HYSエンジニアリングサービス、マルチバンド最小クラスアンテナ

HYSエンジニアリングサービス(東京都小平市、飯田一郎代表取締役社長)は、『お客様の新たな価値を創出する「総合サービス会社」』として事業展開している。なかでも母体企業のひとつである八木アンテナを継承しているアンテナ事業では、創業者の八木秀次博士から受け継ぐ高い技術力で通信・業務用アンテナ・機器を開発製造している。このほど、同社は業界秀逸の小型化を実現しながら広帯域に対応する4G、5Gパネルアンテナ(マルチバンドタイプ、Middle―Highバンド高利得タイプ)を製品化した。特に都市部の不感地帯やトラヒック集中地域においての利用が期待される。広帯域特性により国内すべての通信事業者へ対応しており、インフラシェアリングなど多くの通信事業者を束ねて取り扱うシステムへ用いることで、通信事業者ごとに複数のアンテナを設置する必要がなくインフラコストの低減に大きく寄与する。開発の背景や特長などを山本健太郎電波機器部部長、田中健電波機器部設計グループ技師に話を聞いた。
――4G、5G対応小型パネルアンテナ開発の背景をお聞かせください。
 山本「この製品は、国内のマルチキャリアに対応しつつ700MHz帯からSub―6帯域をすべてカバーし、都市部における携帯基地局エリアの通信品質を向上させることを目指しています。特長は、一つ目は700MHzからSub―6帯域を網羅したマルチバンド対応で、さまざまな通信規格に対応しています。多様なニーズに応じた基地局用広帯域小型パネルアンテナとなっています。2つ目は横22㌢㍍、幅21㌢㍍、高さ8・5㌢㍍の国内最小クラスの設計を実現したコンパクトなデザインにより、狭いスペースでも容易に設置でき、都市部の不感地帯の解消に寄与します。アンテナ指向性を生かしてトラヒックが集中する繁華街や駅ホームなどへ設置しエリアを限定することで、通信品質を改善し携帯利用者のストレスを軽減します。3つ目は開発にあたっては、携帯キャリアからの意見を取り入れ、干渉対策に対応するなど実際のニーズに基づいて設計を行いました。4つ目は耐久性と環境適応性です。IPx5等級の防水性能を持ち、屋外設置を考慮した設計となっています」。
 ――マルチバンドタイプで小型化したねらいを詳しくお願いします
 山本「私どものお客様である携帯キャリアやシェアリング事業者が5Gの電波環境の整備で、大型の基地局設置が進んで今はほとんどのところで電波が届くようになっています。これからは狭くて電波が届かないところ、例えばビルの谷間などの不感地帯に小型の基地局を設置する整備に入っています。またトラヒックの多いところ、例えばマンモス駅の真ん前や、人がたくさん集まる場所にも多くの基地局を置かないとトラヒックがパンクしてしまいます。そういった場所では多くの周波数を使うので、お客様からは小型のアンテナでかつ広帯域なものが欲しいという要望がありました。そのような声にお応えしてこのアンテナを開発しました。携帯キャリア各社が使っている周波数は様々なバンドで免許を取得しており、それぞれの事業者は1個のバンドだけでは5Gのシステムは構築できず、いくつかのバンドを組み合わせて5Gシステムをつくっています。このアンテナは700MHz―2・1GHz帯、2・5GHz帯、3・4―4・9GHz帯をカバーしたマルチバンドタイプとなっています。このアンテナ1個で、日本の通信事業者の4G、5Gの周波数全てをカバーしています。周波数ごとにアンテナを設置していくと、街中アンテナだらけとなってしまいます。基地局を置く場所がないという話は聞いたことがあると思います。ビルの屋上も新しいアンテナを付けるスペースはもうほとんどない状況です。このアンテナは1個でたくさんの周波数を収容しています。シェアリング事業者はビルなどにある程度設備を作って携帯キャリアに繋いでもらい電波をカバーしていますが、そうなると、様々な携帯キャリアの周波数が入ってきますから、事業者ごとにアンテナを付けなければいけません。そのため、1個のアンテナで全ての携帯キャリアがカバーできるものが欲しいという要望がありました。さらに、このアンテナは指向性を持たせています。ですからどこをねらって電波を吹きたい、ここの角に吹きたいといった要望に応えられます」。写真は
右からHYSエンジニアリングサービス電波機器部部長 山本健太郎氏、電波機器部設計グループ技師 田中健氏

全文は1月1日付け掲載

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。