
OKIエンジニアリングが高濃度オゾン試験サービス
OKIグループで信頼性評価と環境保全の技術サービスを展開するOKIエンジニアリング(OEG、東京都練馬区、中井敏久社長)は、ISO/IEC17025認定の第三者認定機関として初めて『成層圏稼働機器・部品・材料向け高濃度オゾン試験サービス』を2月27日から開始する。
同社の計測事業部がある群馬県伊勢崎市の拠点で行う。同社は、高濃度オゾン試験機を試験機メーカーと共同で開発し、2023年3月に導入している。約1年半の高濃度オゾン試験での比較検証(濃度、温度、湿度、時間、材料)において知見を蓄積してきたもので、今回、成層圏稼働機器・部品・材料向けに同試験機を使ってサービスを始める。高濃度のオゾン環境による加速劣化試験に対応できるのが大きな特長。材料に適した試験・評価方法の提案も行う。成層圏稼働機器・部品・材料の納期短縮に貢献する。投資金額は、設備投資と研究開発を合わせて約4000万円。価格は個別見積もり。売上高は、成層圏向け試験全体で2026年度で年間1億円を目指す。
成層圏は航空機が飛行する対流圏よりも高く、人工衛星が配置される宇宙空間よりも低い中間的な高さにある。技術の進歩とともに、成層圏を活用したビジネスが立ち上がり始めている。地表から宇宙まで、領域が変われば環境も変化するため、それぞれの領域で適切な試験条件を選定し、実施していくことが必要だ。ただ、これまで成層圏におけるオゾン試験規格は整備されていなかった。また、地表を評価する試験機は低濃度対応(~2・5ppm)のため、成層圏稼働機器の品質を確保することが困難だった。
オゾンは自然大気中に存在する無色の気体で、強力な酸化作用を有し、屋外で使用されるゴム、プラスチック、塗料、繊維などの亀裂やひび割れを発生 させる原因となっている。成層圏にはオゾン層があり、オゾン濃度は2~8ppmで地表よりも25~100倍の高濃度になる。成層圏で稼働する機器は地表よりも高濃度のオゾン環境にさらされるため、高濃度でのオゾン試験が必要だった。
成層圏領域産業は成層圏通信プラットフォーム(HAPS)やエネルギー開発、気象観測などでビジネス拡大の期待が大きいが、製品・材料のオゾンによる劣化がその妨げになっていた。各分野でオゾンの影響をみると、観光ビジネス、気象観測(成層圏気球)の分野では、オゾンによって気球に使用される保護膜やケーブル、シール材の劣化が考えられる。無人飛行船やドローンを利用した物流では、シール材やガスケットの劣化による機械的強度の低下が考えられる。成層圏での太陽光発電や風力発電では太陽光パネルの劣化による発電効率低下が、成層圏通信プラットフォームでは構造材で使用される合成樹脂やゴム部品の劣化が考えられるという。こういったニーズに応えるため、『成層圏稼働機器・部品・材料向け高濃度オゾン試験サービス』を始めるもの。
試験メニューは▽オゾンによる材料劣化▽オゾン濃度2~8ppmの環境下での動作確認(通電試験)▽一定オゾン濃度(0・2~200ppm)環境下での放置試験▽高濃度オゾン(2・5~200ppm)による加速劣化試験▽大型サイズ製品(幅1000㍉㍍、高さ1000㍉㍍、奥行き1000㍉㍍)のオゾン耐性試験―となっている。
具体的には、成層圏オゾン濃度より25~100倍の高濃度オゾン環境で加速劣化試験を行うことで、通常の25~100倍に試験期間を短縮できる。大型製品にも対応可能。製品から切り出しせずに、製品状態で試験が行える。
同社ではワンストップで、成層圏向け試験サービスが可能とし、今回のオゾン試験のほかにも振動試験、減圧試験、熱サイクル試験、耐候性試験、遠心定加速度試験といった様々な成層圏向け稼働機器の試験に対応できる。一括で依頼することでさらなる短納期化につながるとしている。
「OKIエンジニアリングは、過去50年の技術の蓄積を新しい領域の試験に生かして、成層圏稼働機器・部品・材料向けの試験サービスを開始する。航空宇宙向け機器の開発製造はコストが高いイメージがあるが、当社の今回のサービスは、従来持っていた車載向けオゾン試験機の仕様を変更してサービスを提供するので価格も高くない。そういった面からも新しく成層圏向けビジネスを行う方をサポートできる。お客様が新たな市場へ向けた製品開発時に、ISO/IEC17025独立試験所として信頼性の高い試験サービスを提供する」(OKIエンジニアリング)。
※ISO/IEC17025:「試験所や校正機関の正確さを認定するためのマネジメントシステム」のこと。ISO/IEC17025では要求事項に適合し、試験所及び校正機関の能力を備え持つことが求められる。
※HAPS:『High Altitude Platform Station』の略。成層圏に位置する通信プラットフォームのこと。
写真は タイヤでのオゾン試験の様子
2月26日付け5面に掲載
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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