案は第五十二条の次に一条を設け、前述の四原則を一般放送事業者に準用することにいたしました。
次に第五十条に関する修正は、協会解散の場合、残余財産は国に帰属することといたしまして、第四十八条の規定による免除の根拠を設けたものであります。
次に電波法案に対する修正案についても、辻委員長から説明が行われた。
電波法案は、本則十六箇条、附則六項にわたっておりますが、その多くは立法技術上の理由に基づく修正でありますのでご説明を省略し、重要なるもののみについて申し上げます。
第四十五条第三項は無線従事者国家試験の免除に関する規定でありますが、修正案は免除の条件の緩和をはかるとともに、場合によっては試験の全部を免除することができることとし、第五十条第一項、船舶無線電信局の通信長の資格条件についても、実情にかんがみ若干緩和する修正を行ったのであります。
第七十一条は、電波監理委員会が公益上の必要により無線局の周波数または空中線電力の指定を変更する場合の規定でありますが、原案によりますれば、この変更は、当該無線局の目的の遂行に支障を及ぼさず、かつ無線設備の変更を要しないか、軽微な変更にとどまる場合に限られており、規定の運用上支障を生ずることが予想されますので、修正案は所要の修正を加えるとともに、その変更によって生じた損失は国が補償することとし、これに関する規定を追加いたしました。
第七十六条は無線局の運用の停止、制限及び免許の取り消しに関する規定でありますが、原案においては、これらの処分をなす場合を電波法またはこれに基づく命令、処分に違反したときに限っておりまするのを、放送法関係の違反の場合をも含めることに修正いたしました。
その他第百十二条、第百十三条の刑罰規定の一部を修正して刑罰の軽減をはかり、附則に一項を加え、電波法施行後三年間、特定の近海区域においては、第二級無線通信士が主任として国際通信に従事し得る旨の経過規定を設くる等の修正を行い、附則第一項の施行期日を、交付の日から起算して三十日を経過した日と改めたのであります。この施行期日の修正は、法案審議の状況及び公布後の実施準備期間を考慮したものでありますが、放送法及び電波監理委員会設置法の施行期日は、いずれも電波法施行期日と一致するようになっておりますことを念のため申し上げておきます。
以上、両法案に対する修正案のご説明を終わったのでありますが、委員会は同じく七日討論を行い、まず民主党を代表して川崎秀二君は電波放送両法案に対する修正案及び修正部分を除く原案並びに電波監理委員会設置法案に対し賛成の意見を、共産党を代表して江崎一治君は反対の意見を、国民協同党を代表して今井耕君及び自由党を代表して中村純一君はいずれも賛成の意見をのべられたのであります。
次いで日本社会党を代表して受田新吉君は、電波法案に対する修正案、同じく修正部分を除く原案並びに電波監理委員会設置法案に対し賛成の意見を、放送法案に対する修正案及び原案に対して反対の意見を述べられ、引き続き委員会は採決に入り、電波法案に対する修正案、同じく修正部分を除く原案、放送法案に対する修正案、同じく修正部分を除く原案、電波監理委員会設置法案の順序をもって賛否を諮りましたところ、いずれも大多数をもってこれを可決いたした次第であります。
これをもってご報告を終わります。(拍手) (第68回に続く)

NHKも放送法発足に備え準備を進めていた。右から池田、春日、溝上の名氏
阿川 秀雄

阿川 秀雄
1917年(大正6年)~2005年(平成17年)
昭和11年早稲田大学中退、同年3月、時事新報社入社、以後、中国新聞社、毎日新聞社等を経て通信文化新報編集局次長。昭和25年5月電波タイムス社創立。
本企画をご覧いただいた皆様からの
感想をお待ちしております!
下記メールアドレスまでお送りください。