放送100年特別企画「放送ルネサンス」第25回 中間総括

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2025年1月1日

 1925年(大正14年)3月22日、今のNHKの前身である社団法人東京放送局が、東京・芝浦の東京高等工芸学校内の仮設スタジオから日本初のラジオ放送を開始した。それから100年。今年、日本の放送は、満100歳の節目を迎える。
 この間、テレビ放送の開始、カラーテレビの登場、BS/CS放送の開始、地上放送のデジタル化、4K・8K放送の開始など、放送は様々な進化を遂げてきた。更に、ここにきてインターネット社会の進展を受け、放送は、かつてない変化を余儀なくされている。
 昨年5月には、放送法が改正され、インターネット業務が初めてNHKの本来業務の一部に位置付けられ、放送は、法制度的にもインターネット空間で一定の社会的役割を果たすことが期待される時代に入った。ラジオ放送から始まった放送は、その100年の歴史において最大の転換点を迎えているともいえる。
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 当紙、「電波タイムズ」は、この節目にあたり、昨年9月より、「放送100年特別企画」として、戦後の放送の歴史を辿る「実録・戦後放送史」の連載を開始。同時に、放送開始から100年を経た、今後の放送の行方や、その在り方を問うインタビューシリーズ「放送ルネサンス」もスタートした。
 このうち「放送ルネサンス」では、放送やメディア関係の幅広い分野の方々に、放送の「過去と現在」、そして「将来展望」「今後のあるべき姿」などについて、直接お話を伺ってきた。シリーズ開始以来、昨年末までに合計24人から提言や熱いメッセージをいただいた。連載は本年も続くが、昨年までの前半を振り返ってみる。
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 これまでのインタビューを通じ、ほぼ共通するのは、インターネット社会の進展によって、「放送は、もはやメディア社会の圧倒的存在ではなくなった」という、放送の置かれた状況認識だ。
 そのうえで、この先の在り方については、「不確かな情報も混在するインターネット社会だからこそ放送の価値は見直されるべき」といった意見や、「放送がもう一度、家族や人の絆をつなぐ役割を担って欲しい」「放送の仕組みはエコであり、環境問題の観点から残すべき」といった意見など、ネット社会において放送は再評価されるべきだとする意見が多数あった。
 一方で、「インターネット空間において放送はもっと自由に振る舞うべき」「対応が遅すぎる」「双方向のインターネットの特性を利用して、もっとパーソナルな存在に変わるべき」「放送波だけでなく、インターネットなど様々な伝送路(送る手段)を活用し広く届けていくべき」といったインターネットの活用に積極的に取組むことが必要だとする意見も多かった。インターネット社会における放送の在り方には、示唆に富む幅広い意見が寄せられた。
 また、放送の現状については、「放送本来の可能性の追求がおろそかになっていないか」、また放送のジャーナリズムにおける役割に着目し、「萎縮や忖度による過剰な自己規制により、放送の自主自律が危うくなっていないか」など、放送を届ける側の姿勢を厳しく問う声も多かった。
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 放送は、この先、インターネット業務を具体的にどう事業に位置づけ、放送の規律を確保し、情報社会の健全化に貢献して行こうとしているのか。戦時中の深い反省から制定された放送法の理念に基づき、本当にその使命を果たしてきたのか、また果たしているのか。この先「放送の信頼」をどう得ていくのか。放送開始100年を超え課題は山積している。放送が次の世紀に踏み出す今年2025年。放送の存在意義や、その将来像が改めて問われることになる。
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 電波タイムズでは、本年も引き続き、そうした放送の未来について、様々な角度から多くの方にご意見をいただき、紙面及び当社ホームページにおいて紹介していく。そして、これが放送の行方を社会全体で考えていくための一助となることを願っている。 

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。
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