動きのある空間情報の伝送・再現技術確立

 NTTは、動きのある空間情報を遠隔地にそのまま伝送・再現する技術を確立し、本技術による新たなエンターテイメント体験の創出に成功したと明らかにした。本成果を踏まえ、今後は本技術をコミュニケーション環境等に適用することで、リアルとバーチャルの垣根を超えたユーザ体験の活用・共有を可能にし、社会全体のWell―being(ウェルビーイング)実現に貢献していく。
 NTTグループでは、実世界データ(空間情報)のデジタル化について、街やモビリティの全体最適を可能にする4Dデジタル基盤や、地域が抱える課題解決に寄与するフォトリアルなメタバースに活用することをめざして、3D点群メディア処理技術の研究開発を推進してきた。しかしこれまでの技術では、元になる点群データの計測方法の特性上対象は静的な物体に限定され、動きのある空間情報をそのまま伝送・再現することは困難だったという。
 既存の技術では、現実世界の空間を丸ごとキャプチャーして3Dモデル化し、空間内の自由な位置や角度から映像生成を可能にするボリュメトリックビデオ技術が知られているが、その撮影には多数のカメラが配置されたグリーンバックの専用スタジオが必要であり、またその対象(被写体)は特定のオブジェクトに限定されている。
 一方で、今回確立した「動的3D空間伝送・再現技術」では、少数のLiDAR(Light Detection and Ranging、現実世界の空間を計測・把握するためのセンサー技術)およびカメラにより計測・撮影された膨大な3次元点群データと画像データを組み合わせることで、任意の場所・背景において、オブジェクトの動きを含む空間全体の情報を丸ごと伝送・再現することが可能という。
 将来的には、NTTグループが進めている、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な端末を含むネットワーク・情報処理基盤、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の低遅延・大容量ネットワーク(APN:All―Photonics Network)を活用することで、膨大な動きのある空間情報を瞬時に双方向で共有できるようになる。これにより、都市や作業現場のモニタリング、災害対策や都市計画のシミュレーションだけでなく、遠隔のチームとのコラボレーション、そしてリアルタイムでフィードバックを行えるメタバース環境を実現していく。
(全文は10月2日付紙面に掲載)

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。