JEITA会長に時田氏

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は6月2日にリアルとオンラインによるハイブリッド会見を行い、6月1日に開催した「第12回定時社員総会」をもって、綱川智氏(東芝取締役会議長)が任期満了で会長を退任し、新たに時田隆仁氏(富士通代表取締役社長)が会長に就任したと発表した。任期は1年。  時田新会長は冒頭で「新型コロナウイルスの登場によって、人々の暮らしや働き方など社会全体が大きな変革を迫られてから、はや2年の月日が経った。在宅勤務をはじめとするデジタルの活用はまさにニューノーマルとなり社会に定着した一方で、これまでにないほどに社会全体が思いきってデジタルを活用したからこそ、リモートでは代替できない対面の価値を再認識することもできた。時に著しく、時に穏やかに社会は日々変化をしていくわけであるが、社会で生きる組織はこうした変化に適応し、自らも変化させていくことが重要であるということは言うまでもない」と述べた。 続いて「JEITAは2016年より業種業界を越えて、社会課題に向き合う課題解決型の業界団体へと変革に取り組んできた。まずは会員制度改革では定款を変更して正会員の対象をITエレクトロニクス企業から全業種へと拡大し、セコム、JTBの両社に理事会社として参加いただき、スタートアップ企業にも入会いただけるようベンチャー会員特例制度を新設するなど業種を超えた企業が集う、新しい業界団体の形を作り上げた。そうした企業が集うことでこれまでにない新しいテーマを議論することが可能となった。次に共創について。スマートホームにおけるデータ連携や保安分野でのデジタル活用、産業社会での5G活用など業種を超えた共創の取組を推進してきた。JEITAは電子部品や電子デバイス、電子機器やITソリューションサービスといったデジタル社会を支える企業集団から、他の製造業やサービス産業などデジタルを活用する幅広い産業の企業も参加するデジタルを旗印とする多様な企業集団に変わった。広範な分野の企業が参加する特徴を生かし、多様なテーマのもとで異なる知見や技術を持った者同士が議論して連携する場を提供することで、業種業界を超えた課題解決や新たな価値を共に作り出す共創をより一層推進していく」とJEITAの動向を話した。 次に「新型コロナウイルス感染症により、社会全体のデジタル化は過去に例のない勢いで進展しつつある。この先のデジタル化の地殻変動となるものは何か。それはカーボンニュートラルである。CO2の削減は企業の事業環境を大きく変える要因でもある。従来のCO2削減といえば、各国政府が決めた排出削減目標や制度への対応が主だったが、今、世界中で打ち出されているカーボンニュートラルは本質的にはグローバル市場での選別や金融資本市場からの格付けを意味するものであり、これらに対応できなければ企業は事業継続ができなくなるといっても過言ではない。そのために必要なことはグリーンとデジタルを組み合わせること、グリーン×デジタル、言うなればグリーントランスフォーメーションである。JEITAが主導的役割を果たし、JEITA会員、非会員を問わずデジタル技術を提供する企業とデジタル技術を活用する企業の双方が集う『GreenxDigitalコンソーシアム』を昨年12月に立ち上げた。目的はカーボンニュートラルを軸とした世界的な潮流の中で、世界市場で闘う幅広い企業が集い、国際的なルール形成をリードしていくためだ。企業の行動変容、ひいては産業社会の変革につながる新たなデジタルソリューションの創出実装に向けた議論をするための場として現在ITエレクトロニクス企業のみならず、科学などの素材産業をはじめ物流、金融、サービスなどの多岐にわたる分野の計99の企業に参画をいただいている。目下、コンソーシアムで取り組んでいるのがサプライチェーン上のCO2の見える化である。業種業態の枠を超えた各分野の専門家が集い、検討を進めている。産業分野におけるカーボンニュートラルを進めるにあたり、これまでのような自社の事業活動に伴う排出量の削減だけではなく、サプライチェーン全体でCO2を削減することが求められる。それにはCO2削減量を網羅的かつ正確に把握することが欠かせない。現状では多くの企業が取引金額と産業連関表の係数などから排出量を算定している状況にあり、これではサプライヤーがいくらCO2を削減しても、当該の削減努力が反映されない。いかにしてサプライチェーン全体のCO2排出量の実績データを把握するか、その鍵になるのが言うまでもなくデジタル活用であり、CO2データの収集・分析・評価・活用とあらゆる過程でデジタルが必要不可欠である。欧米企業をはじめオペレーションデータの覇権争いが始まりつつあるこの分野だが私たちの考えはこうだ。データの提供側、利用側の双方で透明性が高く、フェアな算定・収集・共有の共通ルールが必要であるということ。しかもそれは一つの国や地域にとどまらないグローバルなルールであるべきだ。『GreenxDigitalコンソーシアム』では、デジタル技術を活用しサプライチェーン全体のCO2データを見える化するデータ共有基盤の実現を目指している。現在共通データフォーマットや開示範囲などのルール作成に向けた検討を進めており、本年度後半には実証実験も行う計画だ。理想の姿はデジタル技術を駆使してサプライチェーンの各プロセスでのエネルギー消費に伴うCO2排出量の実績データが自動的にデータ共有基盤へ蓄積され、グローバルに広がるサプライチェーンのCO2排出量を正確に把握できるようになるそのような状態だ。サプライチェーンのCO2を見える化する仕組みを構築し、適正に運用管理することで企業間の共用や消費者の行動変容を促し、社会全体の脱酸素化が進展する。そのような未来を目指す。JEITAは今後も『GreenxDigitalコンソーシアム』において、主導的な役割を果たし、このような理想の実現に近づけるよう世界各地の共通ルールの策定に向けた動きと調和をさせながら、地球環境に配慮した持続可能な社会を構築するために力を尽くす」とJEITAの活動におけるグリーントランスフォーメーションに関して話した。 続いて「カーボンニュートラルのみならず、あらゆる分野において、デジタル化が急速に進展する中、デジタルトランスフォーメーションを担う次世代のデジタル人材を育てていくことは年々重要性を増している。日本政府が推進する『デジタル田園都市構想』を実現するためには、デジタル技術を提供する企業のみならず、デジタル技術を活用する企業にもデジタルの教養や知見を持った人材が不可欠だ。これからふるさとのインフラを担う人々、教育を担う人々、医療や福祉を担う人々など様々なプロフェッショナル分野を担う方々がデジタルの素養や思考を持つことが大切であり、それによって社会のデジタル化はより進展していくと考えている。意欲ある人がデジタルの素養や知識を習得することができるよう、会員企業と協力して多様なコンテンツや機会を提供していく」とデジタル人材育成に触れた。 そして、共創によって未来を描くSociety5・0の総合展「CEATEC2022」(シーテック2022、10月18日~21日に幕張メッセで開催、オンライン展示も開催。JEITAほか主催)に関して述べて「最新トレンドに触れデジタルを学ぶ機会として、CEATECをビジネスパーソンだけではなく、学生にも学びの場として活用いただきたいと考えている。CEATECは2016年以降、家電見本市からテクノロジーの総合展へと大きくシフトしてきた。新たなデジタル技術を生み出す企業からデジタルを活用して新たなサービスを生み出す企業まで、幅広い企業が集う場がCEATECであり、また同時に未来に向けたビジョンやビジネスモデルが発信されることから、社会の変化や未来の姿を想像するヒントにあふれている。これまでも東京医科歯科大学の学生を授業の一環として会場で受け入れたり、学生向けのプログラムを用意したりしてきたが、デジタルの可能性や学びを深める場としてのCEATECの貢献の可能性はますます広がってきていると感じている。出展企業の最新のテクノロジーが集い、また新たなサービスやソリューションなどが披露される場というのは最高の教育の場でもある。CEATECを活用した具体的な施策は、現在検討を進めているところではあるが、〝CEATEC体験〟というJEITAで使っている造語の通り未来の社会を感じて考えて動き出すという一連の体験を、学生をはじめとする次世代を担う皆さまに提供することを目指す。3年ぶりに幕張メッセで開催するCEATECにどうぞ期待してほしい」と話した。