放送通信電波利用技術の貢献に12人表彰
一般財団法人電波技術協会(久保田誠之理事長)は11月19日、KKRホテル東京(東京千代田区)で、第37回電波技術協会賞贈呈式を開いた。放送や通信、電波利用に関する技術の振興等に貢献した個人12人が表彰を受けた。
電波技術協会賞は、電波技術協会の部外で、放送及び通信並びに電波利用に関する技術の振興、その円滑な発展に特別の功労があり、その功績が顕著な者で、以前に関係団体から類似の表彰を受けたことがなく年齢が概ね60歳代である個人を対象に、その貢献や栄誉を称えることを目的に表彰している。
電波技術協会賞の贈呈は昭和62年から行なっており、今年で38回目。昨年(第37回+315電波技術協会賞贈呈式)までの受賞者は346名で、このほかに平成14年(第16回電波技術協会賞贈呈式)で、電波技術協会設立50周年を記念する「電波技術協会賞特別賞」の受賞者4名を合わせて、総計350名が受賞している。
贈呈式では冒頭、欠席した久保田理事長の代理として、主催者を代表して宮本正常務理事が次のようにあいさつ。
「新型コロナウイルスの感染拡大によりここ数年は規模を縮小して開催してきたが、今年は5年ぶりに従来規模で実施することにした。受賞者関係者や賛助会員など多数に出席いただき、感謝している。電波技術協会賞は本協会の設立趣旨に基づき、放送、通信そして電波技術の発展に特別ご功績が認められた方に対して昭和62年から毎年贈呈している。今年で38回目で、これまでに350人を表彰してきた。12人の受賞者は関係機関の推薦を受けて早稲田大学名誉教授の高畑文雄氏を委員長とする選考委員会で慎重な真偽を経て決定した。受賞者それぞれの専門分野でのご功労、ご功績にあらためて敬意を表するとともに受賞に対して心からお祝いを申し上げたい」と述べた。
続いて高畑委員長も、「本賞は、放送及び通信ならびに電波利用に関する技術の振興、その円滑な発達に特別の功労があり、その功績が顕著な方に贈呈されるもの。皆様は、それぞれご専門の分野で長年にわたって放送や通信事業の発展に寄与され、皆様方のご努力によって、今日の豊かで高度な情報通信社会が築き上げられ、その功績は誠に顕著。長年にわたる功績に敬意を表する」と述べた。
宮本常務理事から受賞者それぞれに表彰状が交付された後、来賓として、総務省情報通信局長の豊嶋基暢氏、NHK技術局長の伊藤寿浩氏、NTTドコモ副社長の佐藤隆明氏がそれぞれ祝辞を述べた。
受賞者を代表して元CBCテレビ取締役の近藤肇氏は、「1979年、昭和54年に中部日本放送に入社し、テレビラジオの送信、送出技術など放送技術全般の仕事に関わり、その後は技術全般を強化する立場にいた。テレビに関しては名古屋栄の送信所に勤務し、地デジだと2003年12月に名古屋地区はデジタル化に移行した。名古屋民放5社とNHKで6社7波の親局として共同で瀬戸市に瀬戸デジタルタワーを建設し、無事に電波を出すことができたが、むしろ肝心なのは視聴者の家庭のテレビをデジタル化することが課題だった。そのために各団体と協力してステッカーを配ったり、お年寄りに簡易リモコンを配布するなど残り世帯数を気にしながらサイマル放送を続けていた。2011年7月24日にアナログ放送を終了、25日午前零時に停波し、栄のテレビ塔で出力切り替え装置を取り外すのに立ち会った。お疲れ様でしたと気持ちを込めてサイマル放送を終えたのを覚えている。ラジオは外国波の混信に悩まされていたため、対策として愛知県の三国山にFM補完局を東海ラジオと建設してFM化を進めた。ラジオは災害時の情報を伝えるものであり、南海トラフをはじめ災害時の情報を伝える体制が強化できたと思う」と感謝を伝えた。
同じく受賞した元株式会社日立国際電気放送事業部放送設計部部長の宮下敦氏は取材に対し、「こういう形で最後のステージに上がれて感謝している。振り返るとアナログテレビはずいぶんな映像を見ていたと思うが、ハイビジョンに適した素材を送るFPUで貢献したことで世界を豊かにできたと思う」と述べた。
NECメディア統括部無線システムアーキテクトの酒井和彦氏は、「入社したころは真空管で放送していた時代。トランジスタ化からデジタル化、放送の方式が決まった後に電力消費の効率改善など時代が変わるときに技術者としていられていい時代だったと思う。それが認めてもらえたのはありがたい」と喜びを語った。
またソニー技術センターシステム技術第一部門シニアシステムリサーチャーの北村幸伸氏は、「画質向上を常に享受できる形で届けてきたのが貢献。配信ではなく受信側で技術革新を進めたことで賞をいただいたと思っている」と話していた。
(全文は11月27日付紙面に掲載)
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