NICT  AIを活用した訓練ガイドライン、災害時のSNS情報分析で

 慶應義塾大学環境情報学部山口真吾研究室、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)及び国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)は、防災・減災分野への人工知能(AI)の導入・普及をめざして、「人工知能(AI)を活用した災害時のSNS情報分析のための訓練ガイドライン(暫定版)」を共同で策定し公表した。防災訓練に対してAI(自然言語処理)を導入するためのガイドラインの策定及び公表は、世界で初めての取り組み。今後の防災・減災分野におけるイノベーション創出と先端技術の社会実装に向けて貢献するものとしている。 慶應義塾大学環境情報学部山口真吾研究室、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)及び国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)は2017年6月、防災・減災分野への先端的な人工知能技術の導入・普及をめざして共同研究会議「防災AI共同研究会議」を設立した。 防災AI共同研究会議は、地方公共団体などがAIを活用して行う災害時の情報分析について、平時の防災訓練を効果的に実施できるようにするためのガイドラインの策定・公表をめざして活動を行ってきた。 近年、被災者がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用して、災害に関する様々な情報を発信し始めている。災害応急対策を行う機関は、こうしたSNS情報を活用することにより、災害時の状況判断や活動の優先度判定などをより迅速かつ効率的に行うことができるようになる。 しかし、東日本大震災当日(2011年3月11日)の「ツイッター」投稿は約3300万件にのぼるとされており、限られた人数の職員が膨大な投稿の中から重要な情報を選び出すことは非常に困難だ。この問題を解決するため、人間が使う「ことば」をコンピュータに処理させる自然言語処理技術(AIの一種)を活用した「SNS情報分析システム」が既に実用化されており、これからの普及が期待されている。 とはいえ、災害時にSNS情報を確実に活用できるようにするためには、防災訓練にSNS情報分析システムを取り入れ、災害時の切迫した状況でもシステムを間違いなく使用できるように備えておくことが大切だ。そこで今回、SNS情報分析システムに関する訓練ガイドラインを策定し、公表したもの。 訓練ガイドラインの構成は、SNS情報分析システムの概要及び対応型図上訓練の実施方法をそれぞれ解説している。SNS情報分析システムで分析できる災害情報の例としては▽被害状況に関する通報(ライフラインのトラブル、目撃した道路冠水)▽避難所・緊急避難場所の状況に関する通報(開設状況、人数、不足物資)▽被災者の避難状況に関する通報(帰宅困難、孤立、困った状況)―などを挙げている。 SNS情報分析システムの導入効果の例では▽被災者それぞれの視点から見た、臨場感ある災害情報を収集することができる▽災害情報の整理・分析の作業を自動化・省力化することができる▽人間の能力を超えたビッグデータを短時間で処理できる。電話・ファクスの能力を超えて、数十万件から数百万件のSNS投稿をデジタル処理できる―などを挙げている。 今回はガイドラインを暫定版として公表するもので、今後の技術革新の動向やSNS情報分析システムの社会実装の状況等を踏まえて、内容を見直していく予定。 今後も、NICTは、ICT分野を専門とするわが国唯一の公的研究機関として、社会に存在する膨大な情報や知識のビッグデータ(社会知)を情報源として新たな価値を創出する社会知解析技術の研究開発を推進していく。