
mmガードなど、東京消防庁公募テーマ2に「Super TaiRa」提案
インフラ点検向けAI〝違いがわかるAI〟「Drone View」の開発と販売及びIoT・LoRa関連のソフトウエア開発を手がけるmmガード(東京都中央区、鈴木和清代表取締役)は、台湾企業K-Best Technology I n cの日本法人K―Best Technology(埼玉県さいたま市、慶野文敏代表取締役)と共同で、「東京消防庁 INNOVATION PROJECT Research for 2025」における公募テーマ2「火災現場の建物の中で消火活動をする消防隊員の位置を把握するための技術に関する情報」に無線通信システムとして、K-Best Technologyの無線通信技術「Super TaiRa」(スーパータイラ)の活用を提案している。
同プロジェクトは、東京消防庁におけるDXの組織的な推進の強化を目的として、民間企業が保有するデジタル先端技術等に関する情報と活用アイデアを募集しているもの。なお、今年度の応募はすでに締め切っている。
公募テーマ2における現状・背景は『東京消防庁では、隊長と隊員間のコミュニケーション(呼称、報告、目視での確認、無線通信)により災害現場での各隊員の位置を互いに把握している。現場全体の複数の消防隊の活動状況を可視化するためには現場指揮本部(複数の消防部隊の指揮を執るために現場に設営され、現場責任者が常駐する)で紙に消防隊の位置を書き込んで、現場全体で情報を共有している。しかし、現在、煙が充満する建物内において、消防隊員の位置、建物内部の構造や障害物などを現場指揮本部が即座に把握できる手段はない』としている。
公募テーマ2における実現したい将来像は『消防隊員が建物内のどこで活動しているかや、建物内部の構造・障害物等を短時間で把握・可視化し、その情報に基づき現場責任者の判断や指揮が行われることで、より「安全」で「確実」かつ「迅速」な消防活動ができるようにしたい』となっている。この課題解決に向けてmmガードは、「Super TaiRa」で課題を解決するとしている。
mmガードは、JR北海道が2022年11月に開催したアクセラレータープログラムで「ドローン x Super TaiRa」を活用した。同社は『JR北海道 廃線跡地活用 オープンイノベーションプログラム』の採択企業。このプログラムは、道内廃線跡地を活用することで、新たな北海道の魅力創出を目指すもの。同社はここで「Super TaiRa」を使用した物流用ドローンの自動運行システムを開発中である。
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「Super TaiRa」は、K-Best Technology I n cが開発し『超高感度』『干渉防止能力強化』『超微弱電波で高速通信』といった特長を持った無線通信技術の名称。「Super TaiRa」は、他のLoRaと異なり、ビルやトンネルを電波が突き抜ける特徴を持っているため、災害対策の他、通信用としても優れたテクノロジーとなっている。
「Super TaiRa」の特長は次の通り。
①超高感度(微弱電波で通信可能)②安全性も極めて強固(ミリタリーレベルを採用)▽AES256暗号化(標準的な暗号方式である「AES」の256bitの暗号鍵を用いる方式)を採用▽相手機器の認証にSha3(暗号学的ハッシュ関数の一種)認証を採用▽プロプライエタリ(独自の)キー管理システムを提供▽キャリアなしの伝送信号(パイロットトーン〈FMステレオ放送の方式のひとつ〉不要)▽データ処理に独自の高レベルFEC(データ送信の際、誤送信を見越しあらかじめ一定のルールに従って符号を追加したデータを送付する方式)を使用③アンチハッキング防御能力は4G/5G、NB―IoTの1000倍、Wi―Fiの10万倍。
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K-Best Technology機器による台湾消防局での事例をみると、消防士の位置捕捉機器等では通信のハブとなる「Super TaiRa」&BLE(Bluetooth Low Energy、省エネルギー型の無線通信規格)をはじめ現場映像送信端末、生体情報計測機、9軸ジャイロセンサ(消防士の位置追跡、消防士30秒静止状態警報、消防士SOS発信ボタン)、空気ボンベ(残圧監視)が実際に装備されている。
台湾の事例での「Super TaiRa」無線通信例をみると、移動式無線基地局及び消防司令官の情報ダッシュボード画面と、現場の消防士とのやりとりで、GPS、4G/5G、リピーターを使わない位置追跡でかつ地上40階から地下4階まで範囲内として200メートル以上でもカバーしている。「Super TaiRa」は煙、霧、滝、鉄筋ビルといった劣悪な環境における透過能力を備えている。方向、距離、建物の階層情報の通信ができて生体情報計測機機能、SOS発信機能、空気ボンベ残圧監視機能や現場映像と写真の送信まで行える。
「Super TaiRa」無線通信システムの台湾での結果は『建物の中で消火活動をする消防隊員の位置を把握することができた』とし▽現場指揮消防士位置、画像、ヘルプ通知、生体情報(体温、心拍数)ほかのリアルタイム把握が可能だった▽200メートル離れた消防士(現場指揮者)と地下4階から地上40階に展開する消防士との通信が確認できた▽双方向通信(消防士から管理者へ、管理者から消防士への通知)が確認できた▽30人の消防士情報を一括管理できた―という。
mmガードは「このほか『Super TaiRa』を使って、携帯電話の電波の届かない場所でも、通信範囲内ならテキストメッセージを送れます。山岳救助隊員の位置情報を取得する製品や、基地局をドローンに搭載して山岳での捜索時に一時的に通信を可能にする製品も開発予定です」と話している。
写真は Super TaiRa内蔵シャイロセンサー
2月28日付け5面に掲載
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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