南極氷床内の広域積粒径分布を解明
情報・システム研究機構国立極地研究所(極地研、東京都立川市)によると、国立大学法人総合研究大学院大学(総合研究大学院大学、神奈川県三浦郡葉山市)の井上崚氏(極域科学専攻)を筆頭著者とする研究グループは、今般、東南極氷床沿岸から約1000km内陸に進むルート上にて、氷床表面アルベドに重要な表面積雪粒子の比表面積(積雪粒径の指標)を約2150箇所の雪面で観測し、その広域分布を明らかにした。観測の結果、沿岸から15~500km(標高615~3000m)の範囲では比表面積は有意な増減の傾向を示さず、この範囲を超えると内陸に向かって増加(粒径は低下)することが判明した。また、この広域分布を決める要因として、温度依存性を持つ積雪の変態、降雪頻度、風による雪の堆積の抑制の組み合わせが重要であることが分かった。この成果は、衛星観測や気候モデルで推定される表面積雪粒子の比表面積の検証データとして活用される。さらに、今後数十年にわたり表面積雪粒子の比表面積の観測を継続することで、同観測結果は氷床内陸部の積雪に対する温暖化の影響評価の基準となり、内陸部における新しい温暖化監視要素と位置づけることができるとした。
気候システムにおける氷床の重要な役割の一つは強力な反射特性。雪に覆われた表面は、日射を効果的に反射し、周囲の大気の温度上昇を抑制するが、地球温暖化により気温が上昇すると、雪の変質が進み氷床表面の積雪粒径(雪粒の大きさ)の増加や表面融解が進むことで、積雪が吸収する日射量が増加し、結果、温暖化が増幅される。積雪域の表面アルベドは、主に積雪粒径と、煤(すす)などの光を吸収する不純物の温度に依存する。南極氷床の内陸部では不純物の濃度が極めて少ないため、雪粒子の粒径が表面アルベドを支配する要因となる。
(全文は10月11日付紙面に掲載)
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