アトラクター、地デジ放送波を活用した防災行政無線

ブロックチェーン連携で公的認証も放送システム開発、WEBシステム開発を行うアトラクター(長野県軽井沢町、濱田淳代表取締役)は、テレビ電波で情報配信するIPDC/ナローキャスト放送を展開している。濱田代表取締役にナローキャスト放送の仕組みや防災行政無線としての実用化、防災ソリューションとしての活用、ブロックチェーンとの連携について聞いた。

 ――ナローキャスト放送とは何ですか。
 「ナローキャスト放送とはテレビサービスと同時にデータ配信を実現する、放送局による情報配信プラットフォームです。『地デジ(地上デジタル放送)の電波』でIPDCにより情報を伝達する新しいサービスです。テレビの電波そのものを使った情報配信なので、現在テレビが見られる所に情報を伝達することが出来ます。IPDC(インターネット・プロトコル・データキャスト)とはテレビ電波でデータを送る仕組みです。放送プロトコルでIP(インターネットプロトコル)パケットを配信できる技術です。つまり、テレビ電波で通信パケットを伝送します。これにより、テレビ電波で一斉に公共配信が可能です。更にはテレビ電波でIP機器や他ネットワークと連携ができます」。
 ――IPDC/ナローキャスト放送の受信側はテレビですか。
 「ナローキャスト放送は、テレビ以外のデバイスにも情報を配信します。テレビの電波をそのまま活用するので、既存のテレビサービスに影響を与えないように考慮されています。例えばセットトップボックス(STB)という専用デバイスで受信させることで付加サービスを行います。IPDCでは通信で使っている通信プロトコルをそのまま載せられる規格で、放送波で通信のプロトコルが流せます。IPデータキャストなので皆さんが日常使っているスマホのような通信機器とも連携しやすいのです」。
 ――研究開発を始めたのはいつですか。
 「2010年から、放送局様と研究開発を始めました。限られた環境下で、IPDC技術実験と検証を進めました。12年にはテレビ電波として初のオンエアに成功しました。当社とテレビ信州様との取り組みでした。実証実験免許により放送休止時間で試験送出をして既存のテレビに影響を与えないことを実証しました。13年にテレビ信州様がナローキャスト放送を含む特定地上基幹放送局免許を取得しました。14年から16年にかけてはARIB(一般社団法人電波産業会)の規格に準拠した送出を開始しました。これはARIB規格へのナローキャスト符号化方式の記載により、既存のテレビへ影響を与えないようにするしくみです。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)で従来のテレビに影響が無いことを実証するための受信機検証を実施しました。テストストリームにて各受信機メーカーで確認して頂き、実証できました。そしてARIB規格に準拠した業界初の送出システムを開発してマスターシステムに納入を実施しました。17年にはサイネージサービス向け受信機が完成し、「公共サイネージ」という新しいサービスが始まりました。自治体サービスとして、自治体から住民への公共的なサイネージサービスで、全国初の実用化です。具体的には、長野県飯綱町で採用されました。行政庁舎の待合室や文化会館、美術館、病院内のモニターなど町内各所に設置し、地域サービスの広報告知などに使われています。当時の新型コロナ感染情報や注意喚起にも活用されていました。21~22年には総務省消防庁による実証実験により実用性の検証が完了。21年度、東京都・兵庫県・長野県の7区市町で実施しました。そして総務省消防庁から『地上デジタル放送波を活用した災害情報手段のガイドライン策定等に係る検討報告書』が出されました。その後、災害情報伝達手段として読売テレビ様と兵庫加古川市様で全国で初めて実用化されました。その中で読売テレビ様に弊社のIPDC防災放送システムを納入し、現在も運用されています」。
写真はインタービー2023のアトラクターのブース写真
全文は1月1日付けに掲載

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。