NICT、ドローン同士の直接通信で自動追従群飛行に成功
国立研究開発法人情報通信研究機構(NⅠCT、徳田英幸理事長)は、ドローン同士がそれぞれの位置情報などを地上の操縦者やネットワークを経由せずに直接通信するシステムを開発したと発表した。このシステムを応用して、先導するドローンに3機のドローンが一定の間隔を保って追従し、編隊飛行させる群飛行技術、及び同一の空域に4機のドローンが飛行しても自律的に相互の接近を回避するシステムの実証実験に世界で初めて成功した。この技術により、特に目視外まで飛行させる場合にドローン運用の効率化や電波の有効利用、及び空の安全・安心につながり、複数のドローンの同時飛行による物流や広範囲の農薬散布、災害対策など様々な分野への応用が期待される。近年、農業・測量・警備・物流・災害調査・点検など幅広い分野でドローンを活用する動きが活発化しており、たくさんのドローンが空を飛び交う時代がすぐそこまで来ている。国の規制緩和も進んでおり、今年度中には、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が毎年取りまとめている「空の産業革命に向けたロードマップ」における『レベル4』といわれる有人地帯上空での目視外飛行も可能になる。 今回研究開発では、ドローン同士が特定小電力無線局である920MHz 帯の電波(出力20mW、上空利用可能、無線局免許不要)を使って相互にブロードキャスト通信を行いGNSSで得られた位置情報を共有する「機体間通信システム」を開発した。これを各ドローン上で飛行制御装置に接続することにより、ドローン同士が相互に連携することを可能にした。 このシステムに、「先導するドローンに対して他のドローンが自動で追従する群飛行(離着陸を含む)」や「自律的な接近回避」のための飛行制御アルゴリズムを組み込むことで、それぞれ4機での群飛行及び接近回避の飛行試験に世界で初めて成功した。 なお、同システムは、ドローン間だけでなく、ドローンと有人ヘリコプターの間でも利用でき、数kmの距離を隔ててヘリコプターが接近した場合に、ドローンが自律的な接近回避をすることが可能になることも実証している。 これらの技術によって、今後混雑が予想される上空での効率的で安全・安心なドローンの活用が可能となり、物流、農業、点検、防災といった様々なシーンでの利用が期待される。また、今回の成果を基に、更に多くのドローンが同一の空域内を飛行する場合に対応した通信制御方式や飛行制御方式についての検討や、飛行する環境に応じた編隊の隊形にするなどの群飛行技術や通信技術の高度化を進め、同方式の実用化を目指していく予定だ。 ※特定小電力無線局 比較的狭い範囲内をサービスエリアとする無線通信に対する需要の高まりに応じて制度化された無線局の一つ。無線局の要件の一つに、「総務大臣が別に告示する用途、電波の形式及び周波数並びに空中線電力に適合するもの」が規定されている。本システムで利用する920MHz帯無線機器はこれに該当し、無線局免許を取得する必要はない。なお、本システムでは、通信速度を低く抑える代わりに遠方まで到達するLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる通信方式を採用しており、小電力ながら条件がよければ10km以上の距離を隔ててデータを伝送することが可能。 ※ブロードキャスト通信 無線LANなどの一般的なデータ通信は、通信相手先を指定して1対1で双方向に通信するのに対して、ブロードキャスト通信は一つの端末から不特定多数の端末に対して同じデータを同時、かつ一方向で送信する通信方法。今回開発した機体間通信システムは、互いに信号がぶつからないよう、複数の端末それぞれがタイミングを区切ってブロードキャスト通信することにより、端末間で共通の周波数を使って各位置情報を相互に共有することを可能としている。 ※GNSS 衛星測位システムのことで、人工衛星から発射される信号を用いて位置測定・航法・時刻配信を行うシステムのこと。GPSや準天頂衛星システムなどが挙げられる。業務用のドローンには、必ずこの受信機が搭載されており、自機の位置を常に把握しながら、あらかじめ決められた飛行ルートに沿って自律的に飛行することができる。
この記事を書いた記者
最新の投稿
- 実録・戦後放送史2024.09.02連載にあたって
- 筆心2024.09.022024年8月26日(第7712号)
- 放送ルネサンス2024.09.02放送100年特別企画 「放送ルネサンス」第1回
- 放送2023.09.01ビデオリサーチ 災害情報入手経路の7割が地上波民放テレビ