ATRなど、人が触れながら説明した物をより「かわいい」と感じる

国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、同志社大学、国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST)の3者は、説明者が物に触れながら、その物についての説明をすることで、「かわいい」と感じていることが他者に伝わること、さらにはその他者もその物をより「かわいい」と感じることを明らかにしたと発表した。マスクが人の笑顔を隠してしまう場合でも、触れることで物に対して「かわいい」と感じている気持ちを他者に強く伝えられることがわかった。 人は「かわいい」と感じたとき、笑顔になる。その笑顔が周囲の人に伝わり、「かわいい」という気持ちをもたらすことで、人と人との交流を促す。しかし、コロナ禍ではマスク着用が感染予防に欠かせないため、笑顔を通じて「かわいい」と感じる気持ちを他者に伝えることが難しくなっている。 3者は、説明者が物に触れながら、その物についての説明をすることで、「かわいい」と感じていることが他者に伝わること、その物をより「かわいい」と感じることを明らかにした。 これは、物に触れる存在がロボットであっても、同じ現象が起きることも確認した。これは、ロボットという人工物であっても、物に対して「かわいい」と感じる気持ちを人に生じさせられることを示している。コロナ禍でロボットも店員として活躍する中で、商品に触れながら説明することで顧客が「かわいい」と感じる気持ちを強くし、より興味を持ってもらえる可能性も期待できる。 この成果は、マスクによって笑顔が伝わりにくいコロナ禍においても、物に触れることで「かわいい」と感じる気持ちが他者に伝わり、交流を促すきっかけを生み出せることを示唆している。また、人が物に触れることで「かわいい」と感じる気持ちに変化をもたらしたことは、見た目以外にも「かわいい」と感じる要素が存在することを示唆している。 コロナ禍の影響を受け、感染症対策の観点から様々なロボットの利活用が進んでいる。例えばコロナ疲れを癒す存在として、愛くるしい見た目を備えたペット型ロボットの普及が進みつつある。ショッピングモールやレストランでは、親しみやすい見た目の接客ロボットが普及しつつある。ロボットの利活用においては、社会に受け入れられるために見た目のかわいらしさが重要視されつつあるが、研究グループはむしろ見た目の影響を受けない、個人が抱く主観的な「かわいい」という気持ちを表現し伝える方法の重要性に着目した。 実験では、ロボットが説明者となって対象物(ぬいぐるみ)に触れながら説明することで、実験参加者がその対象物により強く「かわいい」と感じるかを検証した。実験では、ロボットがぬいぐるみに触れながらそのかわいらしさを説明する場合と、ぬいぐるみに触れずに説明する場合を、対面で観察してもらった。 実験の結果から、ロボットがぬいぐるみを触れながら説明する場合に、実験参加者がぬいぐるみに対してより強く「かわいい」と感じることが判明した。また実験参加者が、ロボットがぬいぐるみに対してより「かわいい」と感じている、と見なすことも判明した。一方で、実験参加者がロボットに対して「かわいい」と感じる度合いは変化が見られなかった。人による実験とその結果について ロボットによる実験結果を受けて、説明者がロボットまたは人であった場合の動画を作成し、WEBでの追加実験を行った。その結果、説明者が人であっても、ロボットの実験結果と同様に、実験参加者がぬいぐるみに対してより強く「かわいい」と感じること、および実験参加者は説明者がぬいぐるみに対してより「かわいい」と感じていると見なすこと、実験参加者が説明者に対して「かわいい」と感じる度合いには変化が見られなかったこと、が判明した。以上により、ロボットでも人でも、実験参加者は説明者に触れられた対象物により強く「かわいい」と感じることが明らかになった。 これらによって、ここで判明したことが商品説明で感じてもらう動きの設計に貢献するとしている。