YRP、新しいビジネスを創出する地域共創の場
株式会社横須賀リサーチパーク(YRP、神奈川県横須賀市光の丘3―4YRPセンター1番館、鈴木茂樹代表取締役社長)は、テナント事業や研修・セミナー事業、受託研究事業などを展開して新たな事業活動、ビジネス創出、人材育成などの支援を行っている。YRPは、横須賀市南部の小高い山に囲まれた位置に開設され、その電波実験に適した地形を生かして情報通信分野の研究開発拠点として発展してきた。近年は、多様な産業分野の事業所・研究所の進出がめざましく、異なる業種間の連携・協業が進むなど、「新たな価値を生み出す場」としての期待が高まっている。同社の鈴木茂樹代表取締役社長にYRPの強みや横須賀市の魅力など話を聞いた。
――株式会社横須賀リサーチパーク(YRP)の開設からの歩みと変遷をお話しください。
「横須賀市で研究開発を中心にした町おこしをする、移動通信分野で世界をリードしたい思いがあって、横須賀市や神奈川県、総務省、京浜急行電鉄などが推進機関となって、1987年に横須賀リサーチパーク構想推進連絡会(現一般社団法人YRP研究開発推進協会)が設立されました。93年には株式会社横須賀テレコムリサーチパークを設立。そしてここにいろいろな研究機関、通信事業者、情報通信の機器メーカーが集まって、97年に横須賀リサーチパークが開業しました。この頃は、日本の移動通信分野が全盛期で、日本独自の技術である『iモード』『着うた」『写メ』といった携帯電話サービスが誕生するなど世界中で日本の移動通信技術が注目されていた頃でした。米国やスウェーデン、フィンランドの大手通信機器メーカーの日本の開発拠点もYRPに進出しました。ところが携帯電話の第4世代の技術開発で日本企業は出遅れてしまいました。国内メーカーは携帯事業から撤退しました。世界マーケットを失って、YRPに開発拠点を構えていた国内外の研究所は徐々に撤退してしまいました。2010年代中頃にはそういう状況で建物の空きがたくさんできてしまいました。そこで企業の研究所誘致を行い再び活気を取り戻そうとテナント誘致でさまざまな活動を続けるなか、21年7月に社長に就任しました。23年9月には、情報通信に限らず幅広い活動がやりやすいよう社名の『横須賀テレコムリサーチパーク』から『テレコム』の文字をはずし『横須賀リサーチパーク』としました」。
――そしてYRPビジョン2025」を打ち出しました。
「本ビジョンは、YRPの25年度末時点でのあるべき姿を描くべく市や進出企業及び関係者が一体となって定めたものです。YRPがめざしているものはビジョンの骨子である『ビジョンが描くYRPの将来像 ~新しいビジネスを創出する地域共創の場~』です。ポイントは▽リアル/バーチャルに人が集うコミュニケーションハブの形成▽ICT技術等を活用したアプリケーションサービスの実現による社会課題の解決▽自治体、YRP進出企業、協会会員企業とのマッチングによる地域産業の育成―です。これまであまり地域と溶け込んでいなかったし、携帯電話などここで開発したものは大企業の成果にはなってはいますが、特に地元の課題を解決するためのものではありません。研究開発の成果は新たなビジネスを創出し、なおかつその地域に還元されるのがいいのではないかとリアルの研究施設とバーチャルに人が集うハブになりたい。そしてICT技術を活用してアプリケーションサービスを実現して社会貢献するという思いを込めました。さらに将来像の実現に向けた4つの方向性を打ち出しました。①〝先端ICT拠点〟としてのYRP②〝地域のICTコンサル〟としてのYRP③〝共創フィールド〟としてのYRP④〝国際連携の礎〟となるYRP―です。①はもともと情報通信の研究所なので先端のICT拠点でありたい。②は地域のコンサルとして周囲の方々にも開発成果を還元して社会課題を解決する。③は技術を使って何か新しいものを作るという意味で共創フィールドでありたいと」。
写真はYRP
全文は1月1日号に掲載
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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