企業向け新ブランド『EBISS』立ち上げ エルモ社

 テクノホライゾングループのエルモ社(名古屋市南区、浅野真司社長)は、企業向け新ブランドとして『EBISS』(エビス)を2020年11月から立ち上げた。『EBISS』は、新型コロナウイルス感染拡大により、社会情勢は大きく変化し、デジタル化の波に乗り遅れた社会システムの課題が顕在化した中、エルモ社が教育市場でのICT活用を現場に寄り添い促進させてきたノウハウを強みに、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進させていくための、成長体験型経営ソリューションを展開している。同社は今年創立100周年を迎えた。中核の教育市場向けに加えて、企業向け事業をさらに強化する同社の今年の抱負などを浅野真司社長に聞いた。 ――令和2年(2020年)を振り返っての感想をお聞かせください 「エルモ社の主力事業である教育市場でも、昨年3月頃から新型コロナウイルス感染症拡大の影響が出てきた。実はコロナ禍の前に教育業界では大きな動きがあった。19年12月、文部科学省はGIGAスクール構想を打ち出した。『1人1台端末の利活用』を目標に『学校ICT環境を一体的に整備することで、多様な子供たちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びの実現』を目指した。当社では、20年に入って、GIGAスクール構想に向けた事業活動を展開したがコロナが発生して自治体、学校が混乱した。感染率が高くなった時期には私どもも原則リモートワーク勤務とした。緊急事態宣言が4月7日に発令されてさらにリモートワークは続いた。教育業界では例年であれば春から自治体ごとの入札案件が出て、最も忙しい時期を迎え、夏には納品する。ただ、昨年は4月、5月にコロナ禍で活動が制約されたため国内の業績は大きな影響を受けた。自治体では案件自体を下期にシフトする動きがあった。12月に令和2年度第3次補正予算が公表された。地方への補助金が出ることで、ICT機器を整備する自治体も多いので、通常は夏には受注が一息つくのだが、昨年は年末になっても忙しい状況が続いた」 ――海外事業はどうでしたか 「私どもは、欧米に教育事業を行う子会社がある。昨年の上期前半をみると、欧米ともロックダウンの影響で、非常に厳しい状況だった。その後、学校がオンライン授業になって生徒らは自宅で学習するようになった。それに合わせて当社の書画カメラの需要が大きく膨れ上がってきた。特に米国では在庫が無くなるほどで昨年12月末時点でも数千台の注残を抱えている状況だ。米国は下期だけで1年分の計画をほぼ達成できそうな勢いだ。懸念材料は第3波。先が見通せないが、今年の3月頃までは相当手堅い業績とみている」 ――国内の法人向け市場はどうでしたか 「エルモ社は昨年11月、企業向け新ブランド『EBISS』(エビス)を立ち上げた。『第5回[関西]働き方改革EXPO』(インテックス大阪、昨年11月11日~13日、リード エグジビション ジャパン主催)に出展し、同ブランドをお披露目した。『EBISS』とは、ELMO Business ICT System  Solutionの略。昨年下期からBtoB向け事業を大きく立ち上げる計画があって実行した。エルモ社は今年創業100周年。これを契機に次の100年を見据えて企業向けを強化したいと考えている。大学の講義室や企業の会議室向けにAVコントロールシステム『CVAS』(シーバス)ブランドを展開しているが、最新モデルとなるCVAS PROGlessや、企業向け電子黒板Digital White Board等の商品ラインアップを拡充して今下期から立ち上げた」 ――『EBISS』ブランドの展開について教えてください 「親会社であるテクノホライゾンが今年4月に傘下のエルモ社を含む3つの事業会社を吸収合併する。それぞれ違う事業領域であるが、エルモ社は企業統合後は他部門の事業領域でもグループシナジーを出していく。そのひとつが『EBISS』。合併するそれぞれの会社がそれぞれのお客様を持っているので、そこに向けても『EBISS』ブランドの会議室ソリューション、経営者支援ソリューションを展開していく。もうひとつの取組みは、従来はエルモ社はオーディオビジュアル(AV)の専業メーカーだったが将来を見据えた場合、ハードウェア中心のオーディオビジュアル機器では大きな成長が見込めない。そこにITの要素を加えることでお客様のニーズに沿った経営者支援、会議室ソリューションが提供できると考えた。総合的なITシステムソリューションを供給できるビジネス、これを『EBISS』と位置付けている。昨年、IT系の企業である『アイ・ティ・エル』『ファインシステム』を傘下に加えたのでこのリソースも加えて『EBISS』ブランドを成功させたい。ただ、『EBISS』事業の細かい詰めの部分は現在も進行中。最終的には3社を加えたテクノホライゾングループのクラウドである『テクノクラウド』にテクノホライゾングループのあらゆる事業を繋げて事業を発展させていくのが将来像。まとめるとAVの書画カメラ、電子黒板だけを販売していても今の時代は限界がある。そこにITや通信の要素を取り入れてお客様支援ができる事業を展開する。それが『EBISS』ブランド。ITシステム系で新しいハードウェアも開発する。電子黒板や書画カメラをベースにした新製品の開発も進めている」 ――エルモ社が提供するDX(デジタルトランスフォーメーション)とは 「リモートワークが増えたことで、オンライン会議システムが一般的になってきたが、実際使ってみると、うまく繋がらなかったりすぐにオンライン会議に参加できなかったりストレスを感じた人が多かったと思う。そういった不便さを無くすためにすべてシームレスで行える機器を開発中だ。電子黒板、書画カメラの一部モデルの中に、簡単に使うことができるオンライン会議システム『EZT』が入る予定だ。それから遠隔で会議をする場合に会議室がひとつのスタジオであるという発想の新製品がでてくる。そこから情報をコンテンツ発信する、高額な設計費用をかけることなくエルモ社の商材でスタジオが組み立てられるイメージ。例えば書画カメラは会議室でも使える。学校の放送室や視聴覚教室は無くなりつつあるが、そういった機能を残しながらコンテンツ配信ができるスタジオを丸ごとエルモ社で作ってしまおうと。卒業式などの配信システム、ご家庭にもそのままクラウドを使って配信できる、そういったところも含めてそれが〝エルモ社流DX〟」 ――コストメリットがあって、誰でも使いやすいシステムですね 「私どもの書画カメラは世界中のたくさんの学校で使われており、毎日授業をしている。オンライン授業中も先生はこれまでと同じように書画カメラを使って、在宅の子どもたちに発信できた。そういう例がかなりあって、脚光を浴びた。使いやすくてつながりやすいことで、オンライン授業でエルモ社の商材が改めて再認識された」 ――GIGAスクール構想向け事業についてお聞かせください 「GIGAスクール構想の中心は学校内のネットワークと生徒1台端末で、そこは当社とは直接関係ないが、その2つを使うためには私どもの商材が必要になってくる。例えば生徒さんたちのタブレットを一斉に動かしたり、先生のPCを連携させたりするには支援ソフトウェアが必要で、そこが私どもの強みを持つ商材。電子黒板も含め、今後もこのシステムの拡販を重点的に行う」 ――今年は創業100周年を迎える 「100周年を迎えられることをうれしく思う。100年という歴史そのものが我々の財産。エルモ社という名前は学校の先生方、地方自治体の教育委員会の方々の中で非常に信頼性の高いブランドとして定評がある。これは、諸先輩方のご尽力により100年かかって築き上げてきたものと実感している。これからも教育の質の向上に向けてモノづくりにまい進したい。ところで、国連の定めた持続可能な社会の目標『SDGs』に向けて当社もこれからどうやって取り組んでいくのか形づくりを始めた。まさに100周年の今が良い機会と思い、注力していく」 ――今年の抱負をお聞かせください 「次の100年に向けて『EBISS』をきちんと立ち上げていく。足場作りを進める。これまでは〝教育のエルモ〟だったが、今後は教育とビジネス2本柱で、それぞれでエルモらしい商品を作って、エルモらしいサービスを提供していきたい。エルモらしさとは何か。教育では、お客様目線で100年培ってきた、積み上げてきたノウハウ、先生方とのネットワーク、そういったものをさらに業界に貢献していくことだ。〝恩返し〟できるような事業を継続できればと思う。一方で『EBISS』はこの分野は新しいチャレンジャー。競合他社がひしめく中で、エルモらしさを打ち出して、我々だったらこういうことができる点をアピールして、モノづくりを継続することが我々の使命と思っている」