水中LiDARの試作機をお披露目 「ALANコンソーシアム」説明会を実施 JEITA

 一般社団法人電子情報技術産業協会(柵山正樹会長、JEITA)は2月7日、JEITA共創プログラムの第一弾の事業に認定された、水中光技術を研究・開発する「ALANコンソーシアム」の状況報告と今後の展開を紹介する説明会を実施した。 同コンソーシアムは、海中を代表とする水中環境をローカルエリアネットワークとして位置づけ、水中の無線通信速度はモデム程度の速度ということもあり、水中での光無線技術を音波や有線技術と並ぶものにするために研究開発を行っており、発足は昨年の6月で、発足後は新たに4社の参入が決定し、さらに複数社の入会が見込まれている。 水中の光無線技術の応用例にはスマート漁業などに代表される第一次産業のほか、河川測量や橋梁・港湾施設といったインフラ設備の老朽化診断、海底調査といった第二次産業、海中輸通信や観光事業などの第三次産業と多岐にわたる。これら応用例にたどり着くには、光無線技術の高度化は当然のことながら必須で、そのためには、水中の状態を診断する「水中LiDAR技術」、水中の機器間および、機器と中継器間の無線通信を行う「水中光無線通信技術」、各機器の電力を給電する「水中光無線給電」といった技術の開発が必要となり、3年後の実用化を目指している。 説明会では、同コンソーシアム発の第1弾プロジェクトとして、フラッシュタイプの水中LiDAR「Aqua―Pulsar LiDAR」を開発したと発表。 同機はROVに搭載可能なフラッシュタイプの高分解能水中LiDARで、測距分解能は5㍉㍍。水深10㍍以上の水中でも活動が可能な耐水性を保持しているほか、今後の実証実験に備えた光学系の機器も搭載する。 橋梁や河川設備インフラストックの老朽化に伴い、維持管理の需要や修繕にかかる費用が増大し、2023年には5・5兆円から6兆円が費やされるという試算もあるものの、プロの潜水士を使って作業を1日行うと、約1600万円のコストがかかり、また水深20㍍を超す深度ではさらに高い費用が必要になる。このことから、ROVやAUVといったロボットに機器を搭載して遠隔で検査する需要が高く、海洋調査等で用いられる、数千万円から1億円程度するハイエンドの機器ではなく、数百万円から数千万円前半のミドルクラスの機器として市場に投入していく考えで、現実的に普及しやすい価格帯であるミドルクラスの機器拡充が、水中ビジネス活性化にも繋がると分析している。 同コンソーシアムのトリマティス代表取締役CEOの島田雄史氏は「技術開発と市場創出を同時に行うのは難しいですが、新しいコンセプトをコンソーシアムで取り組むことで、市場創出に繋がるのではないかと思います。水中LiDAR・水中光無線通信・水中光無線給電・水中ネットワークはまだまだメンバーが足りない状況で、特に企業の参加を募集しています。新たなメンバーを募って、プロジェクトをさらに推進していきます。海洋国家にも関わらず、水中の技術利用が推進されていない現状を打破します」と話しており、年内にはスキャナを搭載する、異なるタイプの2台のロボットを開発して技術的な実証実験を行い、2021年度までの実用化を目指す。