「第2回 YRPちょこっと最新セミナー」横須賀テレコムリサーチパーク
横須賀テレコムリサーチパークは、横須賀リサーチパーク(YRP)内の進出企業・研究機関の事業活動を広くYRP内外に周知し、三浦半島から生まれる協業・連携を目指すサイエンス・セミナー「第2回 YRPちょこっと最新セミナー シリーズ『いま知りたいに応える』」を12月7日にYRPセンター1番館YRPホール(神奈川県横須賀市)及びオンラインで開催した。協力は一般社団法人YRP研究開発推進協会、後援は横須賀市。 今回は、YRPに立地しているNTT、日本エア・リキード合同会社から講演を行った。横須賀テレコムリサーチパークからは、YRPに開設予定のサイエンスカフェと、同セミナーの今後について説明した。 神奈川県横須賀市の郊外にあり、電波・情報通信技術を中心としたICT技術の研究開発拠点として発展してきたYRPに、近年新たな業種の事業者の参入が相次いでいる。今、YRPで何が起きているのか。進出各社の活動を、参加しやすいよう、〝ちょこっとしたお時間で〟紹介するセミナーをシリーズとして企画した。 最初の講演は「Well―beingな社会を作るNTTのIOWN構想とサービスイノベーション総合研究所の取り組み」と題してNTTサービスイノベーション総合研究所企画部長の唐澤圭氏が行った。講演要旨は次の通り。 NTTのIOWN構想(アイオン、イノベイティブ・オプティカル・アンド・ワイヤレス・ネットワーク、NTTが提唱する、ネットワーク・情報処理基盤の構想)は2019年5月に発表した。IOWNは持続可能な技術革新へ、光技術による「伝送」と電子技術による「処理」の結合、光と電子の緊密な結合「光電融合型の処理」を行う。光電融合技術の実用化では初期の40G光伝送装置をみても、約15年で大幅な小型化と低消費電力化が進展してきた。ボード間の光接続を実現した後、パッケージ間の光接続を実現し、現在はダイ(チップレット/タイル)間の光接続を実現した。 IOWNの商用サービスは、超大容量かつ超低遅延の通信基盤となる「APN(オール・フォトニクス・ネットワーク)」を使ったもの。2030年のAPNの目標は低消費電力で情報処理基盤を光電融合素子にすることなどで電力効率100倍を目指す。大容量・高品質で伝送容量125倍を、波長単位で伝送したり待ち合わせ処理・データの圧縮不要などでエンド―エンド遅延で200分の1倍を目指す。 新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward」では2040年に再生可能エネルギー利用を拡大し、温室効果ガスを45%削減。IOWN導入により電力消費量を削減し、温室効果ガスを45%削減を掲げている。 そして、NTTでは光電融合技術を最大限活用した新たなコンピュータアーキテクチャである「光ディスアグリゲーテッドコンピューティング」を検討している。 IOWNサービスのスタートは2023年にAPNサービス(IOWN1・0)を開始する。「大阪・関西万博」でIOWN2・0サービスの商用化を発表する予定だ。 IOWN構想は、スマートな世界を実現する、最先端の光関連技術、および情報処理技術を活用した未来のコミュニケーション基盤である。〝デジタル・トゥー・ナチュラル〟と〝エレクトロニクス・トゥー・フォトニクス〟の2つの進化により持続的成長、安心・安全・信頼、および個と全体の最適等様々な価値を生み出していく。 続いて「水素とFCモビリティの普及に向けた取り組みと課題」と題して日本エア・リキード合同会社水素エネルギー事業本部事業開発推進部部長の寺田健次氏が講演した。講演要旨は次の通り。 日本エア・リキードは、産業・医療ガス(酸素、窒素、水素など)および関連機器・サービスをあらゆる業種(製鉄、化学、エレクトロニクス、食品工業、医療など)に供給している。 液化水素・液化技術における強みは航空宇宙産業における実績や大規模液化機の実績、LNGの再液化技術など長年にわたり培った液化技術である。YRP内にある日本エア・リキード合同会社のイノベーションキャンパス東京は、世界で事業展開するエアリキードのアジアオセアニア地区におけるイノベーションセンターである。 続いて「液体窒素を用いた食品凍結のご紹介」と題して日本エア・リキード合同会社産業ガス事業本部NEAPac ALTEC Food Cryoエキスパートの外尾史恵氏が講演した。外尾氏は食品向けのガスアプリケーションの紹介や液体窒素を利用した凍結などについて述べた。 ◇ 続いて「YRPサイエンスカフェについてのご説明」と題して横須賀テレコムリサーチパークは技術教育担当部長/無線歴史展示室室長の太田現一郎氏が講演した。講演要旨は次の通り。 横須賀テレコムリサーチパークでは、YRP域内・横須賀市内の協業共存・共栄を目指して、フランクに話のできる場「YRPサイエンス・カフェ」、要望に応じて最新異業種のセミナー講演を行う「YRPサイエンス・セミナー」、日頃から仲間づくりのできる場「YRPサイエンス・クラブ」を展開しようとしている。 YRPは発足時から「協業」を目指すパークだった。そしてそれは、「地形」から誕生した。「光の丘」は「電波の谷」でもある。この「谷」こそが、大切な立地条件でもある。この「谷」であれば、無線実験が容易にできるのだ。無線の実験局免許は、YRPならば簡単に取得できる。 1972年に横須賀市のYRPのある光の丘にNTT通信研究所が設立された。今年で50周年である。その後、東京湾側にサテライト実験場も建設された。長沢の丘に建てられた衛星通信実験施設もあった。「光の丘」は三方を丘陵が囲み、宇宙に相当する静かな電波環境だったので、この地で研究開発されたマイクロ波の技術は携帯電話の誕生につながっていった。 新たな周波数での研究開発のために、この谷に研究パークを作った。こうして横須賀リサーチパーク(YRP)が誕生した。YRPは数々のテストベッドを共同利用を目指し構築した。モバイルマルチメディア・アプリケーション共同研究を行った。 そしてYRPは多業種・異業種の集うパークに様変わり中だ。互いに協業し、ウィン・ウィンの未来を手に入れるため、まずはマッチング(お見合い)の場が必要だ。現在は異業種連携が不可欠になっている。そこで自由にディスカッションする場「YRPサイエンス・カフェ」、要望の高いトピックスを講演する「YRPサイエンス・セミナー」、お互いの魅力を見せあう「YRPオープンハウス」、自然なふれあいの場「YRPサイエンス・クラブ」を展開する。第1回サイエンスカフェは来年1月下旬に行う。
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