JEITA 時田会長記者会見 事業継続にはデジタル活用したGXが必要

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、12月15日に同協会大手町オフィス(東京)およびオンラインのハイブリッド開催で、時田隆仁会長(富士通社長)による記者会見を開催し、「電子情報産業の世界生産見通し」を発表するとともに、同協会の諸活動に関する説明を行った。 会見要旨は次の通り。  デジタル技術の積極的な活用が浸透し、リアルとリモートをバランスよく融合させた社会が定着してきた。JEITAはデジタル技術を提供する企業とデジタル技術を活用する企業の両方が名を連ねる、デジタル産業の業界団体として、会員企業とともに、新しい働き方、新しい暮らし、新しい社会の実現をデジタル技術でけん引している。 JEITAが主催する展示会「CEATEC(シーテック)」と「Inter BEE(インタービー)」は、本年、幕張メッセ会場とオンラインを組み合わせて開催した。特にCEATECは3年ぶりの対面開催となり、「デジタル田園都市」をテーマに多様な企業や団体の共創による企画「パートナーズパーク」を新設し、地域の未来像や今後の社会の暮らしを広く発信した。また、企業経営者や研究開発者、官公庁幹部はもとより、約6000人の学生も来場した。大学生や高校生、中学生など次世代を担う人たちが最先端のテクノロジーに触れ、デジタルに関する学びを深める教育の場を提供するという役割を果たすことができたのではないか、と手ごたえも感じている。デジタル人材はあらゆる産業全体に必要不可欠だ。そのため、デジタル技術はもちろん、デジタルを活用して社会課題を解決するという高い志を持つ企業の人材と学生たちが交流する機会を創出することはこれからの社会にとって極めて重要であり、これもJEITAが果たすべき役割の1つと考えている。経済成長と課題解決を両立する豊かな社会、Society5・0の実現に向けて、人材育成も含め、JEITAは、デジタル産業の業界団体として、引き続き、社会の一翼を担う責務を果たしていく。    ◇ 電子情報産業の世界生産見通しについて説明する。本調査は、世界の電子情報産業の生産規模をデータによって明らかにするとともに、世界における日系企業の位置づけを把握することを目的としている。会員各社を対象としたアンケート調査をベースに、国内外の関連企業・団体の協力を得て、毎年取りまとめている。2022年の電子情報産業の世界生産額は、巣ごもり需要の反動減により、テレビやスマートフォン、パソコンなどが前年比でマイナスとなり、さらに、新型コロナ対策としてのロックダウンに起因する品不足、また、個人消費の減速を背景に電子部品・デバイスも縮小する結果となったが、データ活用の高度化、自動化など、デジタル化の進展により、ソリューションサービスが増加したことから、世界生産額は3兆4368億ドルと、前年比プラス1%の微増の見込みとなった。 2023年は、ウクライナ情勢の長期化懸念など世界経済の不透明感は残るものの、各国での景気対策やデジタル変革に向けた投資拡大によるソリューションサービスのさらなる伸長への期待から、世界生産額は前年比3%増の3兆5266億ドルとなり、過去最高の世界生産額を更新する見通しだ。 2022年の海外生産分を含む日系企業の世界生産額は、前年比8%増の39兆4837億円を見込んでいる。海外での調達増を背景に、日系企業生産のうち、電子部品やデバイスなどがプラスで推移、さらに足元の円安を受けて海外での価格競争力が高まったデジタルカメラ、プリンタ、電気計測器などが伸びたことが要因だ。国内生産額は前年比2%増の11兆1243億円で、2年連続の前年比プラスとなる見込みだ。 2023年について。新たな価値を生み出し経済成長の源泉となるデジタル変革に向けたソリューションサービスでの需要拡大が見込まれ、2023年の日系企業の世界生産額は、前年比3%増の40兆7599億円と見通した。国内生産額は、前年比3%増の11兆4029億円と見通した。    ◇ JEITAの取り組みについて。今年6月の就任会見にて、この先のデジタル化の地殻変動を起こすのは「カーボンニュートラル」であり、企業の事業継続のためには、デジタルを活用した「グリーントランスフォーメーション」(GX)が必要となると申し上げた。その潮流はさらに加速している。昨年10月にJEITAが立ち上げた「Green×Digital(グリーンかけるデジタル)コンソーシアム」は多様な業種の企業に続々と新たに参画してもらい、発足時点の約50社が、現在は130社を超える会員数となった。目下、コンソーシアムで取り組んでいるのは、サプライチェーン上のCO2の見える化である。 先ほど世界のデジタルイノベーション市場、ならびに今後の社会実装が期待される先端テクノロジーの世界需要額の調査結果を紹介した。このような先端テクノロジーは業種・産業を限らず、社会のあらゆる分野での応用が期待されている。しかしその社会実装のためには、研究開発のみならず、社会における理解や受容性の向上、またユースケースの創出などが強く求められる。そこで重要な役割を果たすのが、JEITAが主催するCEATECである。 CEATECの原点は「テクノロジーで社会を豊かにすること」であり、先端テクノロジーが社会をどう変えていくかを披露・発信する場である。今後もCEATECを活用し、新しいテクノロジーの社会実装を強力に推進する。 2023年のCEATECは10月17日から20日までの4日間、幕張メッセにて開催予定である。これから本格的な社会実装が期待される「Web.3・0(ウェブスリー)/ブロックチェーン」「量子コンピューティング」「メタバース」などの技術やソリューションを提供する企業はもちろん、それらを活用し、サービスとして展開する幅広い企業にぜひ出展いただき、未来の社会を一緒に考え、社会実装を促進する機会にしたいと考えている。