KDDI総合研究所 AIで精神状態の向上を目指す研究を開始

 KDDI、KDDI総合研究所は7月19日から、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、徳田英幸理事長)と、脳科学とICT技術を組み合わせたブレインテック(脳〈Brain〉とテクノロジー〈Technology〉を組み合わせた言葉で、脳科学を活用したテクノロジーやサービスのこと)を活用し、個人の特性や場面に応じた精神の状態の向上術を提案するAIの構築を目指す共同研究を開始したと発表した。研究にあたり、3者は共同研究契約を締結した。 トップアスリートは信頼関係を築いたプロのメンタルコーチの指導のもと、最適な精神の状態に導くトレーニングを実施し、試合で自身の能力を最大限に発揮している。しかし、一般の人が同様の環境を構築することは困難なため、試合、試験、プレゼンなどの大切な場面で能力を十分に発揮できないことがある。今回の研究では、動画視聴などの視聴覚刺激がどのように脳に影響するかを解明し、2026年頃には能力の最大化のために個人の特性や目的に応じた刺激を生成するAIの構築に向けて取り組む。 KDDIとKDDI総合研究所は、ビッグデータの分析の知見を生かし、近年注目が集まっている人間の脳と神経の関係性に着目した脳神経科学の活用に2019年から取り組んできた。KDDIが掲げる「KDDI VISION 2030」では、「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」ことを目指している。一人一人に最適化された思いの実現方法を提案するため、より多くの分野での脳神経科学の活用の検討に着手する。 これまでの研究から、動画視聴や音楽鑑賞といった視聴覚刺激によって引き起こされる感情など、精神の状態の変化を脳波から検出できる可能性があることを確認した。しかし、視聴覚刺激の内容と視聴覚刺激前後の精神の状態の関係性、性年代・趣味嗜好といった個人の特性や環境による精神の状態の違いは明らかになっていない。 2022年度は、脳波における視聴覚刺激と精神の状態や個人の特性との関係性解明を目的とした研究に取り組む。この結果を活用し、2026年頃に一人一人に最適な視聴覚刺激を提示するAIの構築を目指す。脳波を基にその人にあった視聴覚刺激をコントロールすることで、誰もが仕事、人間関係、運動、勉学などで受けるストレスの軽減を図り、達成感・自己肯定感を高めることで長期的な幸福度(Well―being)の向上ができる世界を目指す。