イートラスト 酒井社長に聞く クラウド型防災監視カメラシステム展開
イートラスト(東京都台東区、酒井龍市社長)は、河川の様子を遠隔から画像で監視し、IoTの力で、すべての人の暮らしを守るクラウド型防災監視システム「STAND GUARD」シリーズとして、防災クラウドカメラシステム「eT001s」および撮影画像を閲覧・確認するためのWebアプリケーションである防災クラウドシステム「eT―Cloud」を展開している。酒井龍市社長に2021年の回顧と2022年の抱負を聞いた。 イートラストの〝河川を見守る、暮らしを守る。〟クラウド型防災監視カメラシステム「eT001s」のポイントは次の4点。 ①電源&配線工事は不要=ソーラー発電とLTE回線を活用し、機器が小型で軽量なため、電柱や橋梁などに場所を選ばず設置可能。さらに無日照でも7日間稼動する②夜間もはっきり見える=独自の高感度カメラモジュールを採用、月明かり程度の明るさでも補助照明なしに鮮明な画像を撮影できる③国土交通省のプロジェクト仕様に準拠=国交省主導の「革新的河川技術プロジェクト」に参加し、要求仕様に適合するカメラシステムを実現。国や自治体に多数導入されている④各種気象センサーとの連携が可能=水位、気温、気圧、雨量、風速などの気象センサーと組み合わせて運用することができる。計測データはカメラ画像と同じ画面に表示。 防災クラウドシステム「eT―Cloud」は、複数のカメラから収集された画像をデータ送信し、クラウドサーバー上に保存。そこから一括でデータの閲覧・確認することで、的確な状況判断をサポートする。主な機能は次の5点。 ①スケジュール機能=撮影間隔を指定してスケジュール撮影が可能②ユーザーごとの監視局参照範囲選択=利用者でユーザー別に参照可能範囲を選択可能③センサー入力撮影とメール通知=各種センサーと連動したメールアドレスへの通知が可能④平常時画像の登録=監視局ごとに平常時の標準画像を登録でき、最新画像と一目で比較できる⑤マルチデバイス対応=閲覧機能はPCやスマートフォンなど表示デバイスに応じ、自動で見やすいレイアウトに。 酒井龍市社長は2021年度の河川監視システムの納入実績について「国交省の『革新的河川技術プロジェクト』が3年目となり、一定数納入することができました。手応えとして2021年は、都道府県単位の導入から市町村単位へ除々にシフトしており、2021年度はその元年とみています。2022年度以降、さらに市町村向けに特化していきたいと思います」と述べた。 具体的には「九州では熊本県や福岡県の市町村などに納入済みで、このほか複数の引き合いがありました。東日本では都内での納入実績も含めて数ヵ所で案件が動いています。東海地区でもお声がけを複数いただいています」と話した。 西日本では、コロナ対策のひとつがこの防災河川監視システムであったとし、大災害発生で避難所に殺到しても〝密〟になってしまう。それを防いで的確な避難指示を出すために防災システムの導入を急いだ自治体があった。ウィズコロナでも、防災システムに〝追い風〟が吹いたという。 2021年も豪雨災害が多かった。8月には九州北部では降水量が1000ミリを超え、1週間も経たず年間雨量の5割に達する地域も出るなど、全国各地の広範囲で記録的な大雨となった。 酒井社長は、クラウド型防災監視カメラシステムの評価で「当社のシステムは、同業他社のカメラに比べて、電源トラブルや通信途絶といったことが圧倒的に少ないと自負しています。昨年8月の豪雨災害にもほとんど止まらないでご活用いただけたと聞いています。このほかクラウド機能が充実して、市町村では、自前のカメラ映像だけではなく、国交省や県のカメラや水位データを取り込んで、同じ画面上に表示ができます。リンク先に行くのではなく、完全に自分たちのシステムに取り込んで見られますのでここも評価が高いところです」と話した。 将来的には、AIによる河川水位検出機能を取り入れた次世代カメラによるバージョンアップを図るという。 「AIには2つあって、ひとつは、水位を検出するAI。このAIを搭載した次世代カメラのバージョンアップは、すでに河川と鳥獣被害用途で実証実験に入っています。今年度中の運用を見込んでいます。もうひとつは、たくさんのカメラ、たくさんの水位計から多くの情報が来る中で、〝どの情報を見て判断したらいいのか〟なかなか分からない。あらゆる情報から今、避難すべきかどうか判断ができるようにAIを活用することです。これは産学官の取り組みで長岡技術科学大学(新潟県長岡市)と連携して進めています。昔は、水位計やカメラの設置も国交省や県によるほんの一部でしかありませんでした。今は何百というカメラや水位計から情報が届くので、どの水位計のデータを見て避難するか判断したらよいのか、どの河川カメラの映像から判断したらよいのかよくわからない状況になっています。せっかく河川の映像や水位データから様々な情報が吸い上げられるようになったので、それを〝危ないから逃げなさい〟という避難するためのデータにしたい思いから研究開発に取り組んでいます。従来は河川管理システムとか水位計は、いわば市役所や県の職員のための判断材料でした。こういった情報を一般市民が気軽に見られる状況になった今こそ、自主防災の観点からも、避難判断においてデータを噛み砕いて渡す必要があると考えて取り組んでいます」(酒井社長)。 イートラストは、国交省危機管理型水位計規格準拠のクラウド型水位観測システムである電波式水位計「eWL001A―D」を展開している。中小河川の水害対応力向上をIoTでサポートする。同社は50年以上にわたり、各地の地方自治体でいろいろな防災設備やシステムを提案し、施工・保守を行ってきた。いつでも、その地域の防災に何が必要かを、地域住民と一緒に考えている。そのような同社が作る水位計には今までの経験と知識、防災への思いがつまっている。低価格で電源不要。簡単に設置でき、かつ高精度。メンテナンスフリー。今、求められている、日本の中小河川にぴったりな水位計を提案している。 特長は次の3点。 ①最新の無線技術を採用=独自開発の計測データ処理手法(Advanced FMCW)により、従来の24GHz帯でも高精度な水位測定が可能②優れた保守性と発展性=完全メンテナンスフリーの非接触型水位計、さらに大容量バッテリーと組み合わせることで自律型水位計を実現している。サーバーから保守や設定変更が可能なため、将来はAIを搭載するなど優れた発展性を有している③容易な設置と運用の確実性=水位計本体は従来品に比べ小型軽量のため、橋梁など様々な場所に容易に設置できる。またソーラーパネル、バッテリーを別体とした電源部は、日照を考慮した最適な場所に設置することが可能で、確実な運用を実現する。 「今回は第3世代にあたる水位計で、内製化を深めた製品です。私どもは河川監視において、どういう水位計のどういうデータが必要か理解しているつもりなので、今回、製造側の押しつけの強いものではなくて、お客様ニーズに合わせた水位計を作りました。日本の行政、その河川監視にずばりフィットするものを作りたいという思いで内製化して、より現実的な機能に仕上げました」(酒井社長)。 酒井社長は2022年の抱負を語った。 「河川監視システムでは、先ほど申し上げたカメラのバージョンアップによるモデルチェンジ。水位計ではこの第3世代の製品の展開に加えて、冠水センサーが付いた簡易的な水位計の開発です。アンダーパスやマンホール、内水氾濫等街の中の地盤が低い所に付けるタイプの開発に力を入れています。他の事業では、積雪監視で地元の積雪センサーの会社と組んでITツールを開発中です。この冬、本店(新潟県長岡市)に試験的に設置して積雪センサーとの連動を実証します。防災監視カメラによる火山監視体制の強化も事業化を検討しています。これも実証段階に入っています。それからカメラクラウドシステムを観光向けに開発検討しています。これまでも防災監視カメラの映像を自治体の観光ホームページに転送するといったことは行っていましたが、スマートフォンやSNSの普及で見る側の眼も肥えていますので、お粗末なアップの仕方では話題にもなりません。観光用の映像アップではカメラの性能、画角の決め方、明かりの取り方などその道のプロの意見を聞いて、デザイン的に本腰を入れて事業に加えていきたいと考えています。また、昨年9月より新潟県土木部が認定を始めた『SDGs推進建設企業』への参画を皮切りに、今年はSDGsに関する取り組みを強化していきます。当社が長年取り組んできたインフラ設備工事や防災システム構築といった事業は、SDGsの実現に寄与するものです。さらに今後はダイバーシティという観点から、日本での就職を希望する外国人留学生や、理工系女子学生の採用にも力を入れたいと考えています。実際に来年度は外国籍の方が新入社員として複数名入社する予定です。学生の中には、『やりたい事や夢がはっきりしているから、大企業よりも中小企業で働きたい』と考えている方も多いと聞きます。当社では東南アジアを中心とした海外向け防災プロジェクトなど、国内外のフィールドで活躍していただける機会があります。『防災』『環境』といった分野で働きたいという意欲的な人が、国籍や性別を問わずに集まる企業を目指して、地元の大学や企業とも連携しながら情報発信を続けて良い人材を確保していきたいと思っています」。
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