「天地人」が「地球を飛び出す新プロジェクト」会見

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)ベンチャーの「天地人」(東京都中央区、櫻庭康人代表取締役社長CEO)は1月27日に都内で「地球を飛び出す新プロジェクト」と題して会見し、自社衛星開発によって地表面温度観測を強化する「Thermo Earth of Loveプロジェクト」(地表面温度観測衛星計画)を発表した。
 同社はこれまで、衛星データを活用し、地球温暖化対策やインフラの老朽化、都市計画等の社会課題の解決に取り組んできた。数ある衛星データの中でも、同社が特に価値を感じているのが『地表面温度』。これは、創業当初から扱っていた衛星データのひとつで、農作物の生産者や自治体・水道事業者等の様々な課題解決に取り組む中で、その価値の高さに気づき年々重要度が増しているデータである。また、厳しい夏の暑さが続く昨今では気温だけでなく地面の熱さを知ること自体の価値も上がってきている。同社は、地表面温度が地球温暖化や気候変動の影響を捉え、災害リスクを評価する上で欠かせないデータだとしている。
 「Thermo Earth of Loveプロジェクト」という名称には、地表面温度が教えてくれる地球からの温もり(Thermo Earth)と、私たちの地球への想いや愛情(Love)を込めた。宇宙から地表面温度を観測・分析し続けることは、地球と人類の関係を足下から見つめ直すことだと捉えており。地表面温度という新しい情報を社会の当たり前にし、人々の暮らしをより豊かで安心なものにするソリューションへと昇華させることで、より良い未来を次世代につないでいくことを目指す。
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 会見では櫻庭社長CEOが事業内容の紹介と今後の展望を述べた。
 「天地人という社名の由来は、『天』からの情報(衛星データ)を『地』上の情報(環境データ)と組み合わせ『人』類の(活動データ)生活を豊かにする―ことだ。天地人の始まりは『S―Booster2018』(内閣府宇宙開発戦略推進事務局が主催する「宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト」)でトリプル受賞したこと。2022年にはJAXAから初めて出資を受けて産官学からの様々な支援もあって事業を展開してきた」と話した。
 具体的には、宇宙ビッグデータ米(宇宙から米作りに最適な土地を探し栽培した米)、風力発電適地分析ツール(データに基づく、エネルギーインフラの建設地探しや、設置プロセスの効率化などの意思決定を早める)、水田メタン排出方法論(宇宙ビッグデータにより、温室効果ガスの排出や貯蓄を算出することで、カーボンクレジットの取得や評価を支援)―などがある。
 会見ではまず、漏水リスク管理業務システム「天地人コンパス 宇宙水道局」を紹介した。これは、自治体・水道事業者向けの水道DXサービス。宇宙ビッグデータでリスクを予測、整備場所の絞り込みで人的リソースやコストの最適化を実現する。具体的には、衛星データやオープンデータ、水道管理情報や漏水履歴等の様々な情報をAI技術を駆使し、漏水リスクの診断と、点検や修理等の記録管理を支援するサービスのこと。自治体が管理するエリアを100㍍四方の小さな区画に分け、そのエリアで漏水が起こるリスクを、5段階評価で見える化。漏水する可能性が高いエリアを絞り込むことで、優先的に調査すべき場所を簡単に見つけることができる。これまで職員の勘や経験に依存していた漏水調査を、データに基づいて、より効果的に作業をできるようになった。
 
写真は 櫻庭康人代表取締役社長CEO㊧と百束泰俊取締役副社長CSTO

全文は2月3日(月)付け5面に掲載

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。