低遅延・帯域確保に向けたINC実証

 NTT(本社:東京都千代田区、島田明代表取締役社長)とNTTドコモ(本社:東京都千代田区、前田義晃代表取締役社長)は、2023年10月に発表した6G/IOWN時代のコアネットワークとして提案する「インクルーシブコア」構想をもとに、モバイルネットワークとAI等のサービスに用いるコンピューティングサービスのコントロールを連携させ、低遅延・帯域確保などエンドツーエンドの品質をコントロール可能とするIn―Network Computing(INC)アーキテクチャの実証実験を行い有効性と実現性を実証したことを明らかにした。
 実験では、6G時代の実用化を見据え、GSMA(Global System for Mobile Communications Association)のOpen Gateway/CAMARA APIを用いて、モバイルネットワークの状況に合わせて経路制御を行う技術のほか、INCとしてユーザ通信装置の近くに設置するサーバ(コンピューティング)と接続、および連携制御を行う技術を新たに開発し実装した。
 これにより、ユーザ要望に基づき、ネットワークとコンピューティング双方の区間にまたがる品質要件を、APIだけで短時間に実現できることを確認した。またINCアーキテクチャで、実際にリアルタイムに映像データを転送しAI解析を行うケースに適用し、AIモデルの性能限界90%を達成可能であることを確認した。
 現在、6Gの国際標準化に向けた議論が各国各団体にて行われており、世界の主要な通信事業者、通信ベンダー、研究機関などが参加する標準化プロジェクト 3GPPにおいて2025年以降にアーキテクチャやプロトコルなど技術仕様の策定が予定されている。
 6Gのユースケースとして、新たに没入型XRやAI(Artificial Intelligence)/ML(Machine Learning)、センシングなどのサービスが提案されている。これらのユースケースに対してユーザが臨場感を損なわず、高品質なサービスを得られるために、6G時代のネットワークは通信の処理だけでなくサービスのデータ処理までを含めてコントロールし品質を担保することが期待される。
 これを受け、NTTとドコモは、6G時代のサービスを支えるネットワークの要素技術としてIn―Network Computingを検討。国際標準化の議論においても多くの企業から同様の提案があり、INCは6G時代のサービスを実現する主要要素になるとしている。INCでは、ネットワークでサービスの計算処理を支援することで、機能が簡素化された端末においても、6G時代のサービスを快適に利用できるようになることが期待できる。
 NTTとドコモは、こうした背景からINCの基盤としてISAPの研究開発に取り組んでいる。ISAPは、モバイルネットワークと連携しコンピューティングサービスを提供する基盤であり、次の技術的特徴を備えている。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。