5G実証試験で端末約2万台の同時接続を確認 NICT

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のワイヤレスネットワーク総合研究センターは、第5世代移動通信システム(5G)において現状の100倍以上の端末を接続要求されている「多数同時接続」性能に関する実証に成功ししたと発表した。5Gに向けて導入が検討されている『Grant Free方式』と呼ばれる無線アクセス方式により、基地局一台につき、約2万台の端末の同時接続が可能であることを確認した。この方式が実用化されれば、災害時等において通信の輻輳が発生するような状況であっても、限られた時間内に多数の端末から情報を発信することができる。この実証では、防災倉庫とスマートオフィスの2つの利用シナリオにおいて、この性能を有効に活用できることを示したもの。 この実証は、総務省からの「屋内において2万台程度の多数同時接続通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討の請負」の成果であり、イトーキ、エイビット、シャープ、ソフトバンクと共同研究契約を締結して実施したもの。 次世代の移動通信システムである5Gには、単に従来の通信システムの性能向上だけではなく、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」などの様々な特徴が期待されており、その性能の確認と具体的な利用シナリオに基づいた実証が求められている。NICTでは、5Gの多数同時接続に関する調査検討を総務省から請け負い、その性能を現在の移動通信システムである4Gと比較するとともに、災害時の防災倉庫や避難所及び将来のオフィス環境において有効に活用できることを示すための実証に取り組んできた。 この実証では、5Gの多数同時接続を実現する手段として、『Grant Free方式』を想定したプロトタイプ(基地局及び端末)を開発し、2万台が同時に無線通信を行おうとする状況(5G多数端末模擬装置により実現)において、一定の時間内に全ての模擬した端末から情報を受信できることを確認した。一方で、従来のLTE方式を用いた場合、100台程度の端末であっても一斉に接続を試みると接続できなくなる場合があることも確認した。 また、災害時を想定した防災倉庫や避難所において、5G網を通じてタグ付きの支援物資の位置や中身を把握し、ウェアラブル端末をケアが必要な避難者に着けて、遠隔地で健康状態を確認できることを実証した。さらに、オフィス環境において「超高速」「超低遅延」の性能と組み合わせることにより、自動的な議事録作成、出席者の着座姿勢の把握、遠隔地とのホワイトボードによる円滑な意思疎通などが可能な将来のオフィス環境を実証した。 多数同時接続を含め、5Gの様々な通信性能を柔軟に利用するためには、通信事業者間の協調制御や自営マイクロセルシステムの統合を容易にするための技術が欠かせない。NICTでは、5G時代に向けてこれらの研究開発を進め、移動通信システムの国際標準化団体である3GPPにおける方式提案を行っており、引き続きこれらの活動を推進していく。