時速500㌔㍍でも接続が切れないネットワーク NICT
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、徳田英幸理事長)のネットワークシステム研究所は、高速鉄道移動中でもストレスのない通信を可能とする研究開発において、線路に沿って無線局を設置するリニアセル方式と無線信号を光ファイバへ重畳するファイバ無線技術を駆使し、高速移動中に通信を途切れさせないよう無線局を適時切り替える方式を開発し、現在の携帯電話回線の約20倍以上となる毎秒20ギガビットの無線信号の送信に成功したと発表した。今回の実験成功により、将来の時速500㌔㍍を上回る超高速鉄道など、無線局の切替えが頻発する移動体においても円滑な高速通信が可能となることを示した。 スマートフォンの爆発的普及により、高速鉄道等での移動中にもストレスなく通信できることが望まれているが、高速移動中では、接続している無線局が頻繁に切り替わるときに、しばしば接続が途切れる。NICTは、共同で総務省・電波資源拡大のための研究開発「ミリ波帯による高速移動用バックホール技術の研究開発」(研究代表者・日立国際電気)を受託し、高速鉄道においても信号の途切れないネットワーク技術の研究開発を進めてきた。また、これまでNICTは、光ファイバ通信と大容量無線伝送が可能なミリ波帯の電波の特長を組み合わせたネットワークの研究開発を進めてきた。 今回NICTは、ファイバ無線ネットワークにおいて、高速鉄道向け通信システムに必要な要素技術を開発し、無線局から毎秒20ギガビットの無線信号の送信に成功した。 開発した技術は次の2点。①シームレスに無線局を切り替える技術として、無線局ごとに異なる波長の光信号を割り当て、列車の位置に合わせて、配信する光波長を高速に切り替える方式と、隣り合った2つの無線局へ送信する光信号を制御し、2つの無線局からの無線信号の干渉を低減する方式②ミリ波信号を利用した大容量無線通信技術。 一般的に高速鉄道では、運転指令所に列車位置情報が集約されることから、その位置情報を基にして信号配信する無線局を決めることが可能になる。移動している列車に近い無線局へ信号を適時配信することにより、あたかも無線局が列車に付随して移動しているように、移動中も信号途絶のない通信システムの構築が可能になる。 今回の要素技術により、仮に1000㍍間隔にミリ波無線局が配置され、時速500㌔㍍(無線局間をおよそ7秒で通過)で走行しても、無線局を切り替えながら毎秒20ギガビットの信号が送信できることになる。 今後、ファイバ無線ネットワーク技術の実装を、総務省・電波資源拡大のための研究開発「ミリ波帯による高速移動用バックホール技術の研究開発」を通じて、日立国際電気、鉄道総合技術研究所、海上・港湾・航空技術研究所電子航法研究所ほかと共同で、実際の鉄道路線において実証試験を行い、産学官連携の共同研究開発及び社会実装を加速する。
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