IOWN×tsuzumiで院内DX促進
NTT東日本は、持続可能な医療提供体制の維持に向けた「医師の働き方改革」における課題の解決に向けて、同社が運営する企業立病院の関東病院で、IOWN×tsuzumiを活用した世界初の医療文書作成支援AIモデル活用による業務効率化を目的とした実証事業を開始したと発表した。
これまでの我が国の医療は医師の長時間労働により支えられており、今後、医療ニーズの変化や医療の高度化、少子化に伴う医療の担い手の減少が進む中で、医師個人に対する負担がさらに増加することが予想される。
こうした中、医師が健康に働き続けることのできる環境を整備することは、医師本人にとってはもとより、患者・国民に対して提供される医療の質・安全を確保すると同時に、持続可能な医療提供体制を維持していく上で重要となる。そのため、医療機関における医師の働き方改革が求められている。
厚生労働省の調査によると、所定外労働が発生する理由(医師調査)として、「診断書やカルテ等の書類作成のため」が最も多く、長時間労働が発生する理由として挙げられている。
医師の働き方改革の促進に向けて、医療文書作成を支援する生成AIの活用が期待されているが、厚生労働省や経済産業省・総務省にて医療機関等や医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者向けに医療情報システムの安全管理に関する3省2ガイドラインが策定されている。
その中では「扱う情報として、法令により作成や保存が定められている文書を含む場合には、医療情報システムおよび医療情報が国内法の執行が及ぶ範囲にあることを確実とすることが必要である」、「ASP・SaaSサービスの提供に用いるアプリケーション、プラットフォーム、サーバ・ストレージなどは国内法の適用が及ぶ場所に設置すること」とされており、医療機関として本ガイドラインに則る環境整備が求められているという。
こうした背景から、本実証では、NTTの研究所が保有する 40 年以上に及ぶ自然言語処理研究の蓄積、世界トップレベルのAI分野の研究力を活かし、軽量でありながら世界トップレベルの日本語処理性能を持つ大規模言語モデル「tsuzumi」を活用し、専門性の高い医療用語に対しても適切な文脈で出力する、医師の働き方改革に寄与する医療文書作成支援AIモデル構築を目指す。
また、膨大なエネルギー消費を伴うGPUサーバをローカル環境に構築する場合、電力確保等のインフラ増強が課題となることから、関東病院と遠隔にある閉域データセンタのGPUサーバをIOWN APNで接続させることで、機微な学習データを院内に置いたまま、ローカル環境と遜色ない安全かつ低遅延のLLM学習環境の実現を目指す。
これにより、海外の大規模言語モデル(LLM)を使用することなく、国内且つ院内GPUサーバを保持する必要なく、安全に生成AIを活用できるガイドラインに準拠した環境整備を図る。
(全文は12月20日付紙面に掲載)
この記事を書いた記者
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