イートラスト、クラウド型防災監視システム 〝河川を見守る、暮らしを守る。〟

イートラスト(東京都台東区、酒井龍市社長)は、クラウド型防災監視システム「STAND GUARD(スタンドガード)」を展開している。完全ワイヤレスで、撮影画像を取得し、クラウドサーバーへ自動送信するスタンドガード防災クラウドカメラシステム「eT001s」、測定データを格納し、専用の管理画面やウェブサイトにリアルタイムで表示するスタンドガード防災クラウドシステム「eT―Cloud」をパッケージ化した。 「STAND GUARD」のコンセプトは『〝河川を見守る、暮らしを守る。〟システム』。川の様子をリアルタイムで監視。すべての人が安心して過ごせるように、IoTの力で、いつもの暮らしを守る―との思いがある。「STAND GUARD」は、国土交通省が定めた要求仕様に適合しており、これまでに多くの自治体などに導入されている。 「eT001s」はソーラーパネル、カメラ本体、電源ボックスで構成。日本全国ですでに1500台以上が稼働している。2019年のモデルチェンジでカメラの小型軽量化を実現。従来モデルに比べて大きさは約3分の1、重量は約2分の1の約1・5㌔㌘となった。 河川の状況が確認できる画像を一定間隔で自動撮影する。リアルタイムに河川の状況を画像として確認することで、適切な避難指示を促す。さらに、夜間でも確認できる高性能カメラが大きな特長。関係省庁・自治体では最大2分間隔で河川の状況を正確に把握できるため、的確なタイミングで状況の把握、避難指示が出せる。 ソーラーパネルで発電し、LTE通信で伝送するため通信線や商用電源が不要。1週間以上、給電せずに稼動。最大8日間無日照でも監視することが可能だ。街路灯や電柱、橋桁などへも設置でき、短工期で低コストな導入を実現する。 「eT―Cloud」は、防災クラウドカメラで撮影された画像を閲覧・確認するためのWebアプリケーション。複数のカメラから収集された画像を一括で確認することで、適格な状況判断をサポートする。カメラが撮影した写真データはLTE通信でインターネットに接続しサーバーに伝送される。サーバーに保存されたデータは専用の管理画面からリアルタイムで確認できる。 主な機能は▽スケジュール機能=撮影間隔を指定してスケジュール撮影が可能▽センサー入力撮影とメール通知=センサー入力時に登録したメールアドレスへの通知が可能▽ユーザーごとの監視局参照範囲選択=ユーザー側で参照可能範囲を選択可能▽平常時画像の登録=監視局ごとに平常時の標準画像を登録でき、比較検討に使える▽メール通知=観測データの閾値超過時に登録ユーザーにメール通知▽マルチデバイス対応=閲覧機能はPCやスマホなど表示デバイスに応じ、自動で見やすいレイアウトに。 管理用のクラウドと一般公開向けのクラウドをパターン化した。関係省庁・自治体には管理画面を提供。Webブラウザからアクセスできる。住民には公開Webサイトから閲覧でき、確実で便利な情報提供が可能だ。 酒井社長は「防災クラウドシステムを市町村単位で市が導入するケースが増えてきた。東京都三鷹市では、河川の監視体制や情報提供を強化し地域住民の早期避難につなげることを目的として、市で水位計と河川監視カメラを設置し、クラウドシステムの試行運用を開始した。三鷹市のホームページの『河川カメラ映像・水位情報』で誰でも見ることができる。マップ上で設置カメラの位置が確認でき、画像で現在の状況がわかる。水位計のデータも分かりやすく表示されている。導入した自治体からは『カメラの映像がきれい』『夜間もよく見える』『ほかのシステムとの連携も容易で、コストパフォーマンスに優れている』と評価を受けている」と述べた。 さらに現在、防災クラウドシステムのアプリケーションの改善と、クラウドサーバーの増強を図っている。 「収容数がすごく増えてきたのが理由。例えば、熊本県では80ヵ所以上に設置して運用しているが、非常に局数が多いので、当初、表示に多少時間がかかっていたが、クラウドサーバーの増強などで現在は非常にスピーディーに多くの画像が表示できるようになっている。5分ごとの画像取得も非常にスムーズに行える」(酒井社長)。 なお、河川監視以外にも様々な活用シーンへの導入が検討されているという。海岸や港に設置して津波に備えたり、冬季の交通路確保のために積雪状況を確認。さらには不法投棄や工場現場のリアルタイムチェック、鳥獣害被害対策などにも販路を広げたい考えだ。 「『国土強靱化年次計画2020』にも『民間のカメラ等を最大限活用した火山監視・観測体制の強化』が挙げられている。火山監視では実証実験を行っているプロジェクトに関わっている。イートラストの創業の地は新潟県長岡市。積雪監視では、地元の積雪センサーの会社と組んで、使い勝手が良くコストメリットのあるツールを開発中で革新的なものができると期待している。また、カメラクラウドシステムを観光向けに使えないか検討している。実際、今はコロナ禍でなかなか動くことができないが、今後、文化的な用途に提案したいと考えている」と話した。 製品開発では、画像認識関係でAIの導入を考えている。 「AIに関してはまだ構想の段階だが、次世代カメラへのバージョンアップを検討している。AIを河川水位の検出や、鳥獣害の検出などに使えないか取り組んでいる。私どもの製品開発の強みとして、長岡技術科学大学と長岡工業高等専門学校との連携が挙げられる。創業の地である長岡の地元との産学連携でものづくりに取り組んでいる」(同)。 長岡技術科学大学は、2019年に文部科学省人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)に採択され、連携機関である長岡工業高等専門学校とイートラストが連携して、女性研究者支援制度等の整備や意識改革を図りながら、多様な人々が学んだり、研究したり、働いたりできるダイバーシティ環境を整えている。イートラストの防災システム作りで、これまで長岡技術科学大学の女性研究者との共同研究も行ってきたという。 「当社では、事業活動を通じてSDGsの達成に向けて積極的に取り組んでいる。例えば、河川監視カメラの設置、太陽光発電システムの施工・保守メンテナンス、太陽光発電事業の展開、照明器具LED化工事、ゼロエネルギービルを目指した新社屋の建設は、17の目標のうち、『7、エネルギーをみんなに そしてクリーンに』『12、つくる責任 つかう責任』『13、気候変動に具体的な対策を』―への取り組みである。他社のSDGsでは、消費するから代わりに木を植える、あるいはCO2を削減するといった話をよく聞くが、私どものSDGsへの取り組みは、防災・減災ソリューションによる安心安全な暮らしを提供するもので、私どもの仕事そのものが社会貢献につながるものだと改めて実感している。今後も、より明確に安心安全な生活環境の実現に役立てるような提案をどんどん続けていきたいと思っている」(同)。