イートラスト 酒井龍市社長に聞く 小型軽量化の危機管理型水位計
昨年(2019年)は台風15号、19号の大規模被害など災害の多発した年だった。19号のテレビのニュース映像で国交省が設置した河川監視カメラによる氾濫の様子を見た人も多いだろう。イートラスト(東京都台東区、酒井龍市社長)は、自社開発の簡易型河川監視カメラ、危機管理型水位計を多くの自治体に納入している。新年にあたって酒井龍市社長に今後の製品戦略などを聞いた。――昨年を振り返っていかがでしたか 「ほんとうに大規模災害が多い年でした。当社も様々な災害支援を行いました。私自身も様々な災害現場を訪れました。〝災害多発〟の時代を強調した1年だったと思います」 ――イートラストは、簡易型河川監視カメラで、国土交通省「革新的河川技術プロジェクト(第3弾)」(2018年度)実証実験に参加しました 「その目的は、氾濫の危険性が高く、人家や重要施設のある箇所に『簡易型河川監視カメラ』を設置し、河川状況を確認することで、従来の水位情報に加え、リアリティーのある洪水状況を画像として住民と共有し、適切な判断を促す―こと。プロジェクト目標は2020年度末までに全国約3700ヵ所の設置を行う―となっています」 ――その中でイートラストのクラウド型防災監視カメラシステム「eT001」の導入が相次いでいます 「すでに150台以上の導入実績がありましたが、現在、12都道府県で約600台の受注が決まっています。当社は電気設備工事会社から始まりました。ものづくりも始めてからこのカメラシステムはスマッシュヒットといえます。ただ、これまでは1回で10台程度作って自治体に納めていましたが、今は多いところで100台以上の納入もありますので、供給面を含めてしっかりしたものづくりを続けていきたいと思っています」 ――「eT001」の特長を話してください 「インフラ条件に左右されずに即設置可能なクラウド型防災監視カメラシステムです。本体制御装置、電源BOX装置、ソーラーパネルで構成されています。配線工事不要のため、お客様による容易な設置が可能です。災害時に通信や電気が遮断されても、遠隔で災害現場の情報を受信可能になります。完全ワイヤレスで撮影画像、測定データを取得し、クラウドサーバーへ送信します。電気設備等の整っていない場所でも容易に設置・加工ができます。お客様の要望に合わせ、気象センサーや水位センサーなど多様なセンサーを組み合わせたカスタマイズが可能です。星明かり程度の明るさでも現地画像の確認ができます。クラウドサービスによりいつでもどこからでも画像・データを確認できます」 ――イートラストは、国土交通省「革新的河川管理プロジェクト(第1弾)」と「革新的河川技術プロジェクト(第2弾)」のどちらにも参加して水位計の開発を行ってきました 「水位の計測方法がレーダー式・76GHzの水位計『eWL001―D』を展開しています。そして、今年度、バージョンアップした新製品を投入しました。国土交通省危機管理型水位計仕様に準拠した製品です。小型(幅100、奥行き100、高さ60㍉㍍)、軽量(約350㌘)で取付け工事も軽減。非接触の電波方式でメンテナンスフリー。霧や降雨・降雪時においても測定可能。最大50㍍まで計測可能。低消費電力を実現。センサタイプは非接触型電波式・24GHzです。第1号は今年1月、福岡市役所に10ヵ所納入されます」 ――クラウド型防災監視カメラシステムでも新製品開発を進めていると聞きました 「基本機能を踏襲しながら、カメラ本体が小型軽量化した『eT001s』を製品化します。レンズカバーが小さくなって水滴の影響が減少しました。風圧加重が少なくなりました。設置場所の自由度が向上しました。目立ちにくくなって景観への負荷も減少しました。引き続き設置工事も簡単です」 ――今後の営業戦略をお聞かせください 「災害報道などで、簡易型河川監視カメラ、危機管理型水位計の存在が広く知られてきました。昨年度頃からそんなに大きくない市町村で、例えば4ヵ所監視カメラを付けたいと。そのうち2ヵ所は水位計も付けたいといった要望が出始めています。当社は、同業他社にはあまりない無線カメラと水位計の連携が可能なので、お客様の要望に応えるべく2つのシステムを合わせてお薦めする営業戦略も進めていきたいと思います。簡易型河川監視カメラでは、モデルチェンジした『eT001s』に順次切替えていきます。ものづくりの分野では、無線カメラと水位計に特化してそこから市町村向けの防災システムに進んでいきたいと思っています。防災・減災ソリューションのベンダーは幅広い分野に手を広げがちですが、社会実証ばかりでそこがいつか大きな市場になるかもしれませんが、当社のリソースを考えても、水、川の関係の防災に選択と集中をしています。国土交通省『革新的河川技術プロジェクト』が始まった3年前からその考えは変わりません。無線カメラも水位計もニッチなのですが、市場にしっかり参入できる形になりましたので、選択と集中に徹します。無線カメラでプロジェクトの目標の3700台の3分の1くらいは取れたというと手応えもありますので。全体の会社の業績では工事関係の売り上げとうまくバランスが取れればと思います。テレメーターなどを手がけていた実績、信頼があった水、川に特化して、今年は基盤作り、足場固めに次いで次のステップに進む年にしたい。将来的には、道路監視など様々な災害支援に向けて、カメラのバリエーションを増やして、イートラストの得意技は何かと聞かれたら、防災・減災カメラといったらどこにも負けない会社と答えられるようにしたい」
この記事を書いた記者
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