千株式会社、無料の「はいチーズ!システム」導入で保育現場のDX推進

 写真と食の力で子どもの幸せを創ることを目指す総合保育テックサービス「はいチーズ!」を提供する千株式会社(東京都千代田区、千葉伸明代表取締役社長)が運営する保育業務ICTサービス「はいチーズ!システム」が、大阪府柏原市が運営する4施設に導入された。これにより登降園管理の効率化などに加え、ドキュメンテーション機能を通じた保護者との密な情報共有を実現できた。
 保育現場でのDX推進が期待される中、大阪府柏原市では保育業務の効率化のため「はいチーズ!システム」の導入を決定した。
 「はいチーズ!システム」とは、保育者の業務負荷の削減を実現し、保育者の働き方改革の推進を目的とし、30以上の機能を無償で提供する業界初の園業務支援システム。「手書き」による属人的な記録によるミスを防止し、保育業務の効率化、残業削減や保育士の離職防止に寄与する。
「自社の写真撮影サービスとの融合で無料サービスへ転化させて新たなビジネスモデルを構築し、導入障壁となる導入コスト面の課題を解決した」ことが評価され、グッドデザイン賞2022を受賞した。
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 大阪府柏原市こども施設課の石橋智成さんは導入の背景や効果、今後の展望について次のようにコメントした。
 ◇「はいチーズ!システム」導入の背景
 「柏原市では令和3年に就学前施設を11施設(幼稚園6園、保育所5園)から5施設(認定こども園4園、保育所1園)に集約する幼保再編事業が実施され、市内で初めての認定こども園が開設された。認定こども園では、同一クラスに登降園時間の異なる1号認定と2号認定の園児が混在することになるため、登降園時間の管理が煩雑化していた。また保護者には毎日登降園時間を書面に記入してもらっていたため、施設側と保護者側両方に負担が生じていた。また、保育要録はエクセルで作成しており、小学校へ提出作業に市職員の時間と労力を要していた。これらの課題を解決するため保育ICTシステムの導入を検討することにした」。
 ◇導入の決め手
 「柏原市が複数の保育ICTシステムを比較検討した結果、『はいチーズ!システム』導入の最大の決め手となったのは費用対効果の高さだった。特に認定こども園への集約時に先行導入していた『はいチーズ!フォト先生プラン』との併用によりICTシステムの費用が一切不要となる点は、財政面で大きなメリットになると考えた。自治体として、限りある予算の中で最大限の効果を出すことが求められる中、初期費用・月額費用ともに無料の『はいチーズ!システム』は理想的な選択肢となった。機能については、以前園長を務めていた市職員の意見を参考に現場の使いやすさを重視した。毎日利用するのは現場の職員なので、シンプルで使いやすいシステムを求めた。無料であることに対しては『無料だと機能が限られているのではないか』という懸念もあったが、確認した結果、登降園管理、連絡帳、要録作成、ドキュメンテーションなど必要な機能は十分に備わっており、他社システムと比較しても遜色ないことが分かった。この点も導入の後押しとなった」。
 ◇スムーズな導入に向けて工夫したこと
 「柏原市では、ICT導入を円滑に進めるために2つの工夫を行った。1つ目は、各園に若手保育士を中心とした『ICTリーダー』を配置したことだ。ICTリーダーが中心となり操作方法や活用方法を習得し各園での質問に対応していくことで、他の保育士の不安を軽減し、スムーズな導入に繋げることができた。2つ目は、使用できる機能を段階的に導入したことだ。はじめから全ての機能を活用するのではなく、最初は登
降園管理と連絡帳機能に絞って慣れてもらった。これにより現場の混乱を最小限に抑え、無理なくICTシステムを定着させることができた。
このような取り組みにより利用開始から1か月ほどで、現場からは『他の機能も使ってみたい』という積極的な声が上がるようになり、当初の予想を大きく上回るスピードでICTシステムが浸透した」。
 ◇保育士にも保護者にも好評な機能
 「登降園管理や連絡帳も活用しているが、特に好評なのがドキュメンテーション機能だ。以前は撮影した写真を印刷し手作業で紙に貼り付けてドキュメンテーションを作成していたが、作成に時間がかかっていた。『はいチーズ!システム』のドキュメンテーション機能を活用するようになってからは、『iPad』などで撮影した写真をシステムにアップロードするだけで自動的にレイアウトされたドキュメンテーションが完成するため作成時間が大幅に削減された。保護者からも『ドキュメンテーションが見やすくなった』と嬉しい声を頂いた。今後はドキュメンテーショ
ンを連絡帳に添付して配信することで、よりタイムリーに保護者と保育の様子を共有していく予定だ」。
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 導入後、保育士からは「電話連絡が減るのはありがたい」「ドキュメンテーションは作成が容易で保護者からの評判もよい」「アンケート機能を紙媒体から置き換えられるのは便利そう」「これまで紙媒体で管理していた出席簿等をデジタル化できるので管理がしやすい」との声があった。
 導入後、保護者からは「欠席連絡がアプリでできるので便利になった」「行事予定や案内をアプリで確認できるので紙の保管が不要になり楽になった」との声があった。
 石橋さんは「導入前は現場がシステムに慣れるまで1か月以上を想定していたものの実際には1か月弱でスムーズに移行が進んだ。これは各園に配置したICTリーダーの貢献が大きい」という。「自治体として最小限のコストで最大限の効果を出すことが重要であるため、導入費用と月額費用が無料の『はいチーズ!システム』は、限られた予算の中で最大限の効果を期待できるシステムだったと評価した。
 社会的背景には保育士不足と保育現場のDX推進があるとして、女性の就業率向上に伴い保育ニーズは高まっているが、保育業界では保育士不足が大きな課題となっている。保育士が働き続けられる職場づくりが求められており、業務負担をより軽減し保育業務に注力できる環境を構成する必要があるとしている。
1月10日付け4面に掲載
写真は 「はいチーズ!」システムを活用し、業務効率化に取り組む職員の様子

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。