富士通など 津波避難に向けたICT活用の実証実験を実施

 東北大学災害科学国際研究所、東京大学地震研究所、富士通、川崎市は共同で、12月に川崎臨海部で行われる川崎市津波避難訓練において、より安全な津波避難に向けたICT活用の実証実験を行うと発表した。4者は2017年11月より「川崎臨海部におけるICT活用による津波被害軽減に向けた共同プロジェクト」を進めており、この実証実験はその一環として行うもの。実証実験は12月9日午前9時30分から。平成30年度川崎市津波避難訓練と同時開催する。川崎市立新町小学校及び周辺地域で約70名の参加者を予定している。神奈川県が設定した「慶長型地震」による津波を被害想定。訓練では、地震の強い揺れによる建物倒壊・火災、津波浸水などによる津波避難における通行困難地点を複数設定。検証項目は、通行困難地点に遭遇した避難者が、避難支援スマホアプリを用いて被害状況を地域住民と共有することで、より安全な避難に向けた効果を確認する。 避難支援スマホアプリで取得した避難経路情報を見える化し、かつスパコンによる避難シミュレーションも用いて、避難の課題と対策を住民と共有する。   この避難訓練では、本訓練を目的に開発した避難支援スマホアプリ(試作版)を住民が活用することで、避難に必要な情報を自ら取得する自助と、被害状況を地域で共有する共助を支援。そして、訓練を通して得られた今回の避難行動データとともに、スパコンを用いた様々なケースの避難シミュレーションの結果も併せ、本地域での津波避難の課題と必要な対応について幅広く検討する。 また、実証実験で得られたデータや知見は、今後のスマホアプリによる避難支援の効果的手法の検討や、避難行動を予測するシミュレーションモデルの高度化に向けた基礎データとして活用し、川崎臨海部及び他地域の防災力の強化につなげる。 東北大災害研、東大地震研、富士通、川崎市は、2017年11月より開始したICTによる津波災害対策の高度化に関する産学官共同プロジェクトにおいて、川崎臨海部の津波防災に関するシミュレーションによる検討を進めてきた。その結果、川崎臨海部における津波の特徴把握に加え、川崎臨海部の昼間人口約35万人の津波避難行動を、スパコンを用いてシミュレーションすることで、いくつかの避難場所周辺において混雑による避難の遅れが起こり得ることや、適切な避難誘導により混雑が緩和される可能性があることなどが確認された。 今回の避難支援スマホアプリの機能は①避難者が被害状況(通行困難地点)を写真やコメントと共に投稿する機能②投稿された避難経路上の被害状況を参照する機能③地域コミュニティでの災害情報を共有する機能(掲示板)④避難経路・時間の取得機能。 東日本大震災を契機に、国・自治体による公助だけでなく、大規模災害時の自助・共助との連携の重要性が一層認識され、一定の地区内における自発的な防災活動についての地区防災計画の検討も進んでいる。また、近年の大地震発生時には、SNSが連絡手段や情報共有において重要な役割を果たすなど、より安全な避難行動に向けたスマートフォン等を用いた防災情報の入手・発信の有効性が指摘されている。 津波避難の際には、大地震の強い揺れによる建物の倒壊・火災、液状化などによる道路閉塞が、避難を難しくする。しかし、避難経路の詳細な被害状況を自治体側がリアルタイムに把握し、適切な避難誘導を行うことは困難だ。そこで、今回の実証実験のために開発した避難支援スマホアプリは、住民自ら必要な情報を取得する自助と、被災情報を住民同士で共有する共助の支援に向け機能を提供する。