田中電気、防災訓練VRを展開 どこでも簡単にリアルな防災体験

 田中電気(東京都千代田区、田中良一代表取締役社長)は、普段体験することが難しい災害現場をVRを用いて疑似体験できる『防災訓練VR』(開発元は理経)を展開している。『防災訓練VR』はVRゴーグルやスマートフォンのみで体験できるため、従来の防災訓練の課題である広いスペースの用意や天候等を気にすることなく、どこでも簡単にリアルな防災体験が可能だ。田中電気総合営業事業部の齊藤侑弥さんに製品特長や導入事例を聞いた。

 『防災訓練VR』の製品開発の背景について開発元は「2011年の東日本大震災以降で、日本全体として防災意識が高まる反面、実際の防災訓練や消防訓練の際は、やはり大規模な準備と人員の確保が必要になってしまい、簡単に実施できないことがありました。例えば、地震を模擬体験できる起震車を用いた訓練は効果的ですが、提供台数に限りがあるため、多くの訓練に活用できなかったり、野外の広いスペースを準備しなければならなかったりと様々な面で断念せざるを得ないことがありました。また、一般的な防災訓練は集団での訓練が前提であり、有事の際に大事になってくるのは個人の判断力(自助)を養うことが難しいのが現状としてありました。そこで、従来の防災訓練で浮き彫りになった課題の解決策として少人数でも実施が可能で、準備が簡単かつ個人の判断力を養うのに効果的な防災訓練を行うには、VRを活用することが最適と判断し、開発しました」としている。
 田中電気の齊藤さんは製品特長について「『防災訓練VR』は、普段体験することができない火災や地震などの災害現場を、VRを用いて360度で擬似体験することで、災害の恐ろしさを実感していただくことができます。また、大掛かりな準備は必要なく、長机一つほどの小さなスペースで使用することができます」と話した。
 防災訓練VRの機器は▽PC接続型VRゴーグル(必要な機材はPC・VRゴーグル・コントローラのみ)▽スタンドアロン型VRゴーグル(VRゴーグル以外の機材は一切不要で、立ち上げが容易)▽スマホ型VRゴーグル(VRゴーグルにスマホをセットするタイプで、単眼仕様)―など。
 コンテンツはオフィス火災、ホテル火災、工場火災、地震、土砂災害、自衛消防隊訓練ほか。
 「一般的な防災訓練で行う煙体験では、模擬的に白い煙を室内に立ち込めたりしますが、実際の火災では黒い煙でもっと視界が悪いです。そういった状況を『防災訓練VR』では黒い煙でリアルに体感できます。また、煙を吸わないように姿勢を低くしなければ真っ暗で視界が見えないことや、ハンカチを口元にあてる動作をする必要があることで、実際の避難姿勢を学習することができます。それぞれのコンテンツは災害の専門家の方に監修していただいているため、迫力のある映像で再現度が高く、消防の方からも高い評価をいただいています。」(同)。
 防災訓練を行う自治体にとって、若者が防災訓練に参加することが少ないという悩みがあるという。「最近は若年層をターゲットに若者が近寄りやすい『防災フェスタ』のような形式で行う自治体様が多くなっています。そのなかでも、体験型の企画は興味を持って参加してくれる人が多く、『防災訓練VR』はまさにフィットしており、若者にも受け入れやすいことから引き合いが増えています」と齊藤さん。

全文は1月1日付け16面に掲載

写真は 地震 コンテンツ画像

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。