KCCSモバイルエンジニアリング―金炯培社長に聞く
KCCSモバイルエンジニアリングは、全国の自治体向けに防災クラウド「IP告知システム」また、IoTプラットフォーム「miotinc」を展開している。そこで、ビジネスの進捗状況や今後の取り組みなどについて、金炯培(キム・ヒュンベ)社長に聞いた。 ◇ ◇―いま最も注目していることについて教えてください。 金 ITやモバイルを使って通信ネットワークに貢献する会社をつくることがビジョンだ。2025年までに世界のグローバルトップ5となる市場はモバイルインターネット、AI、IoT、クラウド、ロボットと言われており、この最先端技術に取り組んでいく。SDGsのコンセプトから「産業と技術革新の基盤づくり」「パートナーシップで目標達成」を選び、「格差のない住み続けられる街づくり」に貢献する。データプラットフォームとネットワークソリューションを用いる会社に特化する。 ―長野県小谷村と地域活性化に向けた包括連携協定を締結されましたが、具体的にどのような取り組みを行う予定ですか。 金 地域創成、防災意識と災害対応力の向上、高齢者が安心して暮らせる地域づくり、地域課題解決に必要なICT利用などに取り組む。小谷村は他の村に先駆けて最先端の技術を導入している。小谷村は長野県神城断層地震の際、通信などの生活インフラが1ヵ月以上途絶え、情報不足に一番困った。再び震災が起きても早期復旧できるよう通信網を整備した。役場までNTTのラインが復旧すると、その下は役場のラインとして復旧するよう設計されている。役場が自前でGE―PON光ネットワークを敷設した。当社は電柱、Wi―Fi、有線ネットワークなどの設置を支援した。充電器、太陽光発電、IP告知システム、IoTプッシュボタンなどを段階的に導入していきたいと考えている。ITインフラが整備されたが、若者が来ないため、コンテンツやサービス、教育ツールなど必要なものを検討している。 ―防災クラウド「IP告知システム」の北海道への導入の進捗状況について教えてください。 金 昨年7月に北海道の幌加内町、月形町、喜茂別町、鶴居村、厚岸町の5自治体にIP告知システムの導入が決まった。2019年3月末に幌加内町への導入が完了し、翌4月から町民は使用している。主に防災機能だが、様々なアプリケーションをカスタマイズでき、幌加内町独自のコミュニケーションツール「ほろみんナビ」として活用されている。現在、喜茂別町、月形町、厚岸町への作業を進めており、鶴居村は今年度下期に取り組む予定だ。 ―IP告知システムとはどのようなものですか。 金 日本は世界の中でも最も地震が発生しやすい国だ。また、高齢化により若い労働者が少ないので、ICTを使って生産性を高める必要がある。防災、ブロードバンドの維持、ICTの利用は日本政府の政策で、このニーズを満たすシステムの一つがIP告知システムだ。IP告知端末のほか、スマートフォンやタブレットにアプリを入れて利用できる。自治体が災害情報やJアラート、お悔やみ、選挙速報など各自治体独自のコミュニティで配信したいものも地域情報クラウドとして提供している。また、自動で配信でき、地域の様々な情報を自動で取り込める。双方向のライブ通信も可能だ。IP電話、IPテレビ電話が最大10台まで同時接続ができる。高齢者も使いやすいよう、あえて受話器を付けたり、大画面タッチパネル、アナログボタンを採用した。緊急ボタンも配置し、押せばすぐに連絡が取れるようにした。広島県安芸高田市、静岡県川根本町など全国約3万世帯に導入実績がある。 IP告知システムをベースに自治体向けPlatformの開発を開始した。将来的には、IoT Platform/サードパーティの外部サービスと連動する。スマートデバイス向けのアプリケーションサービスとして遠隔医療や高齢者の買い物などをICTでカバーする。新しいサービスについてアイコンを遠隔で増やすことができる。双方向通信のコミュニケーションとして、ライブコマース市場が今後盛り上がりを見せる。中国、韓国は市場が大きいが、次は日本に来る。IP告知システムと端末をその市場に投入する。 年齢別のインターネット利用率を見ると、65歳以上はインターネットを使いこなせていないが、インターネットを使いこなせている高齢者のネットショッピング使用率は高い。そこで当社は、地域プロモーションとして観光と特産品を、告知システムで地域情報を全国へ発信する。地域の様々なコンテンツをIP告知端末上で流すことが可能だ。ケーブル放送を使って観光客を呼ぶための地域プロモーションができる。日本の特産物を手軽に世界に販売できるようにこの端末を使う。 ―IoTプラットフォーム「miotinc」に新機能を追加しましたが、その特長について教えてください。 金 「miotinc」は、IoTの色々なデータを集めるプラットフォームだ。API連携を通して、他のプラットフォームなどにもつながるようになった。IoT市場では、監視やトラッキングが市場の30~40%を占めている。弊社は今後、トラッキング製品を発売する。miotincにはデータ収集、可視化、多言語化、ペイロード管理、課金計算、メッセージ通知、コールバックの機能がある。今回新たにジオフェンス機能とAPI連携を追加した。ジオフェンスの範囲設定は、miotincのUIにより地図上に円または四角形の図形を描き、その図形の範囲内か範囲外かを選択する。例えば、工事現場に範囲を設定すると、工事現場から何かを持ち出すとアラームが鳴る仕組み。盗難防止や子供の見守り、移動管理、侵入管理などに活用できる。弊社では、ロジスティックトラッカー「T2」を提供している。防水機能があり衝撃にも耐えられるので、コンテナに取り付けることができる。バッテリーは5年間利用できる。トローリートラッカー「T4」は、スーパーのカートなどに取り付けて盗難防止に活用できる。パレットトラッカー「T8」は、パレットや自転車、子供の鞄などに設置できる。 ―今後の経営戦略について教えてください。 金 ターゲットは「自治体」です。5Gという新しい通信規格も利用しつつ、自治体が抱えている課題である遠隔医療や教育に関してICTの分野で貢献していきます。
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